僕は、【るろうに剣心】は思想と思想のぶつかり合いの物語だと思っている。
るろ剣の主要な登場人物は、全員それぞれの信念や思想を持っていて、
それがお互い似ていたり、共感できる場合は、その者たちは同志になる。
しかし、それが決定的に対立する場合は、その者たちによる戦闘になってしまうのである。
るろうに剣心におけるバトルは、表面上は刀や拳を使った直接的戦闘だが、
その水面下ではお互いの思想が激しく対立している。
そして、戦闘に決着が着くときは、一方が一方の思想に屈服したり、
自らの思想の誤りに気付いて戦闘が終了となるのである。
たとえば、序盤の「剣心 対 喧嘩屋・斬左」の対決の場合、以下のような思想対立がある。
斬左「偽りの正義をかざす維新志士を許さない。最強の維新志士・人斬り抜刀斎をこの手で倒す」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/v.gif)
剣心「維新はまだ終わっていない。本当に幸せを必要とする人たちのために逆刃刀をふるう」
斬左は元・赤報隊準隊士であり、明治政府に騙され利用された過去を持っており、
偽りの維新を達成してふんぞり返っている維新志士たちに激しい恨みを持っていた。
斬左は最強の維新志士であった剣心を倒すことで、赤報隊の恨みを晴らそうとした。
しかし、剣心の逆刃刀の前に斬左は地に倒れたのだった。
剣心は斬左の主張に対し、「喧嘩の相手が違う」と諭す。
「赤報隊がお主に教えたのは維新志士を倒すことか?それとも維新を達成することか?」と。
その上で、「維新はまだ終わっていない」「本当に幸せが必要な弱者はまだ虐げられている」
「その人たちの幸せのために自分は逆刃刀をふるっている」と諭したのだった。
斬左はこの言葉に、自分の思想の小ささを悟る。
本当の新時代を作るために今も闘っている剣心と、
偽りの新時代に絶望してあきらめ、喧嘩に興じることで忘れようとした自分。
自分は、剣心という男に完全に負けてしまった・・・。
と、このようにるろ剣ではバトルの終了とともに、その人物の思想・信念に
何らかの変化がもたらされるといったパターンが非常に多い。
というか、ほとんどのバトルがそうだ。
例外として、最後まで自分の思想・信念を一切曲げなかった「斎藤一」と「志々雄真実」が
いるが、まぁ彼らは特別である。
前置きが長くなったが、今回は【るろうに剣心】において、
思想・信念がもっとも顕著に変化した「瀬田宗次郎(せたそうじろう)」というキャラに
焦点を当て、その変遷を追ってみようと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/ca/d1958e085a6012de5aec8373d1a4aad0.jpg)
嫌なことは笑ってやり過ごす
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/36/674bee5764e3bd0d9560199c0cc1d32d.jpg)
宗次郎は、文久元年 神奈川に生まれた。
米問屋の妾の子として生まれるが、実父は宗次郎が8歳の頃にはすでに他界。
以後、実父の嫡男の養子となるが、繰り返し虐待される日々が続いた。
虐待のなかで、宗次郎は最初は泣いたり怒ったりしていたが、
泣いたり怒ったりすればするほど相手は逆上し、凶暴になった。
やがて、宗次郎は我慢してニコニコしていれば、やがて相手は呆れて手を出さなくなり
もっとも被害が少なくてすむことに気がつく。
嘘のつくり笑いを続けているうちに知らず知らず、宗次郎はすべての嫌なことを
笑ってやり過ごすようになっていった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/e2/1774f64e5a8a2a471e6070a733efe3e8.jpg)
ある日、宗次郎の前に全身に包帯を巻いた男が現れる。
男は宗次郎に姿を目撃されたことに気付くと、刀を抜き、宗次郎に振りかぶった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/ad/8b956cef41a6d7b247c13e123c712765.jpg)
しかし、刀を向けられた宗次郎の顔は、笑っていた。
心は恐怖で固まっているにもかかわらず。
男は宗次郎に興味を覚え、自分をかくまうことで命は助けてやると言った。
この男がのちに宗次郎の思想に多大な影響を与えることになる、志々雄真実(ししおまこと)である。
この世は弱肉強食 強ければ生き、弱ければ死ぬ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/65/21311eb4980d8b07c98cb7c22f3b178c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/37/e279cb960919b59c379421d7a7387e8a.jpg)
宗次郎は、「僕はこの家の本当の子じゃないから悪いんだ」と、自分のこの現状は生まれが悪いのだからが
仕方がないと志々雄に漏らすが、志々雄はそれをきっぱりと否定する。
「お前が弱いから悪いんだ」
「所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ」
それが、この世界の真実であると志々雄は言う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/1b/a2ee4fcc0eb23254a871f2a930216f2a.jpg)
そして、志々雄は宗次郎に自らの脇差を渡すのだった。
その意味は明白だった。
「この刀で、自分を苦しめる者たちを斬れ」
そういうことだった。
一晩悩んだ宗次郎だったが、やはり人を斬ることはできないと思いなおす。
人を傷つけるくらいなら、自分は弱いままでいい、と。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/12/fcdf01d0432c960f547ce091e357d596.jpg)
しかし、宗次郎の養父たちは宗次郎が新政府の反逆者をかくまっていることを察知。
宗次郎に白刃を抜いた。
今までは殴る蹴るの虐待で、宗次郎の命に危険が及ぶことはなかったが、
今回の養父たちは、完全に宗次郎を斬るつもりで向かってきていた。
「所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ」
宗次郎の脳裏に志々雄の言葉がよみがえる。
そして、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/5a/a769dea5cbf05e4e6704568a2f9e7375.jpg)
宗次郎は養父とその家族を斬殺。
一家を皆殺しにした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/f1/d6aa67b05c434219dde891a8878e7221.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/a8/9ec608e73c79a31fbf05a3e3197b54e6.jpg)
雨の中、宗次郎は笑っていた。
以後、十年近くもの間、宗次郎は志々雄真実と行動を共にする。
志々雄から教えられた「所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ」という言葉は
宗次郎の行動理念となった。
ゆらぐ「弱肉強食」
志々雄との出会いから十年後、宗次郎は志々雄とは正反対の思想を持つ男・緋村剣心(ひむらけんしん)
と対峙していた。
剣心の言う、「弱い者のために剣をふるう」という思想は、志々雄の言う「弱肉強食」とは
まったくベクトルの異なる思想であった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/8e/22f3bcd8a0efb2c76042fedda39838d9.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/78/c38e3784c6fc22284c503969400bbd81.jpg)
剣心に圧倒され、今まで盲信的に信じてきた思想がゆらぎはじめる宗次郎。
養父たちを斬り殺したあの雨の夜、自分は笑っていたけれど本当は泣いていたんじゃないか?
本当は人殺しなんてしたくなかったのではないか?
今まで疑いもしなかった思想が、まったく正反対の思想に触れたことにより
ぐらつき始めているのである。
この不安定な心のまま、宗次郎は剣心との抜刀術の打ち合いに臨む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/d6/a8e63002e2faf566449456d60e3e84f4.jpg)
結果は、宗次郎の敗北だった。
初めての敗北である。
戦いに敗北した宗次郎は、「弱肉強食」の信念のもとに戦っていた自分は間違っていて、
「不殺」の信念のもとに戦っていた剣心の方が正しかったのだと思った。
これが本当の答えだったのだとも。
しかし、剣心は「それは違う」と答える。
「勝った方が正しいという理屈では、それは志々雄の思想が正しいということになってしまう」
「真実の答えは、お主が自分の人生の中から見出すもの」
と、宗次郎にとっての真実は、宗次郎自身で見つけるしかないのだと言う。
志々雄が自分の人生から、「弱肉強食」という思想にたどり着いたように、
剣心が「不殺を貫き、目に映る人々のために逆刃刀をふるう」という思想にたどり着いたように。
簡単に答えをくれた志々雄とは違い、自分で答えを見つけろと叱咤した剣心は、
志々雄よりもずっと厳しく思えた。
答えを探す旅
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/d8/0f179f292306d89995d66855b42f7dfb.jpg)
宗次郎は、志々雄と袂を分かつことにした。
志々雄が間違っていたということではない。
あの日養父たちに殺されそうになった自分を助けてくれたのは、志々雄のくれた脇差と志々雄自身であった。
それはまぎれもない事実なのだ。
しかし、宗次郎は剣心の言う通り、答えを自分で探すことにしたのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/f3/0e152c0d070f81bf56a1e948d7da196c.jpg)
「さようなら、志々雄さん―」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/e8/d6b6144c0d27e0ca9cd86184b339ebbe.jpg)
志々雄と剣心。
彼ら二人がそれぞれの真実を見つけるのにかかった時間は十年。
宗次郎も、十年を目安にして全国を流れることになる。
言ってみれば、「るろうに宗次郎」の誕生である。
そういえば、18歳まで志々雄のもとで人斬りまがいのことをしていたことと言い、
宗次郎と剣心は境遇が似ているかもしれない。
まだ見ぬ答えを探し、宗次郎は北へと向かうのだった。
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それがお互い似ていたり、共感できる場合は、その者たちは同志になる。
しかし、それが決定的に対立する場合は、その者たちによる戦闘になってしまうのである。
るろうに剣心におけるバトルは、表面上は刀や拳を使った直接的戦闘だが、
その水面下ではお互いの思想が激しく対立している。
そして、戦闘に決着が着くときは、一方が一方の思想に屈服したり、
自らの思想の誤りに気付いて戦闘が終了となるのである。
たとえば、序盤の「剣心 対 喧嘩屋・斬左」の対決の場合、以下のような思想対立がある。
斬左「偽りの正義をかざす維新志士を許さない。最強の維新志士・人斬り抜刀斎をこの手で倒す」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/v.gif)
剣心「維新はまだ終わっていない。本当に幸せを必要とする人たちのために逆刃刀をふるう」
斬左は元・赤報隊準隊士であり、明治政府に騙され利用された過去を持っており、
偽りの維新を達成してふんぞり返っている維新志士たちに激しい恨みを持っていた。
斬左は最強の維新志士であった剣心を倒すことで、赤報隊の恨みを晴らそうとした。
しかし、剣心の逆刃刀の前に斬左は地に倒れたのだった。
剣心は斬左の主張に対し、「喧嘩の相手が違う」と諭す。
「赤報隊がお主に教えたのは維新志士を倒すことか?それとも維新を達成することか?」と。
その上で、「維新はまだ終わっていない」「本当に幸せが必要な弱者はまだ虐げられている」
「その人たちの幸せのために自分は逆刃刀をふるっている」と諭したのだった。
斬左はこの言葉に、自分の思想の小ささを悟る。
本当の新時代を作るために今も闘っている剣心と、
偽りの新時代に絶望してあきらめ、喧嘩に興じることで忘れようとした自分。
自分は、剣心という男に完全に負けてしまった・・・。
と、このようにるろ剣ではバトルの終了とともに、その人物の思想・信念に
何らかの変化がもたらされるといったパターンが非常に多い。
というか、ほとんどのバトルがそうだ。
例外として、最後まで自分の思想・信念を一切曲げなかった「斎藤一」と「志々雄真実」が
いるが、まぁ彼らは特別である。
前置きが長くなったが、今回は【るろうに剣心】において、
思想・信念がもっとも顕著に変化した「瀬田宗次郎(せたそうじろう)」というキャラに
焦点を当て、その変遷を追ってみようと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/ca/d1958e085a6012de5aec8373d1a4aad0.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0140.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/36/674bee5764e3bd0d9560199c0cc1d32d.jpg)
宗次郎は、文久元年 神奈川に生まれた。
米問屋の妾の子として生まれるが、実父は宗次郎が8歳の頃にはすでに他界。
以後、実父の嫡男の養子となるが、繰り返し虐待される日々が続いた。
虐待のなかで、宗次郎は最初は泣いたり怒ったりしていたが、
泣いたり怒ったりすればするほど相手は逆上し、凶暴になった。
やがて、宗次郎は我慢してニコニコしていれば、やがて相手は呆れて手を出さなくなり
もっとも被害が少なくてすむことに気がつく。
嘘のつくり笑いを続けているうちに知らず知らず、宗次郎はすべての嫌なことを
笑ってやり過ごすようになっていった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/e2/1774f64e5a8a2a471e6070a733efe3e8.jpg)
ある日、宗次郎の前に全身に包帯を巻いた男が現れる。
男は宗次郎に姿を目撃されたことに気付くと、刀を抜き、宗次郎に振りかぶった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/ad/8b956cef41a6d7b247c13e123c712765.jpg)
しかし、刀を向けられた宗次郎の顔は、笑っていた。
心は恐怖で固まっているにもかかわらず。
男は宗次郎に興味を覚え、自分をかくまうことで命は助けてやると言った。
この男がのちに宗次郎の思想に多大な影響を与えることになる、志々雄真実(ししおまこと)である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0140.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/65/21311eb4980d8b07c98cb7c22f3b178c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/37/e279cb960919b59c379421d7a7387e8a.jpg)
宗次郎は、「僕はこの家の本当の子じゃないから悪いんだ」と、自分のこの現状は生まれが悪いのだからが
仕方がないと志々雄に漏らすが、志々雄はそれをきっぱりと否定する。
「お前が弱いから悪いんだ」
「所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ」
それが、この世界の真実であると志々雄は言う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/1b/a2ee4fcc0eb23254a871f2a930216f2a.jpg)
そして、志々雄は宗次郎に自らの脇差を渡すのだった。
その意味は明白だった。
「この刀で、自分を苦しめる者たちを斬れ」
そういうことだった。
一晩悩んだ宗次郎だったが、やはり人を斬ることはできないと思いなおす。
人を傷つけるくらいなら、自分は弱いままでいい、と。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/12/fcdf01d0432c960f547ce091e357d596.jpg)
しかし、宗次郎の養父たちは宗次郎が新政府の反逆者をかくまっていることを察知。
宗次郎に白刃を抜いた。
今までは殴る蹴るの虐待で、宗次郎の命に危険が及ぶことはなかったが、
今回の養父たちは、完全に宗次郎を斬るつもりで向かってきていた。
「所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ」
宗次郎の脳裏に志々雄の言葉がよみがえる。
そして、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/5a/a769dea5cbf05e4e6704568a2f9e7375.jpg)
宗次郎は養父とその家族を斬殺。
一家を皆殺しにした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/f1/d6aa67b05c434219dde891a8878e7221.jpg)
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雨の中、宗次郎は笑っていた。
以後、十年近くもの間、宗次郎は志々雄真実と行動を共にする。
志々雄から教えられた「所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ」という言葉は
宗次郎の行動理念となった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0140.gif)
志々雄との出会いから十年後、宗次郎は志々雄とは正反対の思想を持つ男・緋村剣心(ひむらけんしん)
と対峙していた。
剣心の言う、「弱い者のために剣をふるう」という思想は、志々雄の言う「弱肉強食」とは
まったくベクトルの異なる思想であった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/8e/22f3bcd8a0efb2c76042fedda39838d9.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/78/c38e3784c6fc22284c503969400bbd81.jpg)
剣心に圧倒され、今まで盲信的に信じてきた思想がゆらぎはじめる宗次郎。
養父たちを斬り殺したあの雨の夜、自分は笑っていたけれど本当は泣いていたんじゃないか?
本当は人殺しなんてしたくなかったのではないか?
今まで疑いもしなかった思想が、まったく正反対の思想に触れたことにより
ぐらつき始めているのである。
この不安定な心のまま、宗次郎は剣心との抜刀術の打ち合いに臨む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/d6/a8e63002e2faf566449456d60e3e84f4.jpg)
結果は、宗次郎の敗北だった。
初めての敗北である。
戦いに敗北した宗次郎は、「弱肉強食」の信念のもとに戦っていた自分は間違っていて、
「不殺」の信念のもとに戦っていた剣心の方が正しかったのだと思った。
これが本当の答えだったのだとも。
しかし、剣心は「それは違う」と答える。
「勝った方が正しいという理屈では、それは志々雄の思想が正しいということになってしまう」
「真実の答えは、お主が自分の人生の中から見出すもの」
と、宗次郎にとっての真実は、宗次郎自身で見つけるしかないのだと言う。
志々雄が自分の人生から、「弱肉強食」という思想にたどり着いたように、
剣心が「不殺を貫き、目に映る人々のために逆刃刀をふるう」という思想にたどり着いたように。
簡単に答えをくれた志々雄とは違い、自分で答えを見つけろと叱咤した剣心は、
志々雄よりもずっと厳しく思えた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0140.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/d8/0f179f292306d89995d66855b42f7dfb.jpg)
宗次郎は、志々雄と袂を分かつことにした。
志々雄が間違っていたということではない。
あの日養父たちに殺されそうになった自分を助けてくれたのは、志々雄のくれた脇差と志々雄自身であった。
それはまぎれもない事実なのだ。
しかし、宗次郎は剣心の言う通り、答えを自分で探すことにしたのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/f3/0e152c0d070f81bf56a1e948d7da196c.jpg)
「さようなら、志々雄さん―」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/e8/d6b6144c0d27e0ca9cd86184b339ebbe.jpg)
志々雄と剣心。
彼ら二人がそれぞれの真実を見つけるのにかかった時間は十年。
宗次郎も、十年を目安にして全国を流れることになる。
言ってみれば、「るろうに宗次郎」の誕生である。
そういえば、18歳まで志々雄のもとで人斬りまがいのことをしていたことと言い、
宗次郎と剣心は境遇が似ているかもしれない。
まだ見ぬ答えを探し、宗次郎は北へと向かうのだった。
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GJ!
GJ!
宗次郎は16歳ですよ
「どうしてあの時助けてくれなかったんですか・・・」
その台詞の後何故か号泣してしまいました。
弱い者は強い者に支配される。自分も理屈では解っていたけど本当は誰かに助けて欲しい、人を傷つけたくなんかない。
宗次郎の本来もっている自分の「心」が抜刀斉によって怒りという感情と共に呼び起されたのか?
そう感じました。
16歳って思春期ですからやっぱそういう事思うんだろうなぁ~
過去、誰かに助けてほしかったんでしょうけど
結局あの状況をなんとかしたのは宗次郎自身の力だったので、
剣心の一言に揺らがないでほしかったなぁ。
最終的に宗次郎がどういう生き方をするのかはわかりませんが、
大人になった宗次郎はどう生きるんでしょうねぇ。