茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

利休梅

2008-04-12 19:00:40 | 草木・茶花
 鎌倉で初めて見た利休梅です。駅前にある大巧寺は小さいながら様々な草木がよく手入れされたお寺さんで、この時期は特に花ざかりでした。細い参道を歩いて行くと、真っ白な花がたくさん咲いている大きな木が目に飛び込んできました。清々しい姿に近づいて行くと、“利休梅”の札がかけられていました。
 「これが?利休梅?」思いがけない出会いに驚きつつ、夢中で写真を撮りました。私が最初に思ったことは、「まさに利休梅緞子の梅と同じ柄だわ、利休様はこれを仕覆にしたに違いない。」先生のお宅にある緞子を何度も見ているのに、その由来について深く考えたことがなかったので、家に帰ったら早速調べなくてはとウキウキしました。
 皆さま、第一印象はいかがですか?
 
 植物としての利休梅は、バラ科ヤナギザクラ属、中国原産、明治初期に日本に渡来したといいます。梅なのに、バラ?しかも、明治初期に日本に渡来?あれ、利休様との関係は??と思っていると、茶花にちょうどよいことから大阪の方が利休の名を付けたとありました。私はこの花が茶花として生けられているのを見たことがありませんが、一昨年の淡交テキスト「水屋十二か月」シリーズの4月号にも紹介されておりました。
 学名は、 Exochorda racemosa。別名に、梅花下野(ばいかしもつけ)、梅咲きうつぎ、丸葉柳桜(まるばやなぎざくら)。バラ科であるのに、丸い葉をもち、梅のようにも見え、ヤナギサクラ属であり、桜の季節に一斉に花をつけるからなのでしょうか、つけられた別名にも納得できるお花ではあります。
 落葉低木で、高さ3~4メートル。花の時期は4~6月。枝先に直径4センチほどの白い五弁の梅に似た花を6~10個つける。植え付けは10~11月と2~3月。

 さて、茶道具で聞く利休梅は、利休様が愛用した黒棗の仕覆に使用された梅の模様といわれています。
 ネットから写真を探しました。ご参照ください。
利休緞子の柄
http://www.teahyakka.com/a63.html
 円を中心にして、その周りを大きい5つの円が囲む形を「星梅鉢」といいますが、これを線で結んだものです。本歌は薄縹色の五枚儒子地に梅鉢紋を黄茶色の糸で規則正しく織り並べたもの。

 今回、この裂地が、“利休緞子”であって、“利休梅緞子”ではないことも知りました。お恥ずかしながら、ずっと“利休梅緞子”だと思っていたものですから。調べていて、この緞子の柄は、利休様が愛用した棗の仕覆であって、その裂地自体を利休様が好んだり、愛した確証はないということが見えてきました。もちろん、好きな棗に着せる(着せたのは利休様なのか、偶然添っていたものなのかわかりませんが)のですから、嫌いな柄ではないのでしょうが、利休好みの表具にも使用された形跡がなく、古文書などにも記載が見当たらないとありましたので、利休緞子と名付けたのは後世の誰かが利休様の愛用品ということで付けたということなのでしょう。そしてまた、植物の利休梅も、明治以降の人が見立てた名前であり、利休様とは何の関係もない。名前の由来とは実に面白い。今回の私がそうであったように、私たちは名前から勝手に想像したり、関連付けていることが多いのだなあと感じたことでした。

 ここでもうひとつ疑問に思ったのが、”縹色”とはどんな色なのか。
 縹色とは、藍の染料だけで染めた純粋な青色のことだそう。その昔、藍染は、毒虫や蝮が嫌う色として身分に関係なく用いられたとか。藍染での青色は、薄い色から、浅葱色、縹色、藍色、紺色と呼ばれていることも初めて知りました。浅葱、藍、紺は耳にしたことがありましたが、縹だけは何故か聞いたことがありませんでした。同じ青色でも、朝、昼、夕方と光の具合で見える色合いは違い、昔の人はそれらを敏感にとらえ、巧みに細かく表現してきたのでしょう。日本語の色の呼び名は細かく分類されていますが、本当に見事ですね。そういえば、子供の成長の上で、色は大きな影響を与え、色をより多く識別できる方が、豊かになると聞いたことがあります。色を認識し、それを感じ取るということは豊かな心を育むということでしょうか。

 利休梅から少々話がそれましたが、様々な想像を巡らせる機会を与えてくれた利休梅との偶然の出会いに感謝。

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10 コメント

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利休梅のお花 (ぶり)
2008-04-12 21:53:39
すてきに写ってますね♪

藍染めですが、一番薄い色に「瓶覗(かめのぞき)」またの名を「覗色(のぞきいろ)」があります。糸を一回だけ藍の染料に浸したもの。
草木染では、何十回も染め液に浸しては染めを繰り返して濃い色を出しますので、その段階に応じた名称があります。
以前、博物館で、江戸時代の藍染めの絹の小袖を見たことがありますが、藍染めの回数による青色の濃淡が美しいものでした。 藍染=インディゴ・ブルーとは違って、染色回数でこれだけのものができるのねと驚きでした。
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Unknown (とく)
2008-04-13 02:36:15
(はなだ)って言うんですよね~藍色からはピンとはこない名前だけど。
薄い藍色って聞いたことがあります。

へ~利休梅は明治に日本に入って来たものなのか。
てっきり日本に昔からある物だと思っていたけど。
利休梅、欲しいな~と思っているけど、売っているの見た事ないしな~
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利休梅 (チャチャ)
2008-04-13 10:07:48
利休梅 初めてみました。 又 私も裂地を 利休梅緞子と言っていました、(汗汗)利休緞子の梅鉢文なのですね。
調べてみたら やはり 利休棗の仕覆として添えられたものか 利休好みとして伝承されたものか 不明とかいてありました。
天啓頃の染付け磁器や堆朱盆に梅花紋散らしがもちいられているので 明末清初の裂であろうとありました。
日本独自の模様と思っていましたが これも又ちがっていたのですね。
教えていただき 又改めてお勉強でき  感謝です。
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利休梅 (m-tamago)
2008-04-14 09:41:24
ぶりさん、こんにちは。
写真、褒めて頂き、ありがとうございます。

>一番薄い色に「瓶覗(かめのぞき)」またの名を「覗色(のぞきいろ)」
へえ、面白い、瓶に入った水を覗いた時に見える色なんですかねえ。

藍染と一言で言っても何段階もあるんですね。草木染めってテレビではなんとなく見たことはありますが、自分でやると染めあがった時の喜びはひとしおなんでしょうね。草木染めの糸やマフラーなど、自然で優しい色してて、見るだけでもほっとします。
様々な色見本を並べて、これはどんな時見える色かなとか考えたら、楽しいかもしれないですね。
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はなだいろ (m-tamago)
2008-04-14 09:44:25
とくさん、こんにちは。
読み方、書いて下さってありがとうございます。
私も最初読めなかったんですよ、ブログ読んでた方もきっとわからなかったと思います。うっかりしました。
本当に藍色からはピンとこない名前、現代人が仕覆の写真見ると紺とか藍色とか思いますよね。

利休梅、梅でもないし、利休様にも関係してない。名前に偽りあり?!
利休梅、私もこれまで目にしたことがありませんでした。清々しくてきれいでしたよー。
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利休梅 (m-tamago)
2008-04-14 09:47:01
チャチャさん、こんにちは。
利休梅、チャチャさんも初めてでしたか。
裂地は利休梅緞子でも通じるから間違いではないとは思うんですけど、正式には、利休緞子らしいです。

>日本独自の模様と思っていましたが これも又ちがっていたのですね。
裂地も中国から輸入されたものをまねて織ったりしたものが多いんでしょうね。
利休梅から思いがけないことをたくさん知りました。
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お久し振りです! (翔子)
2008-04-14 11:43:47
 こんにちは♪ 今年初めての書き込みかも知れません^^;
以前ミクseaで、舟遊びに興じ、お茶の話など楽しませて頂いた○○です。

 天地に遊びに立ち寄ったら、m-tamagoさんの名前に遭遇し、懐かしくて
つい飛んできました-☆ 私の庭にも、背の低い利休梅があります。
枝が少ないので、「梅の形」のお写真の様に、沢山花はつけませんが、
毎年裏切らずに開花して、一カ月近く、少しずつ咲き継いでくれます。

 またまた多くの事を、勉強させて頂きました。これからちょくちょく
拝見に伺います。今日はありがとうございましたm(__)m
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利休梅 (山桜)
2008-04-14 21:32:00
>梅なのに、バラ?

ふふふ、梅も桜も桃もみ~んなバラ科なんですよ。
バラ科は守備範囲?が広くて、意外な所では吾亦紅もバラ科です。

利休梅の実はブログで紹介していなかったかもしれませんね。
今も秋に爆ぜた実の殻が枝に残っていたので、写真を撮りました。
近いうちに(多分^^;)掲載しますね。
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利休梅 (m-tamago)
2008-04-17 09:50:44
翔子さん、こんにちは。
このお名前は初めて使われますよね?翔がつくお名前の方ですよね??念のため。
私が見た利休梅は低木ではなく、かなり高さのあるものでした。1か月位咲き継いでくれるのは嬉しいですね。
これからもよろしくお願いします♪

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利休梅 (m-tamago)
2008-04-17 09:53:14
山桜さん、こんにちは。
梅も桜も桃もバラ科なんですか。バラとは花の雰囲気も全くちがうのに~。
植物も蕾、花、実と違う姿を見せてくれて、育てるか近くにあるかしないと全部を見ることって難しいですね。
利休梅の実、拝見に伺いますね。
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