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音曲日誌「一日一曲」#262 ザ・ミーターズ「Come Together」(The Meters Jam/Rounder)

2023-12-19 06:02:00 | Weblog
2013年4月7日(日)

#262 ザ・ミーターズ「Come Together」(The Meters Jam/Rounder)





アメリカのR&Bバンド、ザ・ミーターズ、92年リリースのコンピレーション・アルバムより。レノン=マッカートニーの作品。

ミーターズは自分たちのオリジナルだけでなく、白人黒人を問わずさまざまなジャンルのアーティストのカバーをやっているが、これもその一例。

ビートルズの最終期を代表するヒットシングルであり、実質的なラストアルバム「アビイ・ロード」のトップに収められた曲でもある。

実際に作曲したのはジョン・レノンで、彼はこの曲を自作の中でも最も気に入っていると語っていた。カバーしたアーティストもエアロスミス、アイク&ティナ、プリンス、エルトン・ジョンなど多数にのぼる。

「Come Together」は他にもいろいろと、いわく因縁の多い曲で、チャック・ベリーの56年のヒット曲「You Can't Catch Me」とメロディライン、そして歌詞の一部がそっくりだということで、ベリーの楽曲の著作権をもつモリス・レヴィから訴えられたという逸話がある。

結局、レノンのアルバム「心の壁、愛の橋」「ロックンロール」にベリーの作品や、レヴィが権利を持つリー・ドーシーの曲を入れるということで裁判は解決する。

そんなに二曲は酷似しているのかと、今回、筆者は聴き比べをしてみたのだが、たしかにAメロと呼ばれる部分のメロディは、ほぼそのまま借用しているといっていい。だが、テンポはまるで違っていて、アップテンポの「You Can't Catch Me」に対し、「Come Together」はややスロー。サビも前者は明るいノリなのに、後者は暗めでブルーズィと、対照的。メロディこそ似ていても、雰囲気はまるで違うのである。

ま、歌詞まで拝借しちゃっているので、「クロ」と判定されるのは仕方ないんだけどね(笑)。

リスナーにとってはレノンのいろいろなカバーが聴けてありがたい、一番平和な解決策だったので結果オーライともいえますが。

さて、本題のミーターズ・バージョンについて、である。

「The Meters Jam」は未発表音源やアウトテイクを集めたタイプのアルバムだが、収録年があまりはっきりしていない曲が多い。68年録音とはっきり書かれた二曲以外は、70年代半ばにレコーディングされたとある。曲によってパーカッションが入ったり、入らなかったりなので、おそらくシリル・ネヴィルが参加した75年前後の録音だと思われる。

この「Come Together」は、4人編成での演奏。レオ・ノセンテリのヘヴィなギター・リフで始まり、他のメンバーの音がそれに重なるようにして始まる。アート・ネヴィルの粘っこい歌をフィーチャーした、ファンク色の極めて濃いサウンドだ。

ビートルズのオリジナルをまったく聴いたことがない人には(そういう人はまずいないだろうし、そういう人がミーターズだけは聴くというのも変だけど)、白人のロックバンドの作曲とは絶対思えないんじゃなかろうか。

そのくらい、この曲には、まっくろけな「黒さ」がある。

筆者自身も、みのもんたサンのラジオ番組のテーマで何十回、何百回となくこの曲を聴いていたわけだが、ビートルズ=ポップというイメージが一般的な中で、なんだかこの曲だけは違うよな、と思っていた。初期の彼らには、黒人のR&Bのカバーもけっこう多かったが、それでさえ、ビートルズ風に白人化、リファインされたものになっていたが、「Come Together」はオリジナルなのに、最もブラックな匂いがしたのである。

それはやはり、下敷きにしたチャック・ベリーの曲の中にある、ブラックネスから来ているものではないだろうか。

歌詞はかなり難解で、日本語に訳することは難しいといわれるし、いろんな意味でポップネスとは対極にあるナンバー。

だが、ビートルズというトップバンドの人気が、フツーだったらヒットしそうにないこの曲をナンバーワンヒットにまで押し上げた。スーパースターは何をやってもウケる、そういうことなんだろうね。

ミーターズは「Come Together」という「やや黒め」の素材を、さらに黒人ならではのコテコテのアレンジを加えて、極上ファンク・チューンに料理している。さすがの腕前だ。ことに終盤はオリジナルのようなリフレイン~フェイドアウトでなく、アカペラで締めくくったのが実にイカしている。

ミーターズ版「Come Together」、そのヘヴィでファンクなノリを堪能してほしい。


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