社会を見る眼、考える眼

 新しいmakoworldブログを開設いたしました。SNS全盛時代ですが、愚直に互いの意見を掲げましょう。

書評「知っておきたい日本の神様」武満誠 著

2013-02-04 10:54:41 | 書評
武光誠 著 「知っておきたい日本の神様」
八百万の神を信じる日本人は、一度はこの本を読む価値がある。ぼくは神道、仏教、ユダヤ教、キリスト教、ヒンドゥ教の宗教ごとの本を読んだが、それは一般常識として武装するためだった。内外のちゃんとした人に「無神論者です」といったら、それだけで軽く見られる。 宗教の信じ方はいろいろあるが、ひと言で言えば「己の力だけで生きている」という傲慢さを戒める神の存在と、民族ごとの価値観を統一するという意味で、キリスト教の世界布教戦略があった。16世紀には、フランシスコ・ザビエルが日本に布教に来ている。しかし、ユダヤ教のユダヤ選民主義(神に選ばれた唯一の民族の意味)を戒めるために発生したキリスト教が、同じユダヤ教から派生したイスラム教と血みどろな戦いをしているのは、皮肉な結果になっている。誰も見たこともないヤーベ(エホバ)の存在を、いろいろな形で伝え、解釈する一神教の世界。欧米と中近東&中南米、ロシアなど、地球の大半をカバーしている。  インドのヒンドゥー教から誕生した仏教は、一神教ではなく人間自身が修行によって、菩薩 を経て大日如来等の最高位の仏(ほとけ)に到達する。厳しい修行を収めた者は、死と同時に成仏できると言われる。これを即身成仏といい、即身成仏した空海は弘法大師という称号を朝廷から与えられた。インドで生まれた仏と菩薩は、日本では神となって現れることを権化といい、現れたものが権現である。
日本独自の神道の最高神は、女神の天照大神であるが、これは仏教で言えば大日如来に相当するが、日本への仏教の伝来は538年(=552年説もある)であるから、天長節の方がはるかに先になっているため、大日如来の化身が天照大神などとは言えない。 そんなことよりも、この本の面白さは、自分が住んでいる近所に必ずある神様の由来を、やさしく解説してくれていることろである。取っ付き易くもあり、便利でもある。全国で最も多い神社は稲荷社である。19800社ある。続いて八幡社(14800)、天神社(10300社)、諏訪神社(5700社)、神明社(5400社)、熊野神社(3300社)、春日神社(3100社)、以下、八坂神社、白山神社、住吉神社、日吉(=山王)神社、金比羅神社、恵比寿神社と続く。
これらに入らない別格が天照大神を祀る伊勢神宮。天照大神の家来筋の神を祀るものとして、三島神社、鹿島神社、香取神社、春日神社などがある。そのほか、外国から来た神様には、大黒天と七福神、弁財天と厳島神社、七福神、金比羅神社。動物を祀るものには、狐の神様、蛇の神様、犬の神様など。自然の神様は、富士山信仰から、各地の名山は全て山岳信仰の対象になっている。さらに華厳の滝や、各地の大樹にはしめ飾りが巻かれ、御神木として祀られている。 こうして日本人は、聖徳太子以来の神仏習合と相まって、あらゆるものが信仰の対象になっているのである。これらの神について、簡明かつ歴史的に裏打ちされた解説が分かりやすいのが本著である。文庫本だから、ポケットに簡単に忍ばせることができる。ボクは何冊も本著を買っている。どこかに置き忘れてきたり、どうしても欲しいというお年寄りに上げてしまったりしているからだ。 著者の武光誠は東京大学人文系大学院国史学科卒。専攻は日本史。歴史哲学と比較文化的視点の著作活動が得意。本著以外に「知っておきたい日本のしきたり」ほか多数。 角川文庫、476円(税別)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿