つづき
『急にどうしたの?』
あてもなくバイパスを走りながらテツさんはちらりとこちらを向いて言った。
「俺だって幸せになりたいんだよ」
左手をアタシの腰に添え、ぐいと引き寄せる。
自然と頬がくっついた。
『そうなんだ・・・』
そうとしか言えなかった。
アタシが以前、テツさんの車を売るようにお願いしたのは、いつだっただろうか・・・
禁煙して欲しくて禁煙の本を買ってからもう1年が過ぎた。
だから車は、もっと経っているはず。
しかし、どうして、このタイミングでなんだろう。
どちらにしろ、嬉しかった。
テツさんは、本当にアタシのことを考えている。
これがテレビやネットでよく見る、ただの不倫に終わらせたくなかった。
「俺ね、最近ずっと考えてたんだ。俺とまいとのこと。俺はね、今まで毎日パチンコやったり、そこらじゅうフラついたりしてた。でも今はしてない。なんでかって、それは、まいといる、この時間を大切にしたいからなんだよ。だからもうパチスロやってないでしょ。まいと一緒にいたいんだよ」
そういう言われると、じんとくる。単純なのかな。
左手には同じデザインの住宅が群れをなしている。
暖かな光。ぼんやりと写るカーテン。
その一つ一つに、家庭があるんだろうな。
アタシも、テツさんと暮らしたい。
でもそれは叶わない。
せめて、この彷徨う日を少しでもなくしたい。
それからのアタシは、ホームセンターや家具屋を回り、自分のアパートを少しでもましにするべく動き出した。
本当に寝に帰るだけだったアパート。
ここをテツさんと過ごせる場所にしたい。
自分さえ生活できればよかっただらしのない生活にピリオドを打たなければ。
ギャンブルのやりすぎで預金残高は25万。
かなり切実だった。
アタシはそこから10万をおろし、食器棚、レンジ台、テレビボード、羽毛布団、ラグを買った。
何をしているんだろう。
時折思う。
結婚するわけでも、同棲を始めるわけでもないのに。
食器とか、おそろいで買っちゃおうかな・・・
布団は、ダブルにしようかな、それじゃベッドもダブルにしなきゃな・・・
なんて勝手な妄想をしてしまう。
だけど、実際にベッドコーナーに行きダブルを見ると、
あぁ・・・テツさんと奥さんはダブルで寝てたんだよな・・・と、二人がぼんやりと映って見えてしまい、吐き気がしてしまった。
なるべくベッドは見ないよう、足早に売り場をさった。
根性なし。
いろんな物を買うと、処分しなければならないものもたくさん出てきた。
それこそ買い換えるまで使っていたスチール製のラック、食器棚、一時期はまったキーボードなど、不要品は溜まる一方。
3部屋あるうち1部屋は使っていなかったので、そこに置くようにしたら大変大変。
いっきに不要品の山になってしまった。
アタシは今まで不要品は捨てていたけど、今回は初めてリサイクルショップに売ることにした。
CDや読まなくなった小説、およそ150点で4,000円に、キーボードとバッグは3点で2,000円弱になった。
たいした額ではないけど、すごく嬉しかった。
だって要らない物を処分してお金がもらえるんだよ?
パラダイスじゃん!!
こうして考えると今まで捨ててきたブランドの服とかもったいない。
幸いまだいらない服は何着かあるから売りに行こう。
ワクワクしちゃうね。
そして、一通り部屋を綺麗にしたら、テツさんを招き入れるんだ。
そんな日々が続いた。
もちろん、相変わらず二人は毎晩車で彷徨っている。
『ねぇテツさん、もしテツさんがアタシの部屋に入ったら、二人で何する?』
「そうだなぁ、俺は、まいと料理がしたい!まいがお酒とかを用意している間に、おれが簡単なおつまみを作るの。いいなぁ!やりてーなぁ!」
嬉しそうに話すテツさん。アタシも想像して綻んだ。
でも、すぐにテツさんと奥さんが二人で同じ事をやっている妄想をしてしまい、暗くなっちゃった。
昔盗み見た、テツさんの会社のメール。
"なるべく早く帰るよ。帰ったら一緒に作ろうね"
そうだよね。当たり前だよね。夫婦なんだもん。
もう8年くらい前のメールなのに、胸が苦しくなる。
「どうしたの、まい?」
またしてもテツさんがハンドルを握りながら顔を向けてきた。
『ううん、なんでもないよ・・・』
元気ないなぁ、テツさんが心配そうに見つめる。
テツさんはなんでもお見通しだ。
ただ、どうしてアタシが暗くなったかまでは分からない。
テツさん、アタシ、早くアパート綺麗にするからね!
『急にどうしたの?』
あてもなくバイパスを走りながらテツさんはちらりとこちらを向いて言った。
「俺だって幸せになりたいんだよ」
左手をアタシの腰に添え、ぐいと引き寄せる。
自然と頬がくっついた。
『そうなんだ・・・』
そうとしか言えなかった。
アタシが以前、テツさんの車を売るようにお願いしたのは、いつだっただろうか・・・
禁煙して欲しくて禁煙の本を買ってからもう1年が過ぎた。
だから車は、もっと経っているはず。
しかし、どうして、このタイミングでなんだろう。
どちらにしろ、嬉しかった。
テツさんは、本当にアタシのことを考えている。
これがテレビやネットでよく見る、ただの不倫に終わらせたくなかった。
「俺ね、最近ずっと考えてたんだ。俺とまいとのこと。俺はね、今まで毎日パチンコやったり、そこらじゅうフラついたりしてた。でも今はしてない。なんでかって、それは、まいといる、この時間を大切にしたいからなんだよ。だからもうパチスロやってないでしょ。まいと一緒にいたいんだよ」
そういう言われると、じんとくる。単純なのかな。
左手には同じデザインの住宅が群れをなしている。
暖かな光。ぼんやりと写るカーテン。
その一つ一つに、家庭があるんだろうな。
アタシも、テツさんと暮らしたい。
でもそれは叶わない。
せめて、この彷徨う日を少しでもなくしたい。
それからのアタシは、ホームセンターや家具屋を回り、自分のアパートを少しでもましにするべく動き出した。
本当に寝に帰るだけだったアパート。
ここをテツさんと過ごせる場所にしたい。
自分さえ生活できればよかっただらしのない生活にピリオドを打たなければ。
ギャンブルのやりすぎで預金残高は25万。
かなり切実だった。
アタシはそこから10万をおろし、食器棚、レンジ台、テレビボード、羽毛布団、ラグを買った。
何をしているんだろう。
時折思う。
結婚するわけでも、同棲を始めるわけでもないのに。
食器とか、おそろいで買っちゃおうかな・・・
布団は、ダブルにしようかな、それじゃベッドもダブルにしなきゃな・・・
なんて勝手な妄想をしてしまう。
だけど、実際にベッドコーナーに行きダブルを見ると、
あぁ・・・テツさんと奥さんはダブルで寝てたんだよな・・・と、二人がぼんやりと映って見えてしまい、吐き気がしてしまった。
なるべくベッドは見ないよう、足早に売り場をさった。
根性なし。
いろんな物を買うと、処分しなければならないものもたくさん出てきた。
それこそ買い換えるまで使っていたスチール製のラック、食器棚、一時期はまったキーボードなど、不要品は溜まる一方。
3部屋あるうち1部屋は使っていなかったので、そこに置くようにしたら大変大変。
いっきに不要品の山になってしまった。
アタシは今まで不要品は捨てていたけど、今回は初めてリサイクルショップに売ることにした。
CDや読まなくなった小説、およそ150点で4,000円に、キーボードとバッグは3点で2,000円弱になった。
たいした額ではないけど、すごく嬉しかった。
だって要らない物を処分してお金がもらえるんだよ?
パラダイスじゃん!!
こうして考えると今まで捨ててきたブランドの服とかもったいない。
幸いまだいらない服は何着かあるから売りに行こう。
ワクワクしちゃうね。
そして、一通り部屋を綺麗にしたら、テツさんを招き入れるんだ。
そんな日々が続いた。
もちろん、相変わらず二人は毎晩車で彷徨っている。
『ねぇテツさん、もしテツさんがアタシの部屋に入ったら、二人で何する?』
「そうだなぁ、俺は、まいと料理がしたい!まいがお酒とかを用意している間に、おれが簡単なおつまみを作るの。いいなぁ!やりてーなぁ!」
嬉しそうに話すテツさん。アタシも想像して綻んだ。
でも、すぐにテツさんと奥さんが二人で同じ事をやっている妄想をしてしまい、暗くなっちゃった。
昔盗み見た、テツさんの会社のメール。
"なるべく早く帰るよ。帰ったら一緒に作ろうね"
そうだよね。当たり前だよね。夫婦なんだもん。
もう8年くらい前のメールなのに、胸が苦しくなる。
「どうしたの、まい?」
またしてもテツさんがハンドルを握りながら顔を向けてきた。
『ううん、なんでもないよ・・・』
元気ないなぁ、テツさんが心配そうに見つめる。
テツさんはなんでもお見通しだ。
ただ、どうしてアタシが暗くなったかまでは分からない。
テツさん、アタシ、早くアパート綺麗にするからね!
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