定期へは7年ぶりの登場になる重鎮秋山和慶を迎えてのロシア音楽プログラムだ。とは言いながら名曲揃いのそれではなく、当夜の選曲はシティ・フィルらしく実に凝ったものだった。まずスターターはリャードフ作曲の交響詩「キキモーラ」作品63。精細なオーケストレーションを秋山が見事に捌いた。82歳を超えて振りこそ往時よりだいぶ小さくなっているが、正確極まりない精緻な棒が威力を発揮した。続いて周防亮介をソロに迎えてプロコフィエフのバイオリン協奏曲第2番ト長調作品63。1678年製のアマティを駆使して構えの大きい図太さと繊細さを使い分けた見事なソロだ。約30分間ほぼ弾きっぱなしなのだが、決してフォルムが崩れることがないのは見事の一語に尽きる。それに寸分の狂いもなくピタリと付けるオケも超絶的な凄さだった。ソロ・アンコールは超絶技巧満載のシュニトケ作曲「ア・パガニーニ」の壮絶な演奏。これも凄いの一語に尽きた。そしてメインはスクリアービンの交響曲第4番「法悦の詩」作品54。名前は有名な割にオケのプログラムには滅多に乗らない曲だ。私自身も生では初めて聴いたのではないか。神秘和音を用いた怪しげな曲のようだが、名手秋山の手にかかると、すべての音符が見事に整理されて洗練を極めた曲になるから不思議だ。夢幻的・陶酔的な音楽を美しく響かせながら、最後はオルガンも加えて圧倒的なクライマックスを築いた。トランペットが随所で頂点を導き大活躍するが、首席欠員のところを副主席の阿部一樹が立派に役割を果たした。
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