NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#414 BUDDY GUY & JUNIOR WELLS「ALONE & ACOUSTIC」(Alligator ALCD 4802)

2023-01-05 05:00:00 | Weblog
2023年1月5日(木)


#414 BUDDY GUY & JUNIOR WELLS「ALONE & ACOUSTIC」(Alligator ALCD 4802)

米国のブルースシンガー、バディ・ガイとジュニア・ウェルズのデュオのスタジオ・アルバム。91年リリース。ディディエ・トリカールによるプロデュース。パリ録音。

ガイとウェルズのコンビがスタートしたのは65年。97年にウェルズが亡くなるまで続いたので、実に30年以上にわたっての付き合いとなった。

そんなふたりが91年にヨーロッパ・ツアーに出た際に、フランス人プロデューサー、トリカールのもと、パリでレコーディングされたのがこのアルバムである。

「Give Me My Coat and Shoes」はガイの作品。12弦ギターで歌われるのは、「フーチー・クーチー・マン」スタイルのブルース・ナンバー。これにウェルズがハーブで絶妙な合いの手を入れる。

ガイの歌声は、いつものハイ・テンションなそれとは違ってとても落ち着いている。これが実に新鮮だ。

「Big Boat (Buddy And Junior’s Thing)」はウェルズの作品。ガイは6弦ギターでバッキング、「ロック・ミー・ベイビー」のリズムを刻む。

ウェルズは力強い歌いぶりで、聴き手の心を揺さぶってくれる。

「Sweet Black Girl」は再び12弦ギターでガイが自作ブルースを歌う。今回は彼のみの、完全な弾き語り。

しみじみとした歌い方がグッと来る一曲。

「Diggin’ My Potatoes」はデルタ・ブルースマン、ウォッシュボード・サムの歌で知られる、サニー・ジョーの作品。

ここではウェルズがボーカル、ハープのソロも取る。いかにもデルタ・ブルースらしい、泥臭い味わいのナンバー。

「Don’t Leave Me」はガイの作品。ブルースを6弦ギターで独演。ロバート・ジョンソンの諸作品に似た曲調だ。

たったひとり、ギター一本でもビートは強烈に感じられる。これぞ、リアル・ブルースマン!

「Rollin’ And Tumblin’」はトラディショナル。マディ・ウォーターズのバージョンが一番有名だ。

ウェルズが歌い、吹き、ガイが弾く。ブルースの原初的スタイルが、ここにある。

「I’m In The Mood」はジョン・リー・フッカーの作品。ガイの弾き語り。

大先輩フッカーのナンバーを、自分のスタイルで弾き、歌う。パワーに満ちた一曲。

「High Heel Sneakers」はブルースシンガー、トミー・タッカーの作品で64年のヒット。エルヴィス・プレスリーやホセ・フェリシアーノのような白人シンガーにもカバーされている。

この曲ではツー・ビートのリフに乗せてウェルズ、ガイ、ともに歌う。お互いを鼓舞するような雰囲気が伝わって来る。

「Wrong Doing Woman」は、ウェルズの作品。「フー・ドゥー・マン・ブルース」を思わせるブルース・ナンバー。

ウェルズの得意とする、おどろおどろしい持ち味が本作中でも一番出ていて、マル。

彼には、底なし沼のようなブルースが一番似合う。個人的意見だけど。

「Cut You Loose」はメル・ロンドンの作品。ブルース・シンガー、リッキー・アレンが63年にヒットさせている。

軽快なビート。ウェルズのリードに、ガイがハモりをつける。実にいい感じだ。

「Sally Mae」は再びジョン・リー・フッカーの作品。スローテンポのブルース。

こちらも、ガイが歌い、ウェルズがハープで応える。

独り言のような歌、引きずるようなギターが、フッカーのそれを思い出させる。

「Catfish Blues」はトラディショナル。これもマディ・ウォーターズのバージョンが有名だな。

ウェルズがボーカル。後半のハープ・ソロも、深い味わいがある。

「My Home’s In The Delta」はそのマディのオリジナル曲。

ジミー・ロジャーズ・スタイルのギターに乗せて、ウェルズが哀感に満ちたブルースを聴かせる。

一軒家から周囲を見渡せば、一面の綿畑。そんな風景を、心に呼び覚ます一曲。

「Boogie Chillen」は三たびのフッカー・ナンバー。もちろん、歌とギターはガイ。

よほど、ガイはフッカーがお気に入りなのだろうか。

ギターは、フッカーのユニーク極まりないスタイルをほぼそのまま再現していて、本気の度合いを感じさせる。

ラストは「Baby What You Want Me To Do」「That’s Allright」のメドレー。

前者はジミー・リード、後者はジミー・ロジャーズの作品。ふたりのアカペラ・コーラスで始まり、交互にリードを取る。

ともにシカゴ・ブルースの代表的ナンバー、しかしテンポもニュアンスも異なる2曲を、巧みにシームレスに繋げたワザはなかなか見事だ。

いずれも、他のミュージシャンを一切使わず、ガイとウェルズ、ふたりだけで作り上げている。

このテクノロジー全盛の時代に、ノー・ダビングの一発録り、エコーなどの音響技術を使わず、生の演奏がそのまま収められた一枚。

アナクロといえば、アナクロだ。

それでも本盤は他のアルバム以上に好評をとり、10万枚以上が売れたという。

結局大切なのは、どれだけ凝った仕掛けをするか、どれだけ音を盛るかではなく、音楽そのものに「心」があるかどうかなのだ。

最もプリミティブな音楽こそが、最も聴き手のハートを揺さぶるものなのだ。

そのことを、ガイ&ウェルズはこのアルバムで鮮やかに証明してみせている。

<独断評価>★★★★

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