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第131回MVC定例会in大阪 第一部

2019年03月30日 | MVC定例会


平成31年3月30日 第131回MVC定例会 第一部議事録

ルークス芦屋クリニック 院長/一般社団法人腸内フローラ移植臨床研究会 専務理事 城谷 昌彦(しろたに まさひこ)氏を迎え、【次世代型腸内フローラ移植の今後の展望】をテーマにお話いただきました。

1.私は1995年東京医科歯科大学医学部を卒業し、神戸大学医学部附属病院第4内科(千葉内科)、三木市民病院内科、京都大学医学部附属病院病理部、兵庫県立塚口病院消化器科、城谷医院を経て2016年ルークス芦屋クリニックを開設しました。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医として活動しながら、自身も腸疾患を罹患し患者として苦しんだ経験、現在は自身の治療経験も活用し一般社団法人腸内フローラ移植臨床研究会専務理事としても活動しています。

2.近年、腸内細菌叢というキーワードが医学界で注目されています。それはひとえに遺伝子シークエンサーの発展により細菌叢の研究が日進月歩で進んでいるためです。腸内細菌の細胞数は実に体細胞の100倍もあり“新しい臓器”とも例えられます、腸内細菌叢は疾患の最大の環境要因の一つなのです。細菌叢といえば腸だけでなく口腔内、膣、皮膚のものもあります。

3.私は細菌叢の乱れ“Dysbiosis”が腸内細菌叢の研究における一つの重要なテーマになっていると考えます。Dysbiosisによって腸の透過性が亢進、エコシステムが破綻し自閉症などの精神疾患に影響を与えているというパイロットスタディもあります。それは細菌の多様性の低下、抗生物質、食事、遺伝的要因などが関与していると言われますが、”Dysbiosis”と”Disease”の因果関係、生理学的機序は明らかになっていない部分が多く今後解明すべき点であります。“正常”な細菌叢が定まっていないためです。私は増悪因子としてストレス、ナノ粒子、炭水化物制限、乳化剤、亜鉛不足があると考えます。

4.私達、腸内フローラ移植臨床研究会は、そんな腸内細菌叢のDysbiosisに対して糞便微生物移植(私達は”腸内フローラ移植―FMT(Fecal Microbiota Transplantation―)と呼んでいます)が比較的大きな効果を持つと考えています。術式の一種として自家便移植や便カプセルなどがあります。FMTの歴史は古く、古代中国でなされており、1958年アイスマンが偽膜性大腸炎に対して施術、現在ではFDAがrCDI(再発する偽膜性大腸炎)の第一選択の治療方法として位置づけています。消化管疾患ではIBS(過敏性大腸炎)などが、消化管疾患以外では肥満、メタボリックシンドローム、肝性脳症に質の高い研究であるRCTが実施され、Crohn病、うつ病、自閉症、2型糖尿病に対してはパイロットスタディが実施されているという報告もあります。




5.私は従来のFMTにおける未解決課題がたくさんあると考えています。CDI以外の疾患に対する有効率の低さ、Dysbisisが疾患の原因であるか結果であるかについても明確な答えは出されていません。菌液の生成手法や投与経路、ドナーの選別、構成物質投与など前処置の必要性、もちろん耐性菌や既知の病原細菌・ウイルスによる感染可能性評価についてもさらなる研究、解明が求められます。

6.私達腸内フローラ移植臨床研究会はこのような課題のいくつかを解決するために”UB-FMT”という特殊菌液を用いたFMTの手法に注目しています。ウルトラファインバブルというウイルスよりも微細な気泡で菌を包みこむため移植される細菌が腸内に長く留まることができるため効果があると見立てています。これは養殖などの産業界では一般的に利用されている技術です。私達はUBかつ濃度勾配を変更しながら複数回投与することをスタンダードな治療として選んでいます。小児アレルギ-疾患、アトピーを併発し落ち着きが無い患者さんにUB-FMTを施術したところ、4回目から効果が見られ7,8回目では全身に広がっていた発疹が引き血液検査値もかなり改善しました。腸内細菌叢の組成も変化しています。他にIBS過敏性腸疾患の若年男性も効果があったという報告がされています。

7.これからの展望として腸内フローラ移植臨床研究会で利用しているUB-FMTのメカニズム解明と論文化。菌液に含まれる代謝産物、酵素活性のメタボロミクス解析。スーパードナーや個別性の高いドナーの選定、凍結ドナー便、カプセル経口投与など投与法の簡便化を進めるとともに、法的な規制がかかってくるはずなのでこれに対する措置を講じていきます。これからも腸内フローラ移植のメカニズムの解明、臨床応用に向けて一歩ずつメカニズムを解明していきたいと思います。

一般社団法人腸内フローラ移植臨床研究会HP
https://fmt-japan.org/



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