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映画『クィーン』を鑑賞。

2007-04-22 12:11:13 | Weblog
映画の話
 1997年8月、パリでダイアナが交通事故に遭い、帰らぬ人になった。王家においてダイアナはいつも頭痛の種で、民間人となっていたダイアナの死は本来関係のないことであった。女王はコメントを避けるが、ダイアナを称える国民の声は次第に高まっていく。やがてダイアナの死を無視し続ける女王に、国民の非難が寄せられるようになる。若き首相ブレアは、国民と王室が離れていくことに危機を感じ、その和解に力を注いでいく。

 ダイアナが事故にあった日は今でも覚えている、日曜日の昼、NHKの『のど自慢』を見ていたらニュース速報のテロップが流れ、初めは怪我だったのが、どんどん時間が経つにつれて悪い報道に代わっていった。最悪の結果は日本人である私でもショックだったので、イギリスの国民はさぞかしショックは大きかったと心中を察する事である。そんなイギリス国民にとって避けては通れぬ歴史的な出来事を王室側から描いた作品が『クィーン』である。本作は、フィクションなのかノンフィクションなのかは不明であるが、映画に描かれたことに基づいてレビューを書きます。

 映画は、首相選出の選挙の朝から始まり、ブレア首相の誕生から就任の報告に王室に迎えられるまでは割りとコミカルに描かれる。
 そして運命の日、ダイアナの死によって混乱する王室が描かれるのかと思っていたのだが王室は全く他人事で、ダイアナは死んでまで王室に迷惑をかける厄介者としての扱いである。王室はダイアナの死に対して哀悼の意や声明も発表せず滞在先の城でバーベキューや鹿狩りを楽しむ姿が描かれ、国民から不満の声が膨れ上がっていく、そんな国民の声を代弁するかのようにブレアが女王を説得してゆく。

 映画の感想
 この作品のキーポイントはダイアナの死によってエリザベス女王の心の変化を描いた作品で、女王が側近や近親者の前で見せない顔を現すのが、森に突如現れた鹿に対してだ。
 最初、鹿はセリフの中で「森に鹿が出たらしい。」から、実際に鹿狩りに繰り出す王室の人々、鹿の登場の仕方も一番初めはハンターの手の届かない小高い山の向う側にいる姿を空撮で捉え、次の鹿の登場は森の中で車の故障で立ち往生して、一人涙を見せる女王の前に突然現れ、遠くから聞こえる狩猟犬の声を聞いた女王が鹿に対して『早くお逃げなさい」と手で追い払うしぐさをした直後、鹿は忽然と姿を消す。最後に鹿が現れるのは、小屋の中でハンターに仕留められたらしく逆さ吊りの姿が映し出される、首は剥製にされるのか切り落とされている。その姿を見た女王は『苦しまずに死ねていればいいのに。」と呟く。
 この流れを見てゆくと監督は、鹿狩りを比喩的に使いダイアナの死に対する気持ちを女王に吐露させたのではないだろうか?ハンターの様なパパラッチに周到に付け狙われ事故死したダイアナの姿を鹿の姿を通して描いているように感じた。
 映画は再現ドラマを中心に、随所に生前のダイアナの姿と事故後のロンドンの実写映像が挿入されるのだけれど、当時の国民の姿を映像で見ていると胸が締め付けられるに対して、ドラマに対しては再現ドラマと言う考え念頭にあるせいか冷静に見てしまう。この辺がドキュメントと再現ドラマの境界線の限界を感じた。