MVCメディカルベンチャー会議

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第128回MVC定例会in大阪

2018年03月17日 | MVC定例会
橋爪康知様(木村情報技術株式会社取締役 AI応用開発センター所長)に「IBM Watsonの医療分野での活用事例と今後の展開」をタイトルにご講演いただきました。

(1)弊社がIBMのWatsonを用いてどのようにしてサービスを展開していこうと考えているのか、AIをいかに実際のビジネスに活用していくかということをお話したいと思います。また昨今AIに対する勘違いが散見されます。AIを正確に捉えた上で活用していくことが大切だと考えています。

(2)弊社木村情報技術株式会社は2005年設立、今期で13年目、佐賀県に本社があります。代表の木村が前職でMRとして様々なセミナーや研究会を開催していたのですが、既存のセミナーに対して感じる不十分さを補いたい思いで、web講演会のサービスを開始しビジネス展開して参りました。弊社web講演会運営・配信サービス「3eLive」は鮮明な映像配信を全国の視聴者のPCやiPadからご視聴いただけるようになっています。全国に8箇所スタジオがあって中継を行っています。製薬会社70社に対して、1500回/年のもの配信を行っており、主力のビジネスとなっています。



(3)IBM Watsonとの出会いをきっかけとして、自分の知りたいことをいつでもAIが答えてくれたら便利だろうという思いから、製薬業界向けのAIの分野に参入しました。当初は、IBM Watsonを用いて、全ての製薬会社の全ての製品を一括で対応可能なコールセンターを実現するという構想だったのですが、残念ながらまだ実現には至っておりません。各社が持つ情報の一元化はまだまだ難しいと感じます。

(4)弊社は正式にIBMのWatsonを取り扱う権利を2016年1月に導入しました。そして医薬品に関する質問に答えるサービスをリリースし、IBMから賞を頂戴しました。導入からサービスの提供まで迅速に取り組みました。

(5)ところでAI(人工知能)とは何を指すのでしょうか。実は明確な言葉の定義は存在しません。私は知能を作り出すための営み、といった捉え方をしています。AIが得意なことは過去から未来予測を行うことで、十分な学習量があればものすごい精度で予想できます。一方0から1を生み出すことはできません。ひらめきや直感が重要視される分野は不得意です。

(6)IBM Watsonは海外では白血病の効果的な治療方針などを見つけるのに利用されています。日本でもIMB Watsonが膨大な2500万を超える論文と患者の遺伝子情報を解析し、治療困難だった白血病患者の病名(理由と治療法)を10分で特定し、患者の命を救ったケースが報道されました。人間の限界を超える知識量を対応することができること、先入観がないことがAIでの強みです。

(7)我々は、製薬会社・薬局チェーン・大学の基幹病院とIBM Watsonを用いたサービス開発を一緒に取り組んできました。現在製薬会社に導入いただいている直接対話型のコールセンター支援サービスでは、コールセンターが閉まっているときにでも対応できるよう、薬について寄せられた質問に対して音声ガイダンスで回答します。ただ、AIに学習させるのは大変です。5-6人のMR経験者などが1年がかりで学習させているのが現状です。あるシステムでは当初の学習精度は44.6%、フィードバック学習を経ていくと1ヶ月で70%くらいまで、4ヶ月経つと93%ほどの正解率となり、初期の精度の約2倍になります。精度が100%でないと使えないのではという意見もあるかと思いますが、人間の精度より高い可能性もあり、100%にならなくても使える領域を見出していくことが大切だと考えています。

(8)画像データの解析はAIが得意な領域です。USでは肺がんのデータにおいては間違ったものも含めて300億枚ものデータを集めています。日本で同じ数のデータを集める事は現実的ではありません。間違いのないデータ使用して、数万枚でも正解率を上げることはできると考えています。今我々が興味を持っているのは医薬品とOTC医薬品の飲み合わせ、薬剤併用に関しての効果や副作用の予測、未病の取り組み、創薬研究などです。



(9)我々は、AIエンジンそのものを作るのではなく、いいものを使っていかに社会問題を解決できるか、という応用開発に取り組んでいます。そのためには業界の専門知識が必要です。薬科大学に寄付講座を作るなどの取り組みを始めています。アナログな作業の人的リソースとして、定年退職した専門家が適任です。その方の専門知識があればQ&AをAIに学習させる事ができます。我々は、AIの応用開発の一大拠点を佐賀に作りたいと願っています。

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