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音曲日誌「一日一曲」#165 クリス・トーマス・キング「Wicked」(Why My Guitar Screams & Moans/21st Century Blues Records)

2023-09-13 05:46:00 | Weblog
2011年3月19日(土)

#165 クリス・トーマス・キング「Wicked」(Why My Guitar Screams & Moans/21st Century Blues Records)





シンガー/ギタリスト、クリス・トーマス・キングの2004年のアルバムより。彼自身の作品。

クリス・トーマス・キングは64年、ルイジアナ州バトン・ルージュ生まれの46才。86年にアーフリーよりデビューしているので、すでに四半世紀のキャリアがある。もはや立派な中堅である。

彼のやっている音楽は一応ブルースにカテゴライズされているものの、伝統的なスタイルに固執せず、ラップ、サンプリングなどヒップ・ホップの要素も取り込んでいるあたりが、いまどきのブルースマンなところである。

メイン楽器のギターはエレクトリック、アコースティックともに弾くうえに、他の楽器もひとわたりこなし、ドラム・プログラミング、スクラッチまでやってしまうという多芸ぶり。先週取り上げたトッド・ラングレンにもひけを取らない、マルチな才能の持ち主なんである。

とはいえ、彼の音を聴いてみれば、他のどのジャンルの音楽よりもブルースを愛する、根っからのブルースマンであることがよくわかる。きょうの一曲はまさにその一例。

愛器ギブソン・エクスプローラから紡ぎ出されるのは、ラウドで艶のあるナチュラル・ディストーション・サウンド。

ブギのリフなどのブルースの基本フォーマットはあくまで崩さず、でも彼が最も影響を受けたジミ・ヘンドリクスのように自由かつワイルドに弾きまくっている。そう、伝統をなつかしむのでない、現在進行形の音楽としてのブルースが、ここにはある。

現在ブルースは黒人のコミュニティにおいてはさほど人気のある音楽ではなく、絶滅危惧種の動物のように、その血筋を途絶えさせないよう、「保護」されているような状態である。おもに白人ミュージシャンたちによって。

しかし、黒人にだって、ブルースを愛し、歌い続けているアーティストは少数ながらいて、このクリス・トーマス・キングは、その中でも特にすぐれた才能を持った一人だと思う。

ギターばかりが注目されがちのキングだが、そのラフで辛口な味わいの歌にこそ、彼のブルースマンとしての本領はあると思う。

「ブルース愛」が溢れ出てくるような、ベタベタのスローブルース。21世紀になったって、ブルースの本質は変わらない。これでいいのだ!

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