MVCメディカルベンチャー会議

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第130回MVC定例会in大阪 第二部

2018年10月27日 | MVC定例会



NPO法人女性の健康とメノポーズ協会 大阪支部 ブランチマネージャー 兼 一般社団法人 日本女性医学学会認定 女性ヘルスケア専門薬剤師である、松原 爽(まつばら さやか)氏に、「男性も女性も“女性ホルモンに無知”では損をする?!~職場で役立つ女性ホルモンの知識~」をテーマにお話いただきました。

1.私は、1993年日本ワイスエーザイ(現ファイザー)に入社後、開発担当を経て女性ホルモン製剤のマーケティング担当となり、1999年低用量経口避妊薬の日本への導入を担当。2004年日本シエーリング(現バイエル薬品)に転職し、更年期障害や閉経後骨粗鬆症領域の医薬品の新発売をプロダクトマネジャーとして担当。その後も、月経困難症や子宮内膜症の治療薬など、多くの女性ホルモン製剤のプロモーションを通して、女性特有の疾患の啓発や女性ホルモン製剤に対する正しい知識の普及に努めてきました。2018年バイエル薬品株式会社を退社し、未来図(ニューロンネットワーク)に在籍。今までにない異業種との連携を積極的に広め、新たなルートを通してヘルスケアの観点から女性活躍のサポート活動をはじめています。また、NPO法人女性の健康とメノポーズ協会の大阪支部のブランチマネジャーとして、女性の生涯を通した健康づくりとワークライフバランスに関する情報発信を行うほか、管理職として4年間のワンオペ育児を経験したことから、NPO法人子育て学協会のチャイルドファミリーコンサルタントの資格を得て、ワーキングマザーの相談にものっています。



2.女性は月経前も月経中も体に何らかの不調を抱えており、調子がいいのは月経後から黄体期の間だけという方もいます。日常生活において月経の影響を受けている女性は約7割、現在または過去に月経前症候群(PMS)の影響を受けている方も約7割います。月経には主に卵巣から分泌される、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが関与しています。



3.月経は妊娠をしなかった結果として起こりその周期は平均28日間です。月経は発達や発育の表れでもあるので、思春期女性においてはバイタルサインと同様に重要です。しかしながら、現代女性は昔に比べてライフスタイルの変化から出産回数が減ったために、月経回数が増えていることが問題となっています。昔は一生に約50回しか月経はなかったといわれていますが、現在は約450回ほどといわれています。そのため、月経にまつわるトラブルや疾患が増えてきています。月経困難症の原因でもある子宮内膜症は日本女性の10人に1人が罹患しているといわれています。なお、この子宮内膜症は卵巣ガンリスクが3.65倍、子宮体癌リスクが2.40倍になると言われており女性の健康に大きな影響を及ぼします。このことから、発達や発育に問題なければ、月経回数は減らした方が良いという発想が生まれています。

4.低用量経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲンプロゲスティン配合薬( LEP)は、排卵を抑制することで子宮内膜の増殖を抑えるので避妊ができ、月経困難症などの症状を改善します(適応は製剤によって異なります)。OC・LEPに関しては血栓症の副作用が話題となりますが、OC・LEPの静脈血栓症の発症頻度は3~9人/10,000婦人・年で妊娠中(5~20人/10,000婦人・年)や産褥期(40~65人/10,000婦人・年)より低いことを是非知っておいていただきたいと思います。さらに、OC ・LEPは卵巣癌と子宮体癌のリスクを約半分程度低下させるという報告もあります。また、これらの医薬品は月経の時期をずらすこともできるので、女性がここぞという時に自身のパフォーマンスを発揮するためのサポートができるという利点も持ち合わせています。



5.女性ホルモンは毎月の変化だけでなく、ライフステージごとにも変化します。閉経の前後5年の計10年感を更年期といいますが、閉経前から女性ホルモンの一つであるエストロゲンの揺らぎが始まり、卵巣機能が停止し閉経を迎えるとエストロゲンは急激に減少します。エストロゲンは脳・中枢神経、循環器、脂質代謝、乳房、皮膚、骨、生殖器など全身に作用しているためエストロゲンが減少すると更年期症状(顔がほてる・イライラ・寝付きが悪い・疲れやすいなど)がでるほか、膣炎や皮膚の萎縮、将来の骨粗しょう症や動脈硬化リスクも上げてしまいます。

6.ホルモン補充療法(H R T)とは、卵巣機能の低下に伴うエストロゲン欠乏を補う治療法です。期待される効果としては、更年期障害改善や骨密度増加・脂質や糖の代謝改善などがあげられます。。HRTというと、乳癌リスクを心配される方も多いですが、最新のエビデンスをまとめたホルモン保有療法ガイドラインでも、そのリスクはアルコール摂取や肥満、喫煙といった生活習慣因子によるリスクと同等かそれ以下とされており、乳癌に関してはHRTを行っている行っていないに関わらず定期検診を受け早期発見早期治療を勧めることが大切と考えられます。


7.このような現代女性を支える女性ホルモン製剤ですが、その普及率に関しては世界と比較するとかなり低いのが現状です。
日本においても、女性のライフスタイルの変化から女性ホルモン製剤を上手に利用する必要性も出てきていると思われます。女性のヘルスケアの選択肢の一つとして女性ホルモン製剤に興味を持っていただけたら幸いです。



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