2010年3月14日(日)
#114 ジミー・ウィザースプーン「Trouble in Mind」(Atlantic Blues/Atlantic)
#114 ジミー・ウィザースプーン「Trouble in Mind」(Atlantic Blues/Atlantic)
1940年代から90年代まで、息長く活躍したシンガー、ジミー・ウィザースプーンが歌う、ブルース・スタンダード。トラディショナルを元に作られた、リチャード・M・ジョーンズの作品。
ジミー・ウィザースプーンは、20年アーカンソー州ガードン生まれ。幼少時よりゴスペルに親しみ、10代なかばでカリフォルニアに移住。プロのシンガーとしての仕事を得て、当時の人気ビッグバンドのリーダーであるジェイ・マクシャンの目に止まり、ウォルター・ブラウンの後任として44年入団。
以来めきめきと名を上げ、49年にはソロシンガーとして独立。「エイント・ノーバディズ・ビジネス」「イン・ジ・イブニング」などを立て続けにヒットさせ、全国区的人気を得るようになった。
その後も活動の場所をジャズ界にまで広げ、77才でLAにて亡くなるまで、ブルース/ジャズ界の大御所として君臨した。まさに堂々たるキャリア。
ジミー・ウィザースプーンは、先輩格にあたるビッグ・ジョー・ターナーなどと同様、典型的なビッグ・ボイス・シャウターといえる。
その圧倒的な声量を生かした迫力ある歌唱は、40~50年代、すなわちラジオの全盛時代に最もフィットしたものであったといえよう。
きょうのナンバーは、元々はトラディショナルだったものを、リチャード・M・ジョーンズがまとめたもので、黒人・白人を問わず実にさまざまなジャンルの、さまざまなアーティストがカバーしている。たとえばルイ・アームストロング、アレクシス・コーナー、キャノンボール・アダレイ、モーズ・アリスン、ビッグ・ビル・ブルーンジー、グレン・キャンベル、シーファス&ウィギンス、クリフトン・シェニエ、エリック・クラプトン、サム・クック、スペンサー・デイヴィス・グループ、ファッツ・ドミノ、ボブ・ディラン、エヴァリー・ブラザーズ、アレサ・フランクリン、ウディ・ハーマン、ロン・ウッド、エラ・フィッツジェラルド、ジャニス・ジョプリン、ニーナ・シモン、ピーター&ゴードン、そして憂歌団‥‥と、上げだしたら、キリがないくらい。
つまりこの曲はアメリカ人にとって、「こころのふるさと」的な歌だということが、よくわかる。
心に悩みをかかえたとき、ふと口をついて出る。そんなブルースなのである。日本でいうなら「上を向いて歩こう」にでも相当する歌、そういう感じだ。
そんな「国民的ブルース」の極めつけ版が、このウィザースプーンによる歌唱なんではないかな。
哀感をたたえたその美声は、ブルースを愛するすべての人々のハートに届くはずだ。
しっとりとしたジャズィな演奏にのって歌われる、心にしみる歌(ブルース)。
こういう曲こそ、末永く歌われ続けていってほしいものであるね。