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管楽器のはなし

2005-11-26 15:04:56 | その他
先日、トランペットのレッスンを再開したことに関連して、「歯がある限り吹きたい」とコメントしたところ、「歯がないと吹けなくなるのか」という質問をいただいた。(11/24の記事及びコメント参照)

以前にも弦楽器を弾く友人から同様の質問をされたことがあって、自分でも本当のところを知りたくなったこともあり、友人で歯科医のフルーティストに訊いてみたことがあった。

その答えは「歯を失ったり、総入れ歯状態では、管楽器は吹けない(だろう)」という、予想通りといえば予想通りのものであった。

理由は、歯を失ったり、入れ歯の状態では、それ以前と口の中の形が大きく変わってしまい、アンブシュア(管楽器をやらない方への注:楽器を吹くときの口唇の形、フォームのことをいう)が保てなくなるから。

管楽器を吹く立場から言うと、アンブシュアの感覚はきわめて繊細なものである。例えば、寝不足で顔がむくんでいたりすると、唇もその影響を受けてしまう。影響の程度は、マウスピースを口にあてただけで明確に感じる位のもので、小さいものではない。食事のときなどに口の中にちょっとした傷をつくてしまった場合なども同様である。見た目には全く判らないような微細な問題でも、楽器を吹く際にはかなりの影響を与えているのは間違いない。

そこから類推するに、入れ歯によって変わる口の中の感覚は演奏上非常に大きなダメージをもたらすだろう。おそらく、入れ歯で吹けるようになることがあるにしても、そこまでには数年単位での訓練が必要なのではないか。

まして、歯を失ったままの状態ではまず演奏はできまい。アンブシュア以前の問題として、口内から息を通す際、その量を加減する通り道としての歯が無いわけで、これを克服することは不可能に思える。

一方で、プロに要求されるシビアなレヴェルにおいては、歯さえも演奏のためによりよく利用したいという考えもあるようだ。
以前、専門誌で読んだのだが、あるトランペッターは息の通りをよりよくコントロールするために、自分で自分の歯を削ったり、隙間を作ったり、埋めたり といったことを実際に行っているようだ。
むろん、素人は絶対にやらないように、との注意書きも添えてあったし、たとえ注意書きがなくともそこまではやらないが、楽器の演奏も突き詰めれば自身の体の問題に行き着くものであるらしい。ピアニストが、指がより開くように指のまたを切除してより開く、というのも同じベクトル上にあるといってよいだろう。

今日はこれからバイエルン放送響演奏会@NHKホールである。今年聴く来日オケもこれで最後になる。この前の日曜日、あのホールであってもベルリン・フィルは素晴らしい音楽を伝えてくれた。彼らはどうか。
また、最近とみに評価の高いマリス・ヤンソンスの指揮、初めて実演で聴く五嶋 みどりのプロコフィエフにも期待したい。


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