社会を見る眼、考える眼

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「これからはインド、という時代」は本当か。

2012-11-17 11:25:13 | 論壇
  [これからはインド、という時代」(日下公人&森尻純夫共著、WAC出版)を読んでみた。 尖閣諸島問題に端を発した 、中国の反日暴動は日系企業の破壊から略奪までを、中国政府が主導したもので、官製デモと言われた。それに合わせて、中国リスクがクローズアップされてきた。 地球の問題児みたいな中国を、なぜか日本はじめ世界が重要視する。日本の場合、日本人のルーツに中国人が多いのか、長年、中国文化圏に属していた関係なのか、日中ともに乳離れ・親離れできない関係にある。 そんな中で、脱中国をリアルに考えた場合、ベトナムやインドネシア、ミャンマーでは間に合わない。なぜか? 中国への大企業の進出は、いわば日本の工場地帯を中国に求め、中国国内需要と世界への輸出基地になっているため、規模が非常に大きい。だから、その規模を代替進出先の内需でも、そこからの輸出でも 、同様な規模を確保できそうなのは、世界中でインドしかない。インドは5年で中国と肩を並べる人口大国になる。理由は、中国には一人っ子政策があるが、インドにはないからだ。 いま、急いで日本企業が中国から総引き上げする必要はないが、尖閣諸島問題がなくても、遅かれ早かれ、中国からは暫時撤退に追い込まれていく。理由は、人件費をはじめ、すべての経営コストが20年前に比べて、猛烈に高騰している。その上、中国内での国内競争が熾烈になっているため、物販でも旨みが小さくなっている。つまり、人口大国中国の生産基地としてのコスト競争力も、消費地としての旨みも減ってきているのである。その上に、日中間には、因縁をつけられた領土問題(=本来はない)がある。 それでは、インドはどうなのか。人口的には、世界で唯一中国に対抗できる国である。問題は、中国のようなカントリーリスクはないのか。インドは、戦後一貫して日本に対しては、親日的な国である。アジアではタイに次ぐ親日的な国である。インド人は、反日感情がないばかりか、親日的で理数学的な分野の頭の良さでは、世界のトップクラスでもある。コンピューターのソフトウェア開発では、シリコンバレーでもインド人のシェアが一番である。人柄も中韓の比ではない。 にもかかわらず、なぜ、日本や欧米の企業は、インドより中国に進出しているのか。それは、「社会主義市場経済」という、奇妙な体制が安定的にあるうちに、中国を目一杯利用したいためである。さらに、この20年間で、インフラ整備が先進国並みに追いついてきた。これが中国を利用する最大の理由。第二次戦争以後、イギリスから独立したインドは、中国と同様に社会主義国で出発したが、ソ連に裏切られ、中国を見習うわけにも行かず、模様眺めをしているうちに、旧ソ連にも、中国にも、大きく水を開けられてしまった。その最大の理由は、20世紀末になっても、飢餓から抜け出せなかったからである。また、識字率が低く教育が行き届いていないために、工業化に大きな障害になっていた。 それが、脱ガンジー主義に転じて、1995年から農業改革と教育改革を同時に行い、飢餓から脱して且つ文盲からも脱してきた。隣国のパキスタンとの緊張緩和にも成功し、少数民族紛争も収束してきた。こうなれば、もう、インドへの 進出の障害は、すべてなくなったのか。そうでもない。中国共産党のような、中央政府が高圧的な国家運営をしていないインドでは、地方自治体の自立がものすごく強い。だから、インドの公用語はヒンズー語と英語になっているが、実態は20州の20言語が、その地域で一番強いのである。このあたりが、日米欧の主力企業がインドへの進出に二の足を踏む、最大の理由のようだ。しかし考えようによって、インド国内は20州に独立していると思えば、治安の面でも、柔和な民族性でも、長期的にはインドの方が有利に見える。 中国よりもインド重視政策をとっていたのが、自民党の麻生前首相だった。インド訪問をして日印経済交流促進協約に調印したが、総選挙で民主党に惨敗して政権を失ってしまったのである。日印関係は、総選挙後の次期内閣で再構築していくのであろうが、アジアへの軸足を、民主党の東アジアから、自民党主導の日印主軸に移行すべきである。 アジアでの経済の軸足を非友好国に置くなど、国家戦略としてもおかしなことである。米国とインドとの関係は、必ずしも良くないが、非友好国でもない。今年5月にはヒラリー国務長官が訪印して、対イラン問題でインドから協力を取り付けている。つまり、世界のナビゲーター米国が、インドとの関係を深めようとしているのである。 中国進出時のように雪崩を打って、インドに行く必要はないかもしれないが、ポスト中国のために、インドに今から布石を打っておくことは、日本の企業ばかりか、日本の国策にもなるだろう。(※この記事は、「これからはインド、という時代」の読後感想ではありません。読後の僕の見解です。「これからはインド、という時代」886円、税別)

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