おそろい

　一緒に帰ってます。






「ねえ亜美ちゃん、たまにはゲーセン寄って行かない？セーラーＶゲームの新しいステージ入ったんだって」
「それはいいけど、美奈、その前にちょっと文房具屋に寄っていいかしら。そっちのほうが近いし、すぐ済むから」
「あれ、本屋じゃなくて文具屋？一昨日も行かなかったっけ？買い漏らしあったの？」
「シャーペンの芯が切れそうで・・・買わなきゃ」
「一昨日、シャーペンの芯、ダースで買ってなかったっけ？」
「だから、切れそうで」
「・・・はいはい。文具屋行きましょ。さすが消費早いのねえ」
「ボールペンのほうが持ちはいいのかもしれないけど、やっぱり書き損じをするとノートが汚くなるし・・・」
「でも亜美ちゃんって消しゴムはあんまり使わないわよね。シャーペンの芯はあっという間なのに、消しゴムは全然買ってるの見たことないし、筆箱見ても全然減ってないもん」
「そんなことは・・・でも、あんまり消しゴムのことは意識したことなかったわ」
「やっぱり、滅多に間違わないから使うことないのねぇ」
「・・・・・・・・・」
「・・・れ、亜美ちゃん、どうしたの」
「・・・いえ、私の消しゴムの減り具合とか、よく見てるのね、と思って・・・私自身は全く意識してなかったことだけに、そんな大したことじゃなくても、美奈に意識されていると・・・なんだか気恥ずかしいわね」
「そりゃ、亜美ちゃんのことだもの」
「・・・・・・もう」
「実は、あたし、こっそり亜美ちゃんと同じ文房具とかそろえたりしてるのよ」
「えっ、そうなの？」
「亜美ちゃんてばシャーペンはいかにも実用ですって感じのだし、インクペンはすぐに空にしちゃって、あんまりメーカーにもこだわってないからついて行けないけど、定規とかはさみとかなら。そんな感じで亜美ちゃんの筆箱の中、お勉強会のときとかこっそり見てたの。はさみなんかあたしだっていつも持ち歩いてるわけじゃないから、いつも筆箱に入れてるやつで、亜美ちゃんとおそろいの時期が長いのは消しゴムかなーって。亜美ちゃんほどお勉強しないけど、消しゴムは、あたしはよく使うしね」
「美奈・・・」
「消しゴムくらいなら同じメーカーの使っててもそんなに不自然じゃないでしょ？事実、今の今まで気づかなかったみたいね」
「・・・ごめんなさい」
「いや、謝ってもらうようなことじゃないけど・・・あたしが勝手にやったことだし。単におそろいでうれしいなーって思ってただけ」
「・・・あの、もしよかったら」
「え？」
「今からせっかく文房具屋に行くんだったら・・・なにかおそろいのもの、買う？」
「えっ、いいの！？」
「美奈がそんな風に思ってるなんて私知らなかったから・・・それに、消しゴムだと、減ってしまうし。あなたさえ、いやじゃなければ」
「あみちゃん・・・うれしい・・・」
「それくらいなら・・・普通に言ってくれたら・・・私は至らないことが多いし、あなたみたいになんでもよく見てるわけじゃないし、できないことも多いけど・・・」
「いや、遠慮してたわけじゃないのよ？ただ、あんまり露骨なことしたら亜美ちゃん恥ずかしがるかなーって。それに、筆箱の中があんまり揃ってたら、お勉強会できっとほかのみんなも気づくだろうし・・・」
「それは・・・確かに、ちょっと照れくさいわね。あなたがさっき言った通り、消しゴムくらいなら気にならなかったけど・・・」
「でも、亜美ちゃんとおそろいのものが持てるのはうれしいわ。いままではこっそりやってたけど、亜美ちゃんがいいなら、別に文房具にこだわらなくても」
「それもそうね、無理に文房具にしなくても・・・でも、恥ずかしいからほかの人からあまり目立たないものがいいわね」
「そうよねえ、となるとアクセとかもできないしねえ。こっそりふたりだけのおそろいで、あたしと亜美ちゃんだけが知ってて、あたしと亜美ちゃんだけが大切にしてるものってなるとなると・・・」












「・・・まこちゃん・・・最近亜美ちゃんが口きいてくれない・・・」
「なにしたんだよ美奈」
「あたしはなにもしてないわよ・・・ただ、他の人にばれなくて、こっそりおそろいのもの持ちたいって・・・亜美ちゃんとあたしだけが大事部できるものって・・・思って・・・」
「思って？」
「考えに考えて・・・おそろいの・・・貞操帯なら・・・あたしと亜美ちゃんだけしか知らないで済むし、亜美ちゃんだってあたしのこと大事にしてくれてるし、あたしがいかに亜美ちゃんが大事か伝わるって・・・思ったのに・・・」
「つっこみどころはいろいろあるけど、おそろいにするものじゃないし、ものに頼ってるうちは駄目なんじゃないかなあ・・・」








　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


　１０代女子特有のおそろいのもの持ちたいあれそれいいですよね。