チキチキ読書日記

無駄に読み散らかした本の履歴です。

海辺のカフカ 下 村上春樹 新潮文庫

2005年10月20日 12時56分46秒 | 文学・小説
上から続く

本書はこれまでの村上作品の王道を行くような傑作である。
いたるところにこれまでの作品の断片のようなものを感じる。
夏、海、少年、少女、記憶、森、夢、過去、失われてしまったもの……。
そして甘美ですらある死の風景。
これらを陳腐な言葉で表現するならノスタルジーであろう。
ノスタルジーは『世界の中心で愛をさけぶ』でその効果の大きさが改めて浮き彫りになった。
失ったもの、戻らない時間への郷愁はいつでも人を切なくさせる。
本書のラストはまさにノスタルジックな表現で満ちている。
それぞれの別れと過去との決別。
しかし主人公は15歳。その後に待っているのは未知なる未来。

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