井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

やはり、見たかった日本人の心意気

2018年07月07日 | 日記

昨夜、ベルギー対ブラジル戦をライブで、途中から見始め、
こうなりゃ、日本が敗れたベルギーに勝って欲しい、と
思うのはおそらく、日本人サポーターに共通の
心理かもしれません。

しかし、しょせん他国同士の試合には乗り切れず(元々のサッカーファンではないので)
途中で眠ってしまったのでしたが、ベルギーが勝利したのですね、よかった。
こういう強豪を相手に善戦したのだから、日本も結構強かったじゃないか、
とこれも、共通心理かもしれません。

とはいえ、進んでもどうせ敗れるならあのゆるいパスは、止めて欲しかったなあ、と今更ながら、それが本音。監督の苦衷と自己嫌悪も報道で知って、ルール違反でもなし、ま、いっか、と自分を納得させていたのですが、やはり日本人の美学として最後まできっちり戦って欲しかったなあ、というのが本心です。
汚い勝ちより、きれいな負けを。

週刊新潮で、いつもはユーモアでくるんでエッセーを書かれる藤原正彦さんが怒り狂ってそのことを指摘していたり、かねてより尊敬する保守論客の方も同じ意見であることに力を得て、また蒸し返しているみっともなさなのですが。

「勝てばいい」という、今は大相撲界も席巻している姿勢が受け入れがたいのです。

週刊新潮の「管見妄語」から藤原正彦さんの文章を抜書きしてみると・・・・

子供たちが万引をしないのは、親のしつけであり「天罰が下る」であり「お天道様が見ている」からであった。

両親からは「汚いことはするな」と始終言われた。

一対〇のまま試合を終わらせろ、という監督指令を長谷部から伝えられた選手たちは以後、気の毒にも一切の攻撃を止め自陣後方でのパス回しに終止した。余りの不様に怒り心頭の私は直ちにテレビの前を去り寝室に上がった。

強敵を相手にきれいなサッカーで健闘してきた日本代表は世界中から多くの応援を受けていた。それが・・・(略)

英国放送BBC放送は「日本は世界の笑いものになった」と言い、ドイツのビルト紙は「W杯で最も恥ずべき十分間」と書いた。

 

・・・・・私は日本の美意識の欠如と捉えているけれど、世界スタンダードから見ても美しくはない行為だったのかもしれません。あれが日本人の精神と思われたかと思うと、無念。

藤原氏はこうも書いています。

スポーツ界もメディアも当初の当惑や恥辱はすぐに忘れ、「規則に従ったまでだ」「監督は冷徹な勝負師だ」などと、書かれている。

美醜で善悪を判断した孤高の日本を忘れた現代日本は、今や諸外国と同様、ルールに触れないことなら何でもするという姑息で狡猾な国に成り果ててしまったのだ。

 

・・・・・朝青龍の跳梁跋扈から始まった外国人力士の無作法を咎めるより応援する日本人が多かったこと、そして貴乃花親方の姿勢としては偏狭かもしれないが、言わんとする所はまっとうであったのに潰されてしまったことなども、思い合わせてこちらも藤原さんの呼吸に合わせて、実は暗澹、索漠としている現状です。

監督は白シャツがセクシーなどと女性誌が持ち上げていて、それに異存はないけれど、苦渋の選択だったとはいえ、美しさのほうを追求していただきたかった、というのがあれから数日後経過した現在の率直な気持ちです。

藤原さんのエッセータイトル「管見妄語」の「管見」は、細い管から物事を見るような、視野の狭いことを表し、自分の意見への謙譲語です。

 

誤変換他、後ほど。

 


4 コメント

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日本人の美意識 (かりんとう)
2018-07-07 17:06:28
藤原氏は、日本人の美意識を常に語って下さってて、井沢先生と共に尊敬する方です。
あのポーランド戦、まさしく私には日本人の戦い方ではないでしょう!と憤慨しておりました。こんな姿、世界に発信して欲しくないと。我が家のサッカー好きの夫と息子には、これは戦術でコマを進める為には仕様がないんだ!と力説されましたが。井沢先生のおっしゃった事を思い出して、日本には柔道、剣道、相撲道とただのスポーツとは違う考えがあって…と説き始めましたが、所詮、先生ではないのでうまく説明できず、撃沈でした。
この頃、サッカー関係のツィッター上にいる事が多かったのですが、久しぶりに先生のブログへお邪魔して、豊潤な言語に満たされました。先生のブログは、包み込まれるようでとても癒されます。ありがとうございます。
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かりんとうさん (井沢満)
2018-07-07 19:17:21
あの作戦でよし、とする勝敗第一の価値観は無論あるので・・・・
要は基礎の価値観のどこに軸足を置くかの選択の次元なんで、しょせん平行線でしょう。
この点で、論争しても疲れるだけだと思われます。

柔道や合気道、剣道、大相撲などは、日本発祥なので日本人の美意識で言い通すことは出来ますが、サッカーは西洋発なので、同列に置くのは無理があるかもしれません。でもスポーツマンシップという意味では西欧圏も大ブーイングのようですね。あちらは騎士道なのかなあ、強いて価値観で論じるなら。
あれ、やっぱり卑劣というのが言い過ぎなら、美しくないですねえ。
美しくなくてもいいんだ、と言われればそれっきりです。そこを言い合っても不毛かもしれません。
感受性それぞれで、相手の感受性の否定は出来ないし。

私は、勝敗第一の考え方はある、と認めた上で私は受け入れ難い、という形でしか発言できないですねえ。もし、他の場でそういう話になったら。

ただ、肝心なのはおそらく監督はじめ、何より選手たちが内心、気色悪い思いを持て余しているだろうと思います。あれでいいんだ、とは誰も思ってないでしょう。ピッチでリアルにやった者こそが、そのみっともなさは肌で感じていると思うのです。

あれでいいのだ、と言い張る人には監督と選手が、あのパス回しで晴れ晴れとスッキリとした気持ちでいるかなあ? という程度には言えるかもしれません。
ズシーンと、わだかまっていると私は想像しています。
10分間もなんて、試合の場への侮辱行為ですもの。
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スッキリしました! (かりんとう)
2018-07-07 19:57:11
先生、お返事ありがとうございます。
息子にも、そんなのは選手も監督も百も承知で、だからサポーターはその辛さも込みで応援するんだ!と言い返されてしまいました。ぐうの根も出ませんでした。
でも、先生のお返事で、心の霧が晴れました!清々しいです。ありがとうございました。
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訂正です (かりんとう)
2018-07-07 21:39:41
ぐうの根→ぐうの音です…。お恥ずかしい、訂正致します。何度も失礼致しました。
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