茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

ホトトギス その1

2006-10-28 21:45:49 | 草木・茶花
 秋の茶花に欠かせないホトトギス。最近でこそ侘びて味わいがあると思えるようになりましたが、最初見た時は斑点模様があまり好きではありませんでした。
 先日、渋樹さんのブログでホトトギスの逸話を知りました。元々私の中で明るいイメージはありませんでしたが、これからは床の間を見る度に切なくなってしまいそうです。
時鳥草
http://blog.so-net.ne.jp/shareki/archive/20061015

 他にもホトトギスにまつわる逸話は翳を感じるものばかり。しかも、花のお話はなくて、鳥の逸話ばかり。
 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の性質を表す有名な言葉。
短気で気難しい信長の、鳴かぬなら殺してしまえホトトギス
好奇心あり人たらしの秀吉の、鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス
忍耐強い家康の、鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス
これは江戸後期の川柳ですが、ホトトギスという鳥が生活に身近なものであったのだろう。
 文学では徳富蘆花の“不如帰”。結核で女性が死んでしまう暗いお話だ。“泣いて血を吐く”から、この題名がつけられたという。
 俳句の同人誌“ホトトギス”。主催の正岡子規は、22歳で肺結核を発病し吐血したことからこの名をつけた。

 唯一明るいのが、枕草子の“杜鵑より蕨”。
以下引用******************************************
 五月のある日、清少納言は中宮にホトトギスの声を聞いて歌を詠みたいと願い出て許しを得、牛車に乗って北賀茂川上流へ出かけた。
 遥々来た甲斐あって、ホトトギスが鳴きながら飛ぶ姿を見ることができました。
 御所に帰る途中、中宮の叔父・高階明順の別荘に立ち寄り、ここに咲いていた卯の花を頂戴し、皆でホトトギスの歌を詠もうとしていたところに、明順が「これは私が自分で摘んだ蕨ですよ」と云って、春に摘んでおいたワラビの煮物を出され、これが大変美味しかったので、つい長居してしまいました。
 梅雨空の中を出かけたので、急いで御所に帰りました。
 それから二日ほど過ぎても、女房たちがホトトギスの歌を披露せず、ワラビの美味しかった話ばかりしているので、中宮はあきれて手元にあった紙に“下蕨こそ恋しかりけれ”と下の句を書いて、清少納言に「上の句を付けなさい」と云った。
 清少納言は即座に“杜鵑たずねて聞きし声よりも”と書き加えて差し出した。
これを見た中宮は「よくもまあぬけぬけと言ったものですね」とお笑いになった。
********************************************************

 女性のおいしいもの好きは昔から変わらないようです。
 ホトトギスのお話はまだ続きます。


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8 コメント

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はじめまして (fairy)
2006-10-28 22:17:10
はじめまして。fairyと申します。名古屋市在住、表千家で茶道を習っている者です。

巡り巡ってm-tamagoさんのブログに辿りつきました。

“杜鵑たずねて聞きし声よりも”・・・食欲の秋ですよね。勝気な清少納言らしい句です。

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実は今日、母から譲り受けたお着物を、いくつか仕立て直しに出したのですが、ひとつ、柄のお花が何の種類か判らないお着物があったのです。

渋樹さんの画像で、「ホトトギス」だったことが判明。切ないエピソードがある悲しいお花だということも今日知りましたが、大切に着てゆきたいと思います。

それではまた、おじゃまさせていただきます。

fairy
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野鳥 (酒徒善人)
2006-10-28 23:10:16
元日本野鳥の会会員としては、思い入れのある花のひとつです。

鳥の名前のつく花って少ないですからね。
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はじめまして (m-tamago)
2006-10-29 19:46:13
fairyさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

表千家なんですね。私は裏千家ですが、こちらには色々な流派の方がいらっしゃいます。裏千家の所作を書くと、表では、薮内では、宗偏流では、と皆さん教えて下さるのがとても勉強になります。fairyさんも色々教えて下さいね。



ホトトギス柄の着物をお持ちなのですね!お母様から譲り受けたものなんて素敵、拝見してみたいなあ。それにしても渋樹さんのブログ写真を見てタイムリーにわかったなんてご縁ですね。

またコメントお待ちしています。気軽にどうぞ。

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野鳥 (m-tamago)
2006-10-29 19:48:21
酒徒善人さんは日本野鳥の会会員だったのですか!

鳥の名前のつく花は少ないのですか。

ホトトギスについて調べていたら花より鳥のことばかりでびっくりしています。

鳴き声を聞いてみたい~。
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ホトトギス (チャチャ)
2006-10-29 20:07:08
地味なお花で、まさにお茶花にぴったりの 侘びの花と思っていましたが、こんな 悲しいお話があるとはーーー。

でも、お話の紹介 ありがとうございます。



ホトトギスも、今年もダメになってしまいましたが、ジョウロウ、タカクマ、朝鮮と、種類が色々ありますね。



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関西では、、、 (ゴマたん)
2006-10-29 22:00:26
ほととぎす、東京に来て初めて知った茶花です。関西ではあまり見かけなかったんです。

けれどそれは、私がお茶のお稽古を熱心にしていなかったせいかもしれません。



枕草子のお話、おもしろいですね! はるかいにしえの時代から愛されていた花だったのですね~。



栄養状態がよくて、鈴なりに咲いている花より、はかなげに3つぐらい、花をつけているのがいいですね(笑)

我が家にも、ほととぎすを1株植えています。引越しにともない、移植したばかりなので、今年は元気がないですが、大事にしていきたいです。
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ホトトギス (m-tamago)
2006-10-30 21:19:22
チャチャさん、こんばんは。

そうなんですよ、ホトトギスには悲しいお話がおおいのです。切ないですよね。

私は紫色のホトトギスしか見たことがないのですが、色々種類があるらしいですね。茶花の世界も深いです~。
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関西 (m-tamago)
2006-10-30 21:23:08
ゴマたんさん、こんばんは。



私も茶花にまで心寄せられるようになったのは最近です。とりあえず先生のお宅で飾られているお花から覚えようとしています。

本当は自分で育てるのが一番なんですけどねー。



>我が家にも、ほととぎすを1株植えています。

先生曰く、茶花はお金がかからないのだから若いうちからまず始めるといいとおっしゃいます。庭がない人はプランターでいいのよ!と。

ゴマたんさんは実践中ですね~。
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