MVCメディカルベンチャー会議

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第133回MVC定例会in大阪 第二部

2019年09月21日 | MVC定例会



1.
私は、2005年島根大学医学部医学科卒業後に、2010年 大阪大学医学部附属病院 循環器内科、2011年 大阪大学大学院医学系研究科、2015年 大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部を経て、2016年 日本臨床研究学会 代表理事をしながら、 株式会社mediVR 代表取締役に就任しました。2017年 島根大学 地域包括ケア教育研究センター 客員准教授となり、2019年より島根大学 地域包括ケア教育研究センター 客員教授をしています。私は、もとより臨床が大好きで、患者さんを良くするにはもっとこうしたほうがよいのではないかという想いを持っていました。日本の臨床のデータで世界に勝負することにこだわり、American Heart Association 若手研究員奨励賞を3回受賞するなど学術的活動も積極的に行ってきました。しかし、学術的活動だけでは患者に良い治療を届けられないと思い、産業界との連携を通して良いものをカタチにしようとmediVRを設立しました。
2.
VR(Virtual Reality)とは、仮想現実のことで、人の五感を現物以外の何かの形で再現することです。
当社では、歩けない人を歩けるようにするという、リハビリの機械を作っています。開発するに至った社会的背景が2つあります。1つ目は、運動器リハビリを要する人口の増加です。高齢化によるフレイルやサルコペニアの進行、脳梗塞やパーキンソン病等の罹患によって、日常生活に最も重要な歩行能力の喪失が起こることから、歩くことに着目しました。2つ目は、少子高齢化によってセラピストの数が不足していくため、人的資源に限りがあることです。私たちはこれに対し、リハビリを自動化することや車椅子に乗車したまま行うことができる手段を提供することで解決できると考えました。



3.
私は、臨床医の頃、なるべくリハビリ室まで出向いて患者さんの治療方法を議論するようにしていました。その際に、現状のリハビリの方法に関して疑問を持ちました。私は、リハビリがうまくいかない原因をわかりやすい指標がないことだと考えました。セラピストが患者さんに対して理解しやすい指示を十分に出すことができないという指示困難性、患者さん自身が症状の改善の度合いを認識し難いという改善の自覚困難性によって、セラピストと患者さんの間でのミスコミュニケーションが生じています。そこで、リハビリの目標や評価を定量的に評価する方法を開発すれば、現場の課題を解決できると思い、それにはVRが最適ではないかと着手し始めました。
4.
歩くためには、下肢筋力・姿勢(体幹)バランス・二重課題型の認知機能処理能力が必要です。下肢筋力は自分自身でも鍛えることができますが、姿勢バランスと二重課題型の認知機能処理能力は実質的に鍛える方法がありません。脳の記憶と実際の体の動きにミスマッチがあると、姿勢バランスを上手く調整することができないので歩くことができません。二重課題型の認知機能処理能力とは、二つのことを同時に行う能力のことです。人の脳の可塑性を多面的に刺激することで、処理能力を向上できます。



5.
私たちの機械は、リーチ動作を使い、姿勢バランスと二重課題型の認知処理能力を定量的に測定・評価して適切なリハビリテーションを行うための医療機器です。認知症の人は過去の記憶が残りやすいという特性から、巫女さんの格好をした人が登場するようにしており、「神楽」と名付けました。会社創設から3年で医療機器として販売開始しました。神楽の特徴として、ゲーミフィケーションを応用して患者さんが能動的にやりたくなるように作られています。また、点数・順位・苦手な場所などの情報を数値化してレポートにしており、患者さん同士や家族間でのコミュニケーションを生み出す仕掛けになっています。さらに、姿勢制御へのアプローチによって、座位のトレーニングで歩行を改善することができます。実際に臨床においては、姿勢制御に対して聴覚と視覚と触覚の3つの感覚を刺激してフィードバックすることで、5分程度で効果を出しかつ1週間の記憶の保持ができるため、脳の学習効果と可塑性を劇的に向上させることが可能となりました。また、注意の配分能力に対して多面的にアプローチすることによって、世界で初めて認知症を治すことができました。VR×医療という切り口の会社は複数ありますが、私たちはVRでしかできない代替不可能な治療方法を開発しました。



6.
私たちのビジネスモデルは、皆保険制度を使わないSaaSモデルです。また、グローバルに展開していくことを想定して、日本の高いゲーミフィケーション技術を活用し、ノンバーバルでコミュニケーションがとれるようにしました。最近は製薬企業のデジタルヘルス分野への参入が増えていますが、プロダクトが既存医療の模倣の域を出ないためにほとんど成功モデルがない状態です。模倣ではなく新しいアプローチが必要で、かつ医療的にも正しくてビジネス的にも成功するモデルでないと浸透しません。私たちは、医師と企業との産学連携により、通常の治療を超える改善を慢性期でも発揮できる医療機器を実用化しました。私たちは「神楽」を活用し、従来の方法とは全く異なるアプローチによりリハビリテーションの新たな切り口を開こうと思っています。



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