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映画&音楽のレビュー&日々起こる時事に絡めて商品をピックアップしながら論ずるブログです。Twitterとも連動中です。

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映画『シュレック3(日本語吹替え版)」を鑑賞しました。

2007-06-30 13:40:13 | Weblog
映画の話
 遠い遠い国のお姫様フィオナとめでたく結ばれたシュレック。病にたおれた父王ハロルドから後を継ぐように言われるのだが、そんなの絶対ムリ!シュレックは、ドンキー、長くつをはいた猫と共に、もう一人の王位継承者アーサーを探す旅に出る。一方その頃、ずる賢いチャーミング王子は、王国を乗っ取ろうと“おとぎ話の悪役”たちをたきつけて反乱を起こそうとしていた…。

 日本語吹替版の話
 今回、私が見たのは日本語吹替え版で、一作目も吹替え版で見て、二作目は字幕版、シリーズ全て試写会で見たのだが、私は『シュレック』の吹替え版が駄目だ。
 何が駄目かと言うと、シュレックの吹替えをダウンタウンの浜田が演じてるのだけれど、あの図体のデカイシュレックから、浜田の独特の甲高い声の関西弁で喋られても違和感しか感じられない。生態学から言っても体の大きさと声の太さは比例するはずなのに、浜田の甲高い声が映画を駄目にしているし、何よりも喋っている浜田の顔が頭に浮かんでしまうのはいただけない。
 それに対して、ドンキーを演じた山寺宏一は旨い!さすがプロの仕事を感じさせる。意外に良かったのは長靴をはいた猫を演じた竹中直人紀香はあんなものだろう。
 それから吹替えをしている事自体知らなかった、大沢あかね、星野亜季(ほしのあき)、オアシズの光浦靖子、大久保佳代子はプリンセス5をそれぞれ演じているけど言われなければ判らない程度で、現代風のギャル言葉で喋るプリンスたちにひどく違和感を感じる。
 ピクサーをはじめとする最近のCGアニメは日本語吹替え版の時は、劇中に出てくる英語の文字は日本語になっていて感心するけど、本作はタイトル以外は全て英語の文字がそのまま使われていて日本語字幕もつかないお粗末な物。

 映画の感想
 こりゃ駄目だ。シリーズの特徴でもあったディズニーには無い、毒のある黒い笑いは影を潜めて、ぬるい笑いに終始していて、ただのつまらないファミリーピクチャーに成り下がってしまった。
 物語の展開も盛り上がりに欠ける平坦な話で、『アーサーと円卓の騎士』をモチーフにしているらしいのだが、役名だけアーサー、ランスロット、マーリンであり、かろうじて魔法使いのマーリンだけがご本家の遺志を引き継いでいるみたいで、アーサーは情けない青年であり、せめて抜けない剣のエピソードをパロデイにでもして欲しかった。
 ただCGの技術は格段と飛躍している事は確かだ。まず、立体的な構図や、登場人物の滑らかな動きや、人間の肌や毛の質感、動物の毛並みは文句のつけようがない。
 それから、ポール・マッカートニー&ウィングスレッドツェッペリンなど劇中に使われる楽曲に製作者たちの趣味や年齢を感じさせられる。

 まぁ本作は難しい事を言わずに家族で楽しむべき作品なのかもしれないけど、劇場のお客さんの反応の悪さを見れば作品の出来の悪さを証明しているように感じた。

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映画『図鑑に載ってない虫』を鑑賞しました。

2007-06-24 13:57:21 | Weblog
 映画の話
 月刊「黒い本」の美人編集長(水野美紀)から仮死体験ができるという謎の“死にモドキ”を探し、死後の世界をルポするよう依頼されたルポライターの“俺”(伊勢谷友介)。締切りに間に合わなければ半殺しにすると言われた彼は、アル中のオルゴール職人エンドー(松尾スズキ)を相棒にしぶしぶ旅に出る。

 現在、テレビ朝日で放送中の『帰ってきた時効警察』が大好評で、『イン・ザ・プール』『亀は以外と速く泳ぐ』で“脱力系”ブームを巻き起こした三木聡監督、脚本の最新作だ。

 出演は『嫌われ松子の一生』の伊勢谷友介、劇団大人計画の松尾スズキ、『バベル』の出演で一躍スターダムに躍り出た菊池凛子、『時効警察』でお馴染みの岩松了とふせえり。

 映画は、水野美紀の捨て身の笑いに始まり、イイ男の伊勢谷も嬉しそうに三枚目のキャラを好演?松尾スズキはヒッピー姿で物語の道化役として立ち回り、菊池凛子は『バベル』のろうあ役とは打って変わり、リストカット癖のある元SM嬢という役で変な声で喋り捲る。他に『地獄の黙示録』のデニス・ホッパーの役をパロディにした松重豊や、名わき役の笹野高史や、高橋恵子が脇を固める。

 映画の感想
 黒い笑いに満ちた作品で、三木作品を見慣れた人であれば楽しい作品であるが免疫の無い方は面食らう作品になるかも知れない。
 映画には、大爆笑と言うパターンは無く、クスクス笑いの連続で、小ネタを積み重ねて笑いに繋げるパターンが続く。
 映画の話はブラックコメディの短編小説に夢の要素がまぶされた感じで、虚構と現実の曖昧さを逆手に取った着地点がいい。
 画面から夏の暑い空気を感じた作品でした。

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映画『転校生 さよならあなた』を鑑賞しました。

2007-06-24 13:48:58 | Weblog
 映画の話
 尾道から転校してきた一夫と、老舗そば屋の娘・一美は、ある事件をきっかけに身体が入れ替わってしまいます。 
身体の違いを痛感し戸惑うふたりだけど、そんな状況にあってこそ気づく、自分のことや家族のこと、そして互いへの想い。

 いわずと知れた大林宣彦監督の82年「転校生」のセリフリメイク作品であるが、ロケ地や設定やディティールが変更されていて、リメイクと言うより第2章と考えた方が懸命かもしれない。オリジナル版は「時をかける少女」「さびしんぼう」と並び“尾道3部作”と呼ばれ現在でも根強い人気を持つ作品だけあり、鑑賞前は期待と不安が入り混じった状態であったが、その不安は映画が始まりすぐに吹っ飛んだ。
 映画は、大林作品のトレードマークでもある一度封印した「A MOVIE」で幕を開ける。画面は不思議な映画の世界観を象徴するように、ほぼ全編傾いた画面で映画は展開する。
 ロケ地は、尾道から信州長野の山の里へ変わり、大林監督らしく高低差の激しい細い裏路地が好んでロケされている。一美の家は蕎麦屋を経営していて、一夫はオリジナルの映画少年からピアノ少年へと変更されている。そして本作の最大の男女の入れ替わり事件も、オリジナルは階段から一緒に転げ落ちて入れ替わったが、本作は・・・?映画を見てのお楽しみにと言う事で。

 映画の感想
 オリジナル版のコメディタッチとは一転して、本作は前半のコミカルから後半は感傷的な方向に進む構成で、意表突いた展開で私は不覚にも泣いてしまった。現在の監督の心境が作品に変化をもたらした結果かもしれない。
 映画見ると、携帯電話の普及により学生達が通信手段として当たり前のようにメールのやり取りを行い、移動教室の温泉には水着着用など時代の変化を感じる。
 そして今回の主役を務めた蓮佛美紗子の存在が映画の方向性を決定付けている。オリジナルの一美を演じた小林聡美はどちらかと言うと男気とコメディアンぶりで陽性なキャラクターを演じていたけど、本作の一美を演じた蓮佛美紗子は、細身でしっとりとした女の子らしい印象で、ピアノ少年の一夫の気持ちでピアノの弾き語りで「さよならの歌」を歌うシーンには、思わずグッと来てしまった。それにしても大林作品の歌のシーンはいつも感動してしまう。
 それから、本作には過去の大林作品のヒロインを務めた石田ひかり、高橋かおり、勝野雅奈恵が花を沿え、大林組の常連の入江若葉も出演。
 大林監督は「25年後にもう一度『転校生』を作る。」と言っている。そう遠くない未来、大林監督には長生きしてもらって2032年版の『転校生』を楽しみに待つとしよう。

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おすすめ度 :
コメント:大傑作の82年のオリジナル版です。




映画「ストーン・カウンシル」を鑑賞しました。

2007-06-18 14:01:31 | Weblog
 映画の話ストーン・カウンシル
おすすめ度 :
コメント:主演のモニカ・ベルッチがノーメイクで体当たり演技を披露するオカルト作品。

 モンゴル人の養子リュサンとパリで暮らすラウラ・シプリアンは、悪夢や幻覚に苦しんでいた。リュサンは本当は何者なのか? 彼の胸に突然現れた印は? 彼の誕生日の直前、誘拐された息子を探して、彼女はモンゴル東部の秘境に旅立つ。

 映画に対して予備知識無しで鑑賞だったのだが、内容を見てびっくりのオカルト・ミステリー作品であった。内容的には『ローズマリーの赤ちゃん』とか『オーメン』の類の作品。
 妖艶な魅力で人気のモニカ・ベルッチも全編ノーメイクで出演している。
 映画の話は、養子で育ててきた子供が実は重要な秘密を持った子供で、子供を巡り取り巻きが動き回り、子供の周りで不可解な殺人事件が起こり始まり、母のラウラも悪夢や幻覚を見始める、その後、養子の息子は何者かに誘拐され、母も息子を追ってモンゴルに向かう・・・。

 映画の感想
 まず見終わった後は狐につままれた状態と言う感じで、フランスでもこの手の作品を作っている事を新鮮に感じた。しかし、映画はわかりづらくセリフで説明して絵で見せないために理解静らいシーンが多々ある。ストーリーの性質上、残酷な血生臭いシーンなどありでショッキングな作品かもしれない。ラウラの見た幻覚の鷹、蛇、熊などCGで描かれていているが、さすがに熊のCGはイマイチ感は拭えない。舞台はフランスから後半はモンゴルに移り、謎の研究所にはカトリーヌ・ドヌーブ演じる科学者がいる、多分ドヌーブ初の悪役で出演している。
 モニカとドヌーブのファンの人は必見かも?

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映画「ストレンジャー・コール」を鑑賞しました。

2007-06-18 13:49:51 | Weblog
 映画の話
 ロサンゼルスの人里離れた丘の家に建つ邸宅にベビーシッターとしてやって来た美しい女子高生のジル(カミーラ・ベル)。夜、静寂に包まれた屋敷で、ひとり留守番を受け持った彼女の元に、不審な男から電話がかかってくる。何度も繰り返される着信音。発信元を調べるために逆探知を頼んだ彼女は、絶望的な現実を知る。

 本作は1979年に公開され現在でもカルト的な人気のあるスリラー作品『夕暮れにベルが鳴る』のリメイク作品であり、『ベビーシッターと二階の男』という都市伝説をモチーフに製作された作品である。
オリジナル版は、かなり昔にテレビ放送で見た記憶があるが、殆ど忘れていた作品である。
  
 監督は『コン・エアー』『トゥームレイダー』などヒット作で知られるサイモン・ウエスト
 そして主役を演じたのは、『沈黙の陰謀』でスティーブン・セガールの娘役を演じたカミーラ・ベル、凛々しい眉毛と涼しい目元がセガール似の美少女が成長してスクリーンに帰ってきた。

 ベビーシッターが恐怖の一夜を過ごすといえば1978年のジョン・カーペンター監督の『ハロウィン』を思い出すが、『ハロウィン』は犯人が直接被害者を執拗に追い詰めるが、本作の犯人は電話の着信音と声で被害者を追い詰める。

 映画は、遊園地の横の住宅街の殺人事件から幕を開け、高校の体育館を全速力で走りぬけるジルの姿を映し出す。ジルはボーイフレンドと喧嘩中で、携帯電話は使いすぎで親から止められている。そしてアルバイト先となる人里離れた豪邸で恐怖の一夜を過ごすことになる・・・。

 映画の感想 
 うーん、ホラー作品を見慣れた目から見ると怖くない。本作は基本的に音で脅かす作品で、前半は無駄に音で脅かすことに終始しているのがいただけない。話も新鮮味が無く、リメイクだから仕方がないのだが大体先が読める。ガラス張りの豪邸には様々な仕掛けが施されていて、最新式のセキュリティシステムや、タイマー式のスプリンクラー、センサー式の自動照明、錦鯉が泳ぐ和洋折衷の中庭、暖炉と火かき棒、大学生の息子が使う別宅など様々なアイテムが伏線として張り巡らされている。出演者も最小限、留守中の屋敷にはジルの他には、メイドのおばさんと猫、病気で眠る二人の子供たちだけなので、ほぼ全編ジル役のカミーラ・ベルの一人芝居である。サイモン・ウエストの演出も、室内を縦横無尽に動き回るカメラと暗がりを旨く利用して恐怖を盛り上げる。
 最後の15分ほどドキドキしたが、初めに描かれたジルのランナーとしての能力も発揮されないままだし、犯人に対してもさらりと語られて幕とはお粗末。大オチも安易に想像できる展開である。監督のサイモン・ウエストはスリラーと恐怖をもう一度勉強する必要がある。
 しかし、この映画の最大の魅力は、主演を勤めたカミーラ・ベルだろう。丹精な顔立ちに、涼しい目元に黒髪、日本でもブレイク必至の美少女を見るための映画かもしれない。

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夕闇にベルが鳴る
おすすめ度 :
コメント:本作と同じ都市伝説「ベビーシッターと二階の男」をベースに作られた作品。




映画「舞妓Haaaan!!!」を鑑賞しました。

2007-06-18 13:40:12 | Weblog
 映画の話
 熱狂的な舞妓ファンの鬼塚は、京都支社への転勤を機に、恋人のOL富士子を捨てて、初めてのお茶屋に向かう。ところが、いざ念願の舞妓はんとの野球拳というときに泥酔したプロ野球選手の内藤が隣の座敷から乱入してくる。

 人気脚本家の宮藤官九朗の最新作で、監督は『花田少年史』の水田伸生、主演は阿部サダヲ

 映画はオープニングから、凄まじいハイテンションで幕を開ける。カメラ小僧に囲まれる舞妓さん、カメラ小僧の中には主役の阿部サダヲの他に、バナナマン日村須賀健太などが確認できる。舞台は会社に移り、鬼塚は自分の作った舞妓さんのHPを荒らす、謎の人物との文字による罵り合いで、劇場は大爆笑の渦と化す。
 それにしても、この劇場のお客さんも異常なくらいにハイテンションで阿部サダヲの一挙手一同に大爆笑で何か、阿部サダヲのファンイベントか、宗教のイベントにでも迷い込んでしまった気分で非常に居心地が悪く早く会場から立ち去りたい気分に・・・。
 まぁ、ファンの方には申し訳ないのだが、私は阿部サダヲの顔が苦手であり、彼を初めて認識した『うずまき』の頃から気持ちの悪い奴というカテゴラリーに入る人物であり、この試写会も見るか見ないか迷ったのだが「来るもの拒まず」をモットーにしている立場上試写会を見に来たのだが、映画のテンションとお客さんのテンションについて行けない自分が居る事をひしひしと感じる。

 映画は、お茶屋ののれんをくぐる為に鬼塚がカップラーメン作りに四苦八苦する中盤から、HP荒らしの張本人の内藤と転職合戦という訳の判らない展開に変貌してゆく・・・。

 映画の感想
 先にも書いたが、この映画とお客さんのテンションに着いていけないまま見たせいか気色の悪い作品としか感じられなかった。とにかくは物語の展開にON/OFFが無く、ずぅーっとONのまま突っ走るので見ていて疲れるし、阿部サダヲの大げさな押し付けがましい演技は私は駄目だ。監督は、この映画にも出演していて遺作となってしまった植木等の『無責任男』シリーズを目指したらしいのだが、植木の笑いは人によっては押し付けがましいかもしれないがスマートであり一本筋が通っている。(植木の登場シーンでは「スーダラ節」のメロディが薄っすらと被さる粋な計らい。)それに対して本作は笑いがベタでドンドン本道から話がズレて行ってしまい、初めに描かれた舞妓さんのHPの話はほったらかしで、転職合戦になり、舞妓さんの話が外に追いやられていってしまい、阿部サダヲVS堤真一と言う展開なってしまうのがいただけない。
 それから誰も知らない職業を描くと言うと伊丹十三監督の『女』シリーズがあるが、伊丹作品にはその職業に対して徹底的にリサーチをして尊敬をしながら滑稽に描く事にたけていたが、本作は舞妓さんという職業の上辺だけをすくい上げて、面白おかしく描いたと言う印象だった。
 まぁ、本作は気楽に見る為の作品なのかもしれないが、宮藤官九朗のファンでもなく、阿部サダヲのファンでもない私にとって、映画から「一見さんお断り」を食らった気分である。

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映画「アポカリプト」を鑑賞しました。

2007-06-18 13:28:07 | Weblog
 映画の話
 マヤ文明後期の中央アメリカ。ジャガー・バウは部族長の父や妻、幼い息子、仲間たちとともに平和な日々を送っていた。しかしその平和は突然崩れ去ってしま う。村がマヤ帝国の傭兵に焼き討ちされたのだ。目の前で父を殺されたジャガーは、捕まって都会へと送られる。各地で捕縛された人間が奴隷として売り買いさ れる都会。そこで彼を待っていた運命は、あまりにも過酷なものだった…。

 マヤ文明の崩壊前夜を描いたメル・ギブソン監督のアクション大作だ。俳優は全て無名の素人たちで、セリフは全篇マヤ語で進行する異色作でもある。
 無名の俳優陣に対してスタッフにはメル・ギブソンとは関係の深い最高級のプロフェッショナルが集まった。まず撮影監督に『ダンス・ウィズ・ウルブズ』でアカデミー賞を受賞したディーン・セムラー。音楽には『タイタニック』『ブレイブ。ハート』などで知られるジェームズ・ホーナーだ。本作ではパーカッションと尺八かパンフルートと人間の声によるシンプルであるがダイナミズム溢れるスコアで映画を盛り上げる。
 メル・ギブソン監督作は『顔のない天使』以外、『ブレイブ・ハート』『パッション』と全て過激な暴力描写がしばし問題とされるが、本作も過激な暴力描写満載の作品で日本の上映はR-15指定とされている。
 本作はデジタル撮影をフィルムに変換した為に、激しいアクションシーンで動きボケが頻繁に出てしまうのが難点。

 オープニングに狩を通して村人たちのキャラクターを活き活きと冗談を交えながらコミカルに人物紹介をしていて表現が現代流で実に取っ付き易いく、父と子、婿と姑など、つかの間の平和な村の風景を印象的に描いている。しかしメル・ギブソンの本領発揮は、村人が町から来たマヤ帝国の傭兵に襲われてから怒濤の残酷描写が続く。無残に殺されていく者と捉えられ奴隷のように扱われる者や逃げ延びる者、一瞬のうちに運命が翻弄される村人たちの様子を克明に描く。
 捕らわれたものたちは、腕を後ろ手に縛られ、首は竹の棒に縛り付けられ一列に数珠繋ぎに町に連れて行かれる、その大人たちをどこまでも追いかける子供たちの姿が悲しい。村から町までの過酷な道中は、村人を人間扱いをしない意地悪な傭兵や、激しい川の横断と崖から転落の恐怖や、マヤ帝国の崩壊を予言する少女など要所要所つぼを抑えた演出が冴える。
 そして、村人たちが初めて目にする文明、マヤ帝国の全貌が明らかにされる。

 映画の感想
 これは面白い。出来れば予備知識無しで見たほうが面白いと思われる。メル・ギブソン監督の前作『パッショッン』は重々しく痛々しい映画であったが、本作は前半から中盤にかけてはかなり苦痛を強いられる展開ではあるが、話の面白さと卓越した演出でグイグイと引き込まれていく。そして、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」のような奇妙奇天烈なマヤ帝国の描写から人間狩りに変わる後半が面白い。村に残した妻と息子の為に主人公が傭兵に追われながらひたすらジャングルを駆け抜ける展開であるが、人間の肉体の限界とCGを取り入れたアクション演出が素晴らしく、断崖際立った滝つぼへのダイビングや、動物絡みのアクション、憎き傭兵との一騎打ちから大親分との一騎打ちなど見ていてハラハラドキドキの連続で、ギブソン作品でここまで娯楽色の強い作品は初めてで、ギブソンの監督としての才能に拍手を送りたい。それから、以前からギブソン作品を支えてきたアクションコーディネイトとセカンド監督を務めたミック・ロジャースの存在も大きかったようだ。映画は第一級の秘境を舞台としたアクション娯楽作であり、暴力描写が苦手でなければ十分に楽しめる作品であり、久しぶりに映画を見ていて興奮した作品でもあった。

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映画「ゾディアック」を鑑賞しました。

2007-06-18 13:18:02 | Weblog
 映画の話
 サンフランシスコ一帯に“ゾディアック”と名乗る連続殺人鬼が現れた。管轄区内の4人の捜査官たちが殺人犯の捜査に奔走する一方で、まるで警察をあざ笑うかのように、不可解な暗号と手紙を残していくゾディアック。やがて4人の男たちは、謎めいた手がかりばかりが残されるゾディアック事件に取り憑かれていく ――。

 本作は実際に起きたゾディアック事件を元にした作品で、私はゾディアックについては映画「ダーティーハリー」の犯人のモデルになった人物としか知らないので、ほぼ予備知識ゼロと言った所。

 映画は、時代設定に合わせて昔のワーナーブラザーズとパラマウントピクチャーズのロゴマークにアナログ音声ノイズを被せてある懲りようで幕を開ける。
 時代は1969年、フィルムの感じも黄色みがかったボケ気味の画像で昔の雰囲気を感じると思っていたのだが、これは製作者のトリックで本作はHDカメラで撮影されている。
 オープニングにゾディアックの冷血な犯行を観客に見せ付けて恐怖を植え付ける演出が旨い。
 そしてゾディアックの犯行声明文と共に暗号文が新聞社に送られてきて、暗号文は新聞社から警察、CIA、FBIから、新聞を読んだ高校教師が暗号を解読するまでが時系列にテンポ良く、無駄なシーンが無く映画の世界にドンドン引き込まれていく。
 ゾディアックの犯行は第二、第三、未遂事件と淡々と描きながら、平行して新聞社と警察の活動が細かく丁寧に描かれる。
 映画は二人の新聞記者と二人の警官に焦点を当て、事件の迷宮に翻弄されて壊れてゆく男たちの姿が描かれる。

 映画の感想 ややネタバレあり
 本作は現在進行形の未解決事件を描いた作品なので後味のいいものではないが、一本の映画として素晴らしく良く出来ている。
 監督のデビッド・フィンチャーの映像作家としての成熟を画面からヒシヒシと感じる。細かいエピソードを積み重ねて、見せる所は見せて、省略できる所は省略した割り切った演出で無駄が無くテンポも非常にいい。
 特に未遂に終わった事件の親子のシーンは卓越していて、事件の前後を描いて大事なシーンは切り取られていて、観客の想像にゆだねてあるのだけれど、どのシーンより一番スリルがあり、何でも絵で見せるより遥かに恐ろしいシーンで監督のセンスの良さを感じた。
 役者のチョイスも良く、かなり地味目の面子がそろっているが、適材適所に良い役者が配置されていてる。話の進行を警察ではなく、新聞社の風刺漫画化の目線で語られて観客が感情移入がしやすく、この映画の中でも一番ひ弱そうな人物だけあり、後半の単独取材で知らす知らずに犯人に近づきすぎてしまうシーンは怖かったし演出が旨い。
 映画は、観客に結論を委ねて幕を閉じるが、この映画を見ると、どう考えてもアイツが犯人としか考えられない。本当はどうなの?

セブン」のデビッド・フィンチャーを期待してみに行くと肩透かしを食らうので注意が必要!

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映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド(吹き替え版)」を鑑賞。

2007-06-09 22:27:17 | Weblog
映画の話
 “深海の悪霊”、デイヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)と東インド会社のベケット卿(トム・ホランダー)が手を結び、海賊たちは滅亡の危機に瀕していた。生き残る手段は“9人の海賊たち”を招集することだったが、9人のうちのひとりはあのジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)だった。しかし、彼は現在“世界の果て”に囚われていて……。

 まず、本作の予告編について書きたい。前作の『デッドマンズ・チェスト』のラストで消息を絶ったジャック・スパロウが予告編に出まくっていてガッカリした。あれだけ謎を残して終わったのに、出てくる事は判ってはいるけど映画を見るまで謎のままにして欲しかった。

 今回見た吹き替え版はフィルムのプリントが非常に悪く、画面は暗くてガサガサでボケ気味。音もレンジが狭くドルビーデジタルを更に圧縮を掛けたみたいな音で伸びが無く、スーパーウーハーの低音だけがボンボンと唸っている感じである。

 さて本編は、ジャックの消息を求めて敵の懐に飛び込むオープニングのエピソードを見ていて『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』の初めのハン・ソロ船長の救出にジャバ・ザ・ハットの宮殿に潜り込むルークとレイアの話を思い出した。こちらもシリーズ3作目で同じような展開になってしまったのか?

 映画の感想
 うーんさすがにシリーズも3作続くと、見るほうも見慣れたせいか新鮮味が無く、かなり大味に感じた。出演者も増えてしまい焦点もぼやけ気味で、期待したチョウ・ユンファもそれほど出番も無く、ジョニー・ディップも存在感がいつもより気薄に感じた。それ対してバルボッサを演じたジェフリー・ラッシュが素晴らしい存在感で彼が出てくると画面がピシリと引き締まる。
 まぁ、本作の主演はエリザベスを演じたキーラ・ナイトレイでもあった様だし、オーランド・ブルームは相変わらずのポジションで存在感が薄い。
 物語の展開も一本調子で押し引きが無くダラダラとした展開でラストでようやくエンジンが掛かった感じてあった。それにしても、あれだけ海賊が集結したのに、他の海賊たちの見せ場が殆ど無いという演出もいただけない。
 今回は吹き替え版で見たのが仇となったのか、作品の世界に入り込めないまま映画が終わってしまった。
 ホラーテイストも入ったバランスの良かった一作目の『呪われた海賊たち』、コミカルな味付けと立体的なアクションが楽しかった二作目の「デッドマンズ・チェスト」、非常にガッカリな結果になってしまった「ワールド・エンド」。もし、シリーズをまだ続けるのであれば監督の交代は必至だろう。
 エンドロールの後にも話がありますので、焦って帰らないように・・・。

 
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映画「監督・ばんざい!」を鑑賞。

2007-06-09 22:18:15 | Weblog
 短編映画素晴らしき休日の話
 北野武監督初の短編作品で、田舎の野っぱらにポツンと建つ映画館を舞台に、客のモロ師岡と映写技師のたけしの二人芝居であるが、モロは客席、たけしは映写室の中なので直接の絡みは無い。
 上映作品はモロも出演しているアノ映画。上映時間が3分ほどなので、これと言った展開も無く可も無く不可もなくと言う印象である。

 『監督・ばんざい!』の話
 この映画は、映画監督のキタノの構想を7本のショートムービーが、伊武雅刀のナレーションとともに描かれていく。と言う事で7本を順番に紹介していきますが、記憶が曖昧で順番が前後しているかもしれません。 
 
 ギャング映画の話
 たけし自身が「ギャング映画はもう撮らない。」と宣言してしまったけど、とても活き活きとしたパートで、北野組常連の寺島進と『TAKESHIS‘』のやくざと同じメンツの石橋保らが出演。

 小津映画の話
 画面は白黒に変わり、小津安二郎監督の世界観をたけし流に再現。松坂慶子、木村佳乃が出演。

 恋愛映画の話
 内田有紀出演の恋愛話。冒頭に写るたけしのショットがカッコいい。

 昭和30年代の話
 夢もロマンも無い、世知辛いたけし流の昭和の回顧話。藤田弓子が存在感かもし出している。

 ホラー映画の話
 たけし軍団から、ホラーと言えば柳ユーレイが久々の出演。かなり古いタイプのホラーと言うか、怪談調の作品。池辺晋一郎の音楽が実相寺昭雄監督の『姑獲鳥の夏』の音楽に似ている。

 忍者映画の話
 CGとワイヤーアクションを取り入れたダイナミックな作品。なかなかカッコいい。

 SF映画の話
 地球に隕石が落ちてくる話なのたが、平行して岸本加世子鈴木杏の詐欺師親子の話と、江守徹が総裁の団体の話と、井手博士の話が映画に絡み合い映画が破壊して行く。
 プロレスラーの蝶野天山のラーメン屋が面白かった。

 映画の感想
 これゃー駄目だ。私も北野監督作品は全て見てきたけど、監督の迷いがそのまま画面に現れている。監督自身もいろんなパターンの映画を撮ってきて新しく何を撮っていいのか判らないまま思い浮かんだアイディアを映画に詰め込んだ印象を受けた。
 前半から中盤はなかなか面白かったのだけれど、江守徹が出てきた辺りから雲行きが怪しくなってきてギャグも滑りっぱなしで笑えない。
 映画のセリフでも行っていたが、都合の悪いシーンは全てたけし人形に変わってしまい、見ている観客もどの様に反応していいのか戸惑っている感じであった。
 しかし、この映画の救いは池辺晋一郎の音楽だ。黒澤明や今村昌平作品など携わった日本映画音楽界の重鎮が、こんな駄目な映画の為に様々なパターンの美しい流麗なスコアを書いている。

 この映画を見て、北野監督はギャング映画が一番活き活きとしていたのと、昭和30年代の作品と忍者映画に作家としての可能性を見いだせられた。特に昭和30年代の作品は是非一本の映画として製作して欲しい。

 映画を見終わって印象に残ったのは、たけし人形を小脇に抱きかかえて思い悩むたけしの姿と、久々のたけし映画の出演で張り切っていた井手らっきょうの空虚な高笑いが耳に残った。

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