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「拉致と決断」を読んで、日本の平和ボケぶりがわかった。

2012-10-25 23:41:13 | 論壇
 蓮池薫「拉致と決断」(新潮社刊、1300円、プラス税)
 「拉致と決断」を読んだ。 帰国から10年目の節目の今年、拉致被害者のひとりとして、出版する気持ちになった経緯から書いている。1978年中央大学法学部在学中に、北朝鮮に拉致されて、24年間もの間北朝鮮に抑留されたままになった。 
 本著は、このとんでもない北朝鮮という国に囚われの身となりながら、北朝鮮という国を内側から見たレポートであり、著者自身の心の葛藤を描いた自叙伝でもある。中央大学の看板学部で弁護士を目指していた著書は、独学で1年で辞書を引きながら 、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を読めるようになり、日常会話もできるようになった。 朝鮮語のマスターは、著者の身を助けた。当局からの命令は語学を生かした「日本情報」の収集だった。とはいっても、情報源は日本の新聞から、日本の政治、経済、軍事情報の記事の翻訳だった。
 当時、ブッシュ(親爺)大統領は「イラク、シリア、北朝鮮は悪の枢軸」と言い、湾岸戦争を仕掛けた。それだけに北朝鮮は、アメリカの出方に神経質になっていたばかりか、内実は恐れをなしていた。アメリカの動向を、日米関係の記事から 取るために、蓮池さんは新聞翻訳者になったのだった。日本の新聞は、数日遅れながら当局から渡されていた。後で分かったことであるが、在日朝鮮人は祖国北朝鮮には自由に出入りできる特権階級であった。日本で稼いだカネを金王朝にせっせと貢いでいたのである。その上で、日本政府からは、日本国籍を取らないまま、子ども手当も、高校授業料無料化も、選挙権も勝ち取れと本国から命令されれば、その手先になって動く社民党や民主党など、お人好しのバカみたいな政党が日本には存在する。朝日新聞などは、それを後押しする記事を書いてきた。(※こんなことは本著には書いていない)
 そんなある日、蓮池さんは、日本の新聞から両親の写真を発見する。 それは拉致から20年目の新聞だった。父は高校卒業アルバムから引き伸ばした写真を握り締めていた。拉致被害者家族会結成時のものだった。父はテーブルの椅子に座り、母は父の後ろに立っていた。この写真を発見した瞬間、みぞおち辺りがギュッと締め付けられ、酸っぱい胃液がこみ上げてきたという。20年ぶりに見る両親は、母はそれほど変わっていなかったが、父は額の髪の毛が相当後退して、自分のことで心労を患っていることが,容易に理解できたと書いている。 それでも、労働新聞は金正日には必ず、偉大な金正日、尊敬する金正日、輝かしい我らの金正日という形容詞をつけて、国民をあまねく欺き続ける。’90年代後半には相次ぐ冷害と台風の被害で、未曾有の食糧不足に陥り、多くの国民が餓死していった。それでも、偉大なる金正日、尊敬する金正日と書き続ける新聞にいや気がしても、仕事柄目を通さないわけにはいかなかった。 岩手沖太平洋に着水したミサイル発射事件は、北朝鮮では人工衛星の打ち上げ成功に自画自賛して、夜空を勇ましく飛行する我が国の人工衛星を、みんなで見るように通達が出たという。蓮池さんは、見ないと当局に密告されるので、庭にゴザを敷き毛布を持って出たが、見ることができない人工衛星を待ちきれず、庭で眠ってしまった。
 こんな国は存在するだけで、多くの国民に苦難の人生を歩ませている犯罪国家である。蓮池さんの「拉致と決断」の「決断」は、子供を人質に取られたまま帰国した蓮池さん夫婦が、日本政府の説得に従い、2週間の帰国期間を指定した北朝鮮に戻らない決死の「決断」である。蓮池さんの「決断」に、妻の祐木子さんは絶叫して半狂乱になったという。日本より子供を取るというのである。理屈を超えた母なる偉大さが伝わり胸を締め付けれる。それを男の理屈で説得し続けて、夫婦で日本に踏みとどまることを日本政府に電話するところが、この本のクライマックス。蓮池さんは、柏崎海岸でデート中に一緒に拉致された奥土祐木子さんと、拉致2年目に結婚できたのが、不幸中の唯一の幸いだった。一男一女の子供に恵まれ 、ふたりの子供たちは、全寮制の高校と中学生に通っている時に、人質に取られた。本著によれば、北朝鮮では、外国に赴任するすべての外交官、政府高官は、妻子を本国に人質にとって赴任させているという。亡命を防ぐためである。
 地上の楽園、極東の桃源郷、偉大なる将軍様の国も、一皮剥けばヤクザ国家そのものであり、ブッシュ元大統領ならずとも、これを悪魔の枢軸国の魔王と呼ばずして、なんと呼べるか。この本を読めば、日本は平和で、自由を満喫でき、民主党歴代首相 鳩山、菅、野田を「悪魔のトリオ」と大声を出そうが、逮捕、強制的矯正重労働もない天国のような国だ。その反面、民主主義の良いところだけをつまみ食いして、国防などの義務にはそっぽを向く要領の良い人間ばかりが、指導者、高学歴クラスに目立つ。既にその日本が綻びかけて20年ぐらい経過しているが、一向に「平和憲法」至上主義から脱し切れない。 
 本著を読んで、日本の素晴らしさの行く先を、大いに案じることになった。 


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