NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音曲日誌「一日一曲」#448 チェット・アトキンス・アンド・レス・ポール「Caravan」(RCA Victor)

2024-06-27 07:58:00 | Weblog
2024年6月27日(木)

#448 チェット・アトキンス・アンド・レス・ポール「Caravan」(RCA Victor)




チェット・アトキンス・アンド・レス・ポール、1976年リリースのアルバム「Chester And Lester」からの一曲。デューク・エリントン、アーヴィング・ミルズ、フアン・ディゾルの作品。チェット・アトキンスによるプロデュース。

いうまでもなく、米国のトップ・ギタリスト二人によるコラボレーション・デュオである。

それぞれについて簡単に紹介しておこう。チェット・アトキンス、本名チェスター・バートン・アトキンスは1924年6月テネシー州ラトレル生まれ。高校中退後、プロのギタリストとなり、46年、22歳で人気カントリー・シンガー、レッド・フォーリーのバンドに加入、ナッシュビルで活躍する。

49年、カーター・シスターズのバッキングで名を上げ、54年、シングル「Mister Sandman」で初ヒット。55年からはギター・メーカーのグレッチ社と組んでカントリー・ジェントルマンという名モデルを生み出した。

一方、レス・ポールことレスター・ウィリアム・ポルスファスは1915年6月ウィスコンシン州ウォキショー生まれ。10代前半でセミプロのギタリストとなり、高校を中退してミズーリ州セントルイスのラジオ局でプロのカントリーバンドに参加する。

1934年にシカゴに移住、昼はカントリー、夜はジャズを演奏する。37年にギタリストのジム・アトキンス(チェットの異母兄)らとトリオを結成、ニューヨークへ移る。ビング・クロスビー、アンドリュース・シスターズらのバッキングなどもつとめる。

40年代からエレクトリック・ギターの自作に注力し、52年にギブソン社からレス・ポール・モデルを出し、以降さまざまな改良を加えていくことになる。

ざっとこんなところだが、とにかく二人の共通点はギターという楽器をこよなく愛して、とりわけ新時代のアイコン、エレクトリック・ギターの改良のために労を惜しまなかったこと、そしてレコーディング技術にも重きを置いて、エコーや多重録音などの手法を発展させたことである。

キャリア的には、9歳年上のポールの方が大先輩で、アトキンスはその演奏スタイルにも影響を受けている。いわばポールは「頼れるアニキ」的な存在だったのだろうな。

さて、レス・ポールは1964年にデュオの相方であった妻、メアリー・フォードと離婚してデュオも終了、新しいロックの流行もあって、ポピュラー音楽シーンでの存在感がどんどん薄くなっていった。

半ば引退状態にあった彼に声をかけたのが、旧知の仲の後輩、アトキンスだった。時にポール59歳、アトキンス50歳。

彼らは久しぶりに一緒にスタジオ入りして、2日間のレコーディングを行った。そしてリリースされたのがこの「Chester And Lester」である。

演奏、録音された10数曲は、彼らの手に馴染んだナンバーばかり。大半が1930年代から50年代に流行した、ジャズ、カントリー、ポップスのヒット曲群である。

70年代半ばに、時代の流行とはまるで関係のないスタンダード・ナンバーを、あくまでも彼らのスタイルで演奏する。完全に、彼ら自身の「趣味120パーセント」の企画だったが、これがリスナーには逆に新鮮に映った。

本盤はカントリーチャートで11位を獲得しただけでなく、全米チャートでも172位と善戦した。78年には続編「Guitar Monsters」もリリースして再び話題となったこともあり、本盤も再度カントリーチャートで27位まで上昇している。

そして、アルバムの高い完成度が評価されて、1976年度のグラミー賞では最優秀カントリーインストゥルメンタルパフォーマンス賞を受賞している。

さて、本日の一曲「Caravan」は説明するまでもなくジャズ・スタンダード中のスタンダード、デューク・エリントンの代表的ナンバーだ。

オリジナル・バージョンは1936年にバーニー・ビガード&ジャズピアーズによりレコーディングされた。以来、作曲者のエリントン・バージョン(37年)をはじめ350以上のバージョンがあるという。もちろん、レス・ポール、チェット・アトキンスも、それぞれ50年代にレコーディングしている。

この76年バージョンのレコーディング・メンバーは、二人のほかにギターのレイ・イーデントン、ピアノのランディ・グッドラム、ベースのヘンリー・ストルゼレッキ、ドラムスのラリー・ロンディン。

本アルバムはオーバーダビングはほぼ使わず、一発録りのスタイルでレコーディングされたという。

お馴染みのエキゾチックなメロディを、それぞれのお得意のスタイルで、伸び伸びと弾きまくるポールとアトキンス。

長年弾き続けて来ただけあって、その余裕あるプレイはさすがのキャリアを感じさせるね。

このアルバムがきっかけで、彼らはテレビ出演などもするようになり、しばらく実質引退状態だったポールも、人前でのパフォーマンスを再開するようになる。

良き後輩のおかげで、ベテランの先輩も第一線にカムバック出来たというわけだ。その後、レス・ポールは2009年に94歳で亡くなるまでライブ活動を続ける。

もちつもたれつの、和気藹々としたムードを、二人の活気ある演奏に感じとってほしい。






この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音曲日誌「一日一曲」#447 ハ... | トップ | 音曲日誌「一日一曲」#449 サ... »
最新の画像もっと見る