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NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音盤日誌「一日一枚」#317 クリエーション「RUNNING ON」(東芝EMI WTP-90178)

2022-09-27 05:38:00 | Weblog

2006年4月30日(日)



#317 クリエーション「RUNNING ON」(東芝EMI WTP-90178)

クリエーション、82年のアルバム。竹田和夫プロデュース。

クリエーションといえば、69年にポリドールよりアルバム「BLUES CREATION」でデビュー、84年の「RAINY NITE DREAMER」に至るまでの15年間、ブルース・クリエイション→クリエイション→(休止期)→クリエーションと三たび名前を変えながらも活躍してきた、日本のロックバンドのパイオニアである。前身はグループサウンズのひとつ、「ビッキーズ」。

最初の名前が示すように、スタート時はガチガチのブルース・ロック・バンドであったが、ハード・ロック、そしてポップ・ロックと、そのサウンドも歳月とともに変化してきた。

このアルバムは、その後期(80年~84年)、「クリエーション」としての6枚のアルバムのうちの4作目にあたる。

レコーディング・メンバーはリーダーの竹田和夫(g,vo)を筆頭に、アイ高野(vo,ds)、ヒロ小川(b)、安藤淳(kb)、高木貴司(ds)の五人。

前々作のアルバム「LONELY HEART」にも収録された、同題のシングルがバンド最大のヒットとなり、ポップな路線が定着した彼らの、多面的な音楽性を楽しむことが出来る一枚だ。

まずは、竹田がリードで歌うロックン・ロール「Excuse Me Friend」でスタート。「クリエイション」だった頃は、飯島義昭とのツイン・リード・ギターがウリのひとつだったが、この曲でもオールマンズ・ライクなツイン・リードが聴ける。たぶん、竹田自身の多重録音によるものだろう。

タイトル・チューン「RUNNING ON」は、フュージョン色の強い一曲。パーカッションを前面に押し出したリズムワークのみならず、ギターがいかにもそれっぽい。高野がメイン・ボーカルで、それに竹田がからむ。

ハイトーンのコーラスから始まる「Ticket To The Moon」は、軽快なテンポのポップ・チューン。昔の彼らのハード・ロック時代なんか、みじんも感じさせない「軽み」には、時代の変化を感じてしまうなぁ。

「タイトロープ」も、複数ボーカルをフィーチャーした、フュージョンなナンバー。ほぼ同時期に活動していたAB'Sなども、この手の曲をよくやってたなあと思い起す。

こういう洗練されたサウンドでも、泥臭いブル-スでも、同じようにソツなく弾いてしまうのが、ベテラン竹田らしい。

再び竹田がリードで歌う、ロックンロール・ナンバー、「Mama, Ain't Gonna Be Long」。明らかにオールマンズを意識したサウンドだな。ゲスト佐野行直(元スペース・サーカス、この後、クリエーションの正式メンバーとなる)のスライド・ギター、リード・ギターの掛け合いなど、いかにもいかにもだ。

最後に、竹田のブルースハープもちょこっと聴ける。彼のハープは結構年期が入っていて(デビュー以来)、ハープ専門のひとも顔負けの巧さだ。

B面トップは竹田リード、高野サポートのカントリー・フレーバーあふれるバラード「Walk Away」から。当時の流行最先端のファンク&フュ-ジョンな音より、むしろこういういなたいサウンドに、彼らならではのよさが表れている気がするのだが、いかがであろうか。

演奏が巧いだけなら、他にもいっぱい巧いバンドは存在する。ロック以外にもフュージョン系とか、テクのあるバンドはごろごろしている。でも、巧い演奏はあくまでも、魅力的な「歌」を聴かせるための土台であって、歌がダメなら元も子もない。

そういう意味では、後期クリエーションは、立派に歌で勝負出来るバンドだったと思う。

思うに、このバンドはずっと「歌」で苦労してきている。初代のリード・ボーカル布谷文夫はすぐ抜け、ついで入った大沢博美はいかにも力量不足だったし、さらに彼が脱退してからは、竹田が自ら歌わざるをえなくなる。

フェリックス・パッパラルディをリ-ド・シンガーとして迎えた時期もあるが、「クリエイション」時代は、おおむね竹田が歌うことになる。これは彼にとって、けっこう重荷だったようだ。

新生「クリエーション」としてスタートしてからは、「もっちん」ことアイ高野とのツイン・ボーカル体制となり、曲によってリードを交代、曲によってはハモりメインで行くなど、だいぶん余裕が出来てきた。やはり、竹田は本質的にはギターのひとで、ずっと歌いながら弾くのはそんなに得意ではないのだろう。

他のメンバーも、そこそこコーラスとか出来るメンツなので、新メンバーになったことで、その「基礎音楽体力」はだいぶん上がったといえる。

ようやく、ライブだけでなく、スタジオ録音の出来ばえで勝負できるようになったのだ。

続く「DOUBLE CROSS」は、高野リードのファンク系ナンバー。ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェルあたりを思い出させる曲調だ。高野の澄んだハイ・トーンの歌声が見事にマッチしている。

「WARP OUT 2052」は、他の曲とはまったく雰囲気の異なる、実験的なナンバー。コズミックでカオスなサウンドといいますか、スタジオであれやこれや試してみましたって感じ。ジェフ・ベックのおなじみのフレーズが飛び出したりする。ま、一種の息抜きですな。

ラストは正統派バラード「宇宙神」で締めくくり。竹田と高野が互角で渡りあうソウルフルなボーカルが、最大の聴きものだ。

こういうオーソドックスなビートだから、重たくブルージィなギター・ソロで来るかと思いきや、竹田の紡ぐのは、意外とフュージョンなフレーズと音色でした。

けっこうメロディアスでいい曲なので、長尺の大作に仕上げる手もありかなと思うのだが、約4分とあっさり終わってしまうあたり、そっけないというか、いかにもポップ的というか。

つまり過去のロックバンドにありがちだった「重厚長大」の傾向を脱却して、良曲をコンパクトにキャッチーにまとめるという方向へ転換したということなのだろう。

古いファンから見るといささか肩すかしっぽいが、この手法で「クリエーション」はリニューアル、そして若い新たなファンの獲得に成功したのだと思う。

これは竹田の音楽的才能によるところも大きいだろうが、新加入の高野の存在も、大いに貢献していること、間違いない。

ロックな竹田と、ポップな高野の邂逅が、CREATIONを再生(RE-CREATE)したのである。

GSの残党の多くが「昔の名前で出ています」的なことしか出来ないのに対して、カップス、クリエーションと、きちんと新しい世界を開拓していった「もっちん」の才能は、格別のものがあった。

アイ高野こと高野元成氏、2006年4月1日逝去。享年55才。

あまりに早いその死に、多くの音楽仲間たちは言葉を失った。

たしかに悲しい。僕らはもう二度と「おまえの、すべてぇ!!」と甲高く絶叫する彼を見ることは出来ない。

でもこうして音盤に針を落とせば、彼のハートフルな高い声に、いつだって接することが出来る。

それこそが、彼への一番の供養だと、筆者は信じて疑わないのである。

<独断評価>★★★☆



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