MVCメディカルベンチャー会議

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第127回MVC定例会in大阪

2017年11月18日 | MVC定例会
健康経営という言葉を創出した、岡田邦夫先生(特定非営利活動法人 健康経営研究会理事長)に「予防医療は病院力より企業力」をテーマにご登壇いただきました。

(1)私は、大阪市立大学大学院医学系研究科を修了し、大阪ガス株式会社産業医に就任しました。現在は、特定非営利活動法人健康経営研究会理事長および、プール学院大学教育学部教育学科教授 健康・スポーツ科学センター長を兼任しています。主な著書に『健康経営のすすめ』(社会保険研究所)、『これからの人と企業を創る健康経営』(社会保険研究所)、『健康経営推進ガイドブック』(経団連出版)、『ストレスチェック導入・運用サクセスガイド』(メディカ出版)、などがあります。

(2)近年、私が考案した「健康経営®」という言葉が急速に広がりました。全国の市町村長が健康経営の普及を促進し、多くの企業が健康経営支援を展開しています。私の実体験をお話しますと、以前、産業医として従業員数2万人の会社の社員を診ていました。癌検診を私が薦めても受診者が増えない。ところが、支店長が強く言うと受診者が3倍に増えました。



(3)週に50時間以上働いている割合(労働基準法上は:40時間)は、日本は世界第2位。平均睡眠時間7時間49分は、世界で2番目に少ない。さぞかし日本人は勤勉で寝る間も惜しんで仕事をしているというイメージを持ちます。が、国外の優秀な人材にとって日本で働くことは、61カ国中52位、人材競争力30位という結果でした。GDPに対する労働生産性は、1970年から世界20番目くらいで低いです。つまり、日本人はあまり働いていない、といえます。GALLUP社の調査では熱意を持っている日本の社員は6%。(アメリカは30%でした。)71%は無気力。23%は全くやる気が無いという結果でした。アメリカの今の経済は、30%の熱ある社員が支えているといえます。日本は6%だが、これが12%になったらすごい経済大国になるが、そうはならない。ほとんどの従業員は会社を信頼せず、やめても他に行けないのでしがみついている、とデータから読み取れます。

(4)高齢社会基本法が平成7年に出来ました。とある人口動態専門官の計算では、日本は将来大変なことになり、3000年には人口が2000人になると予想していました。緩やかに国が滅びていくのを待つ状況です。高齢者が増え労働生産人口は減っていきます。この10年間で900万人減ります。黒字でも人手不足で倒産する会社が増えてきました。お菓子がヒットして、すごく売れるようになると製造中止になります。過剰労働で倒れられたらその賠償額の方が高いためです。また、25歳の時に肥満している人は、早期退職しているという統計データがあります。若い時の健康状態を保つことは大事です。ワークリテラシーをあげるためには、ヘルスリテラシーが必要です。メタボはうつ病になる割合が高いといわれ、多発性脳梗塞を起こす割合も高いです。日本を救うためにどんな解決方法があるのでしょうか?

(5)若年性認知症は10代から認められますが、予防方法があります。認知症の発症リスクは高コレステロールで3倍、高血圧で2倍、糖尿病で1.6倍です。会社の中の健康診断で計測するものばかりです。企業で予防できるかもしれません。会社で健康になってもらったら、退職後にアルツハイマー病を予防できるかもしれない。ローソン様は健康経営を強く進める代表的な企業です。健康診断や治療を受けない人は賞与をカットする、という制度を導入し、健康診断の受診率が100%になりました。

(6)2人に1人は癌になる時代ですがその約4割は予防できます。毎日1時間歩けば大腸癌の発生が抑えられます。乳がんと大腸癌は運動で予防できるというデータがあります。労働生活の中でアクティブな生活をする、健康系オフィスという概念を紹介します。具体的には1時間だけ立ち仕事をします。時間になると机が上がっていきます。会議も短時間で終わるようになりました。3ヶ月続けると、ウェストが1cm減った、というデータがでました。座る時間が増えると死亡率は増えます。いかにしてアクティブに体を動かすかが、高齢社会では重要です。



(7)健康経営は、法令遵守、コミュニケーションと環境に対する投資が大事です。高齢社会では働く人が少なくなりますので、健康経営は大事です。過剰労働などによる賠償金は1億を超える事例もあり、中小企業だと潰れてしまいます。月の残業時間が45時間を超えても健康に影響が出ます。160時間を超えると、翌月に生じた病気は全て労災となることも決められています。運動人口がアメリカは10%、日本は3%。運動はメンタルヘルスを予防するのに最もいい方法です。

(8)誰がキーパーソンかというと、経営者です。快適な職場、整理整頓、清掃が重要です。あるタクシー会社では、運転手の乗車前に、血圧とアルコールチェックを始めました。血圧が高いとタクシーの運転ができないと規定したので血圧の治療を始める人が増えました。「働くためには健康が必要」。この健康投資に要した費用は血圧計の3000円。お金をかけずに、いかに従業員の健康意識を高めるか。トップの意識しだいです。

(9)WHOは、失業がうつや薬物依存の原因のひとつになっていると言っています。社会的不安が増えるからでしょう。日本の場合は、長時間労働の過労死を是正すれば事態は好転すると思います。健康経営という視点は医療職だけでは難しいのです。経営者の判断と実行力が必要です。アダム・スミスが言っていましたが、「明日も働けるように、帰ってもらう」ことは、国が豊かになります。


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