鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2023/8/2

2023年08月02日 23時19分17秒 | ゲーム・コミック・SF
・・・暑いですね・・・(-_-;
でも、夏こそSF!SF読んで、涼しい異世界に旅立とう!
・・とは全く言えない、やけに現実的な作品を読了いたしました。

所有せざる人々/アーシュラ・K・ル=グィン、佐藤高子訳(ハヤカワ文庫SF)

・・・うーん・・・これは評価が難しいですね。本質的に、SFではありません。SFのフォーマットを土台にした思考実験です。いや、それこそSFか・・・。
と、悩みながら、読了1ヶ月が過ぎようとしております。

社会科学系SFの傑作と評されている作品です。
ル=グィンがこの作品を描いた当時の社会情勢に鑑みて、資本主義の象徴たるウラスと共産主義の象徴たるアナレスを対比して共産主義を称賛する作品である、と表層的な評価をすることも可能な作品ではあります。ウラスとアナレスの兄弟惑星(物理的には兄弟ではあるが、社会的には隔絶の彼方にある両星)の社会描写が流石のル=グィン節で、とにかく重厚にして精緻。登場人物の心理描写も丁寧です。その分、ストーリー展開は遅々として進まず、主人公・シェヴェックの心身の動きにだらだらと付き合って、最終的によくわからないラストシーンに至る・・・という、小説としては不完全燃焼極まる作品です。

鴨的には、一読しての印象は、資本主義/共産主義の対立項は正直どうでも良いな、と思いました。
ウラスでもアナレスでも、シェヴェックにとって心の休まる場所はない。ウラスでは自身が打ち立てた研究成果を横取りされて絶望し、アナレスならこの成果を広く人類社会に周知できるはず、と意気込んで亡命したものの、アナレスはその成果を金に変えようと企む者たちばかりだった・・・ここでも絶望し、ウラスに残る妻と子の元に帰還することを望むシェヴェックの姿を描いて、この物語は幕を閉じます。

・・・厨二病かよヽ( ´ー`)ノ

と、リアルな資本主義社会に生きる鴨は、思ってしまうのですね。
理想主義に満ちた作品です。ル=グィンも、その辺は重々承知して書ききった、大人の寓話だと思います。
社会経験を積んだこの歳になって読むことができて良かった、と鴨は思います。若いうちに手を出せる作品じゃないなー。
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