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リクルート創業者江副浩正は「広告を情報化して有料で売るビジネス」を、日本で初めて始めた。

2013-02-10 10:59:06 | 論壇
 リクルートの創業者江副浩正さんが2月8日肺炎のため亡くなった。76歳では早世である。筆者は経済誌勤務時代に大変お世話になった。 江副さんが創業したリクルートは、創業時は(株)大学広告。これは、新橋の第2森ビルの屋上屋に作られた事務所でスタート。その後、社名を日本リクルートセンターとして、東京駅八重洲口大通りに事務所を構えた。その時から、ボクは取材をしている。 その後快進撃を続けて、西新橋と虎ノ門の間に、初めての自社ビルを造った。その頃、僕の勤めていた会社も虎ノ門だったため、覚えきれないぐらいリクルートマン&ウーマンとお付き合いした。いま、独立してキャリアデザインを創業した多田弘美さんも、この当時からのお付き合い。もう時効だからいいますが、ボクが、多田さんをミサワホームの三澤千代治会長に紹介して、三沢さんの資本でキャリアデザインを創業させたのである。江副さんが目に入れても痛くなかった藤原和博さんも、杉並区立和田中学校長になったときは、校長室で取材させてもらった。 なぜ、そうなるかというと、ボクは色々な仕事をする中で、経営者の団体をいくつか創るお手伝いをしている。最初は 東急エージェンシーの前野徹社長とニュービジネス協議会を、企画段階からお手伝いした。毎日、赤坂の東急エージェンシーに通っていた。初代理事長を立教大学経済学部教授の野田一夫さんでスタートした。野田さんは80歳を超えた現在も(財)日本総合研究所会長である。この人脈で、次にアジア経済人懇話会を旗揚げした。初代会長はアサヒビール会長の樋口廣太郎さんに就任してもらい、ボクが初代理事事務局長になった。 まだある。今度は東急グループの総帥五嶋昇会長を担ぎ出し、SUNクラブを創設、この初代事務局長もボクが務めた。このクラブは凄かった。すべて一部上場企業の業界トップ企業の会長だけが有資格者。それも100社限定。毎月の例会の会場は五嶋さんから、キャピトル東急の指名があった。またしてもボクが、初代事務局長を任じられた。 この時にリクルート会長の江副さんが、このメンバーに入会してきたのである。その後、ニューヨークの事務所やリクルートコンピューターシステムなどを、江副さんから直々に案内してもらった。江副さんはすごい人だった。生まれながらの情報ビジネスの申し子だった。
すべての出発点は(財)東京大学新聞社だった。ここで大学新聞へ出稿する企業広告の営業を覚えた。東大新聞の編集に関わっていたら、リクルートは誕生しなかった。最初の(株)大学広告では、東大新聞を含むすべての大学新聞、一部高校新聞までの新卒向けの「企業広告」から出発した。それをまとめて「企業への招待」と冊子型にしたのが、のちの日本リクルートセンターのリクルートブックの原型だった。 企業は従来一社ずつ募集案内を出していたのであるが、まとめて出すことによって、イメージアップとコストダウンを図りたかった。学生の方は一社一社回って集める手間が省けるばかりか、就職情報をまとめてみることによって、新卒採用情報を比較検討できるメリットが大きかった。 これがベースになって、新卒ばかりか、中途採用、女性専門の「とらばーゆ」へと発展していく。これらはいわゆる「採用情報」の分野だった。採用情報以上の金脈は住宅情報だった。昭和40年代は団塊の世代の社会進出が始まっていた。ここに狙いを定め住宅情報誌が出版された。当初業界では、「不動産情報のチラシ雑誌」と、タカをくくっていたが爆発的需要を生んだ。ここでの工夫は不動産のチラシを情報ブックに高めることだった。情報誌の巻頭には、変貌する首都圏の住宅環境とか、家を選ぶ間違いのない10の方法、戸建とマンションのメリットデメリットなどのアカデミックな情報を掲載した。あとは、いわゆる住宅情報のチラシを綴じたようなものだったが、これを情報化する工夫を丹念に進捗していった。鉄道路線別情報、価格帯別情報、独身・家族別住宅情報 、間取り別情報、周辺ライフマップ付き生活情報などを網羅した。一社だけの情報でなく、各社のチラシ情報を細分・再アレンジすることによって、チラシ広告を住宅を求める需要者に「便利な情報」に変身させたのである。この変身情報こそが、リクルートビジネスの真骨頂だった。あとは、住宅情報の他産業版でよかった。海外旅行情報誌「Abロード」、再就職雑誌「Being」、中古車情報誌「カーセンサー」などなど、どんな分野も、原点はチラシ情報のブック化であった。 すごいのは、営業のゲーム化、スポーツ化だった。営業を陰湿な駆け引き行為にすのではなく、明快なセールスマシーン化した。情報誌別、エリア別などに分けて、営業行為をゲーム、スポーツするように、リーグ戦化したのである。目標を達成したセクションには、部署別、個人別に報奨金が提供された。達成した部署では、爆竹が鳴り響き、雄叫び、雌叫びが上がった。 ニューヨーク・マンハッタンの沖合に、島とは呼べない小さな岩礁がある。ここは無人島だが通信基地になっており、無数の通信衛星を結ぶパラボラアンテナが林立する様は、異様な雰囲気を醸し、現代のビジネス最前線基地の象徴にもなっていた。ここに江副さんは自前の通信タワーを持ったはずである。将来、日米間でビジネス情報のヒト・モノ・カネに関わる情報誌を出す構想を持っていた。何度も、その構想を熱く語った。 構想を持っていたことを知っていても、その後の展開を知らないのは、リクルート事件が起きたからである。全国紙を中心にこの事件は、執拗に波状攻撃された。 それは、まるでメディア抜きの各種広告情報誌を作られた江副ビジネススタイルへの意趣返しの様相を見せた。メディアはこぞってリクルート商法を真似たが、いずれも敗退した。それは「江副一人でできたことが、新聞社にできないはずがない」という、おごりと武家の商法だったからだ。江副さんは他社の追随を許さないために、大きな儲けを、リクルートコンピュータシステムにつぎ込んでいたのである。あの大型コンピューターと、インターネットがない時代から、本社・支社・クライアント・制作編集室を結ぶFAX自動送信システムでの原稿作成過程を見せられれば、メデイアのそれは情報先輩会社とは思えない、人海・手作業工程だった。情報を扱う速さと正確さでも、新聞社はリクールトに負けたのである。 惜しい。あんな事件を起こさねば、世界のリクルートに上り詰めていたはずである。しかし、江副が育てたリクルートマンは、あらゆる分野で活躍している。(合掌)


書評「知っておきたい日本の神様」武満誠 著

2013-02-04 10:54:41 | 書評
武光誠 著 「知っておきたい日本の神様」
八百万の神を信じる日本人は、一度はこの本を読む価値がある。ぼくは神道、仏教、ユダヤ教、キリスト教、ヒンドゥ教の宗教ごとの本を読んだが、それは一般常識として武装するためだった。内外のちゃんとした人に「無神論者です」といったら、それだけで軽く見られる。 宗教の信じ方はいろいろあるが、ひと言で言えば「己の力だけで生きている」という傲慢さを戒める神の存在と、民族ごとの価値観を統一するという意味で、キリスト教の世界布教戦略があった。16世紀には、フランシスコ・ザビエルが日本に布教に来ている。しかし、ユダヤ教のユダヤ選民主義(神に選ばれた唯一の民族の意味)を戒めるために発生したキリスト教が、同じユダヤ教から派生したイスラム教と血みどろな戦いをしているのは、皮肉な結果になっている。誰も見たこともないヤーベ(エホバ)の存在を、いろいろな形で伝え、解釈する一神教の世界。欧米と中近東&中南米、ロシアなど、地球の大半をカバーしている。  インドのヒンドゥー教から誕生した仏教は、一神教ではなく人間自身が修行によって、菩薩 を経て大日如来等の最高位の仏(ほとけ)に到達する。厳しい修行を収めた者は、死と同時に成仏できると言われる。これを即身成仏といい、即身成仏した空海は弘法大師という称号を朝廷から与えられた。インドで生まれた仏と菩薩は、日本では神となって現れることを権化といい、現れたものが権現である。
日本独自の神道の最高神は、女神の天照大神であるが、これは仏教で言えば大日如来に相当するが、日本への仏教の伝来は538年(=552年説もある)であるから、天長節の方がはるかに先になっているため、大日如来の化身が天照大神などとは言えない。 そんなことよりも、この本の面白さは、自分が住んでいる近所に必ずある神様の由来を、やさしく解説してくれていることろである。取っ付き易くもあり、便利でもある。全国で最も多い神社は稲荷社である。19800社ある。続いて八幡社(14800)、天神社(10300社)、諏訪神社(5700社)、神明社(5400社)、熊野神社(3300社)、春日神社(3100社)、以下、八坂神社、白山神社、住吉神社、日吉(=山王)神社、金比羅神社、恵比寿神社と続く。
これらに入らない別格が天照大神を祀る伊勢神宮。天照大神の家来筋の神を祀るものとして、三島神社、鹿島神社、香取神社、春日神社などがある。そのほか、外国から来た神様には、大黒天と七福神、弁財天と厳島神社、七福神、金比羅神社。動物を祀るものには、狐の神様、蛇の神様、犬の神様など。自然の神様は、富士山信仰から、各地の名山は全て山岳信仰の対象になっている。さらに華厳の滝や、各地の大樹にはしめ飾りが巻かれ、御神木として祀られている。 こうして日本人は、聖徳太子以来の神仏習合と相まって、あらゆるものが信仰の対象になっているのである。これらの神について、簡明かつ歴史的に裏打ちされた解説が分かりやすいのが本著である。文庫本だから、ポケットに簡単に忍ばせることができる。ボクは何冊も本著を買っている。どこかに置き忘れてきたり、どうしても欲しいというお年寄りに上げてしまったりしているからだ。 著者の武光誠は東京大学人文系大学院国史学科卒。専攻は日本史。歴史哲学と比較文化的視点の著作活動が得意。本著以外に「知っておきたい日本のしきたり」ほか多数。 角川文庫、476円(税別)