がんは、日本人の2人に1人がなると言われている。今回の診療報酬の改定でも、がん治療の充実を促す内容が盛り込まれた。
新たに公的医療保険の適用となり、報酬額が決まったのは放射線治療の一種の「粒子線治療」だ。この治療には、水素の原子核を利用する「陽子線治療」と、炭素の原子核を使う「重粒子線治療」がある。いずれも一般的な放射線治療で用いるX線と比べ、がん細胞へ集中的に照射でき、正常な細胞への影響は小さいとされる。重粒子線は、陽子線よりも威力が大きい。
これまでは、粒子線治療そのものの費用は患者が全額負担する一方、検査費や入院費などには保険が使える「先進医療」という制度で、様々ながんを対象に実施されてきた。患者の負担は約300万円に上った。
先進医療で集まったデータをもとに厚労省の専門家会議が、がんの種類ごとに有効性と安全性を検討。その結果、小児がんのうち、広がっていない固形がん(神経芽腫、横紋筋肉腫など)への陽子線治療と、切除できない「骨軟部腫瘍(しゅよう)」への重粒子線治療が、保険適用になった。
医療機関への報酬は150万~237万5千円で、患者の自己負担はその1~3割。保険診療になったことで、1カ月分の自己負担額に歯止めをかける高額療養費制度を利用でき、所得に応じて負担額がさらに減る。子どもは小児慢性特定疾病の対象となり、月最大1万5千円で済む。
「通常の治療として選択できるようになるのは患者にはとてもありがたい」。2009年に長女(7)が筑波大病院で陽子線治療を受けた茨城県の女性(34)は語る。長女は生後6カ月の時、顔にできた腫瘍が横紋筋肉腫と診断された。抗がん剤治療とともに行う放射線治療は、脳や目への影響を抑えるため、X線ではなく、陽子線を研究として試みることになった。1日1~2分の照射を週5日、1カ月半続けた。
腫瘍は消え、現在まで再発はない。陽子線を当てた顔の皮膚が直径3センチほど茶色くなり、歯が5本ほど生えていないが、ほかの後遺症はないという。
今回の改定ではほかに、在宅での緩和ケアを進める狙いで報酬を手厚くした。
通院して緩和ケアなどを受けている進行がんの患者が、自宅で受けられるように、通院先の病院が、在宅医療をしている診療所と話し合いをしたうえで、紹介状を作成したら、患者1人につき1回のみ5千円が加算される。
また、自宅で緩和ケアを受けていても、急変時には緩和ケア病棟に緊急入院できるよう、受け入れ病院に1日2千円(15日以内)が加算される
新たに公的医療保険の適用となり、報酬額が決まったのは放射線治療の一種の「粒子線治療」だ。この治療には、水素の原子核を利用する「陽子線治療」と、炭素の原子核を使う「重粒子線治療」がある。いずれも一般的な放射線治療で用いるX線と比べ、がん細胞へ集中的に照射でき、正常な細胞への影響は小さいとされる。重粒子線は、陽子線よりも威力が大きい。
これまでは、粒子線治療そのものの費用は患者が全額負担する一方、検査費や入院費などには保険が使える「先進医療」という制度で、様々ながんを対象に実施されてきた。患者の負担は約300万円に上った。
先進医療で集まったデータをもとに厚労省の専門家会議が、がんの種類ごとに有効性と安全性を検討。その結果、小児がんのうち、広がっていない固形がん(神経芽腫、横紋筋肉腫など)への陽子線治療と、切除できない「骨軟部腫瘍(しゅよう)」への重粒子線治療が、保険適用になった。
医療機関への報酬は150万~237万5千円で、患者の自己負担はその1~3割。保険診療になったことで、1カ月分の自己負担額に歯止めをかける高額療養費制度を利用でき、所得に応じて負担額がさらに減る。子どもは小児慢性特定疾病の対象となり、月最大1万5千円で済む。
「通常の治療として選択できるようになるのは患者にはとてもありがたい」。2009年に長女(7)が筑波大病院で陽子線治療を受けた茨城県の女性(34)は語る。長女は生後6カ月の時、顔にできた腫瘍が横紋筋肉腫と診断された。抗がん剤治療とともに行う放射線治療は、脳や目への影響を抑えるため、X線ではなく、陽子線を研究として試みることになった。1日1~2分の照射を週5日、1カ月半続けた。
腫瘍は消え、現在まで再発はない。陽子線を当てた顔の皮膚が直径3センチほど茶色くなり、歯が5本ほど生えていないが、ほかの後遺症はないという。
今回の改定ではほかに、在宅での緩和ケアを進める狙いで報酬を手厚くした。
通院して緩和ケアなどを受けている進行がんの患者が、自宅で受けられるように、通院先の病院が、在宅医療をしている診療所と話し合いをしたうえで、紹介状を作成したら、患者1人につき1回のみ5千円が加算される。
また、自宅で緩和ケアを受けていても、急変時には緩和ケア病棟に緊急入院できるよう、受け入れ病院に1日2千円(15日以内)が加算される