母の膵臓癌日記

膵臓癌を宣告された母の毎日を綴る

「ステロイドハネムーン」は終わってしまったのか?

2009年11月23日 03時02分42秒 | 日記
11月19日(木)
朝、いつものように階下に様子を見に行くと父が母を指して
「ゆうべは痛くて眠れなかったんだって。」と言う。
母は顔色も悪く皺が一段と深い。
「そうなのよ。オキノームを飲んでも治らなくて3回も飲んじゃったの。」

オキノームを飲んでも痛みが治まらないときには座薬を使うように医師から言われているが
モルヒネの鎮痛剤を含め5種類の座薬が冷蔵庫に保管してあるので母が取り違うのが心配だ。
なので夜、座薬を使うときには私を起こすように言ってあった。
しかし母は起こすほどの事はないと遠慮し、そのうち治まるだろうと我慢していたらしい。

11時から銀行員さんが来て細かい内容のやりとりをするのに私を呼び一緒に聞いて対応してくれという。
銀行員さんが帰った後母はまた神経を使って疲れたと言い、ぐったりした様子で横になる。
また、K療法という健康器具に使うカーボンの在庫が足りないといって不安が増し私に急いで電話で注文するように言い
私は言われたとおり3~4万円ぶんのカーボンを注文する。

どちらも今まで自分一人でできていたことで、私は関知していないことを急に頼られて戸惑う。
確実に「一人で出来ること」が少なくなってきているのだ。
カーボンに関しては、後でよくよく見たら在庫がまだあったそうで自分で電話しなおして注文を取り消したと言い
「ない、と思ったら慌てちゃってSちゃん(私)に電話させたりしてごめんね。」と私にあやまる。
きっと私が母にせっつかれて嫌そうな顔をしたからだと思う。そのせいで母も自分が迷惑をかけていると思い情けなく思ってしまうのだろう。
病気だからそうなっているのにそんな悲しい気持ちにさせて申し訳ない、つくづくダメな娘だと思う。

11月20日(金)
今週に入ってからずっと母の食欲が低下している。口の中が渇き、食べ物を見ると吐き気がするようになったようだ。
今朝はホットミルクをじっとみつめ「飲めるかな?」と言い口をつけると
「あ、飲める飲める」とうれしそうに飲み、目玉焼きも「食べられる!」と言いながら口に運んでいた。
毎回の食事が食べられる、食べられないで一喜一憂する母を見ていると
小康状態の時期を終えて下り坂になっているという気がしてならない。

このあと洗濯物を干すために外に出たらひどい寒気に襲われてからだが震え、気分が悪くなって寝込んでしまった。
「部屋の中から急に寒いところに出たからよ。体温の調節ができなくなっているみたい。」と母は言う。

ブログのコメントで教えていただいた薬のことに関してインターネットで調べていて、
あるサイト(病院のHP)のステロイド剤に関する記述が目に入り心臓がとん、と跳ねた。

{疼痛が緩和され、その他の症状もある程度コントロールされている患者でも確実に衰弱は進行する。
ステロイドがこのような患者の強い倦怠感に有効であることがある。
すべての患者に有効であるとはいえないが、残された時間が少なくとも1ヵ月以上あり、血液検査にてCRPの上昇をきたしている症例で効果があることが多い。
効果があると比較的短期間で食欲の増加、「元気のよさ」がみられるようになる。
しばらくの間効果は持続するが(多くは1ヵ月から3ヵ月)、効果が切れ強い全身倦怠を訴えるようになると比較的短期間で臨死期を迎える。当院では「ステロイドハネムーン」とよんでいる。}

「効果が切れ強い全身倦怠を訴えるようになると比較的短期間で臨死期を迎える。」

臨死期!?


夕方6時に緩和ケアの先生が来る。
母が食欲がなくなったと訴えると先生は
「この病気の方はみなさんそうなんですよ。でもIさん(母)は吐き気があまりないからまだいい方ですよ。」と言う。

診察のためベッドに横になり衣服を上げて腹部を出すとお腹が以前より膨らんでいて水風船のように揺れる。
「腹水が少したまっていますが苦しくないですか?ああ、苦しくない。
それならほっといて大丈夫です。もし苦しくなったら利尿剤を使いましょう。」

オキノームを使う回数が増えているのでオキシコンチンを朝夕3錠ずつから4錠ずつに増やし様子をみましょう、と言い
先生は追加分の処方箋を直接薬局に電話で伝える。
やっとオキシコンチンの量を増やしてもらえた。これで痛みが軽減される、と思い私はほっとする。

11月21日(土)
久しぶりに怖い夢を見て夜中に目が覚める。胸の動悸がなかなか治まらず
こんな夢を見たのはインターネットで見たステロイド剤に関する記述のせいだと思う。

母が抗癌剤を止めてから食欲も改善されて元気になったのは、抗癌剤の副作用から開放されたせいだけでなく
ステロイド剤によるものも大きかったのではないだろうか。
そして今、ステロイドの効果が切れ始めているのではないのだろうか?
夜中に寝床の中で考えることは悪い方へばかり向かってしまい、なかなか寝つかれない。

朝7時半、インターホンの呼び出し音で目覚める。
こんなに朝早く呼び出されることはないので何事かと思い慌てて受話器を取りに行くと
早く起きていた夫がインターホンに出て「お袋さんが呼んでる。辛そうな声だよ。」と言う。
階下へ行くと眉間に深く皺を寄せた母がお腹をさすりながら
「オキノームを2回飲んだけど痛みが引かないの。座薬を使おうかしら。」と言う。
私が冷蔵庫からアンペック座薬を出し渡すと母はトイレに行って座薬を入れてきて
ベッドに横になる。
「前は座っている方が楽だったんだけど、このごろ寝ている方が楽なの。すぐ寝たいなーと思っちゃって…
体力がなくなっているのね。」

確かに少し前まで母は正座して背中をまっすぐに伸ばし、こうしているのが一番楽なのと言っていた。
健康な私たちのだらだらした座り方よりよりよほど綺麗で正しい居住いだ、と笑っていたのだが
そんな母の姿も見られなくなるのだろうか。

日が昇ってくると気温が上がり春のような陽気になる。
「今日はお散歩に行こう。少しは歩かないと体力が落ちちゃうから。」
「えっ、大丈夫?」
座るより寝る方が楽だと言っていたのに、散歩などして疲れないのか心配だが
母の(このままでは弱ってしまうばかり)と焦る気持ちがよくわかるので一緒に散歩に出る。

「しばらく歩いてなかったせいね、なんだかフワフワする感じ。」と言いながら
それでも母は努めて早く歩こうとする。
「無理しないでゆっくり行こうね。」
「あれ?ぽろりクン(犬)は連れてこなかったの?」「…うん。」
ぽろりを連れていると母が万一途中で歩けなくなったりしても動きがとれない。
「あ、そうか。私が久しぶりだから心配よね。また何回か散歩すれば一緒に連れて来れるわね。」
何回も…ずっと散歩に来れればいいのに。と思い私はまた胸が痛くなる。

だんだん母はハァハァと息切れするようになり、途中にあるベンチに座ってしばらく休む。



息が整うとまた歩き始めるが少しするとまた喘ぐように息切れするので休もうと言うが
大丈夫と言って家まで歩ききる。
しかし家に着くとやはり疲れたのかすぐにベッドに横になる。

昼、父が昨日のカレーが残った鍋とパック入りのうどんを1玉持って2階に上がって来る。
いつも昼食は母が簡単に作るから用意しなくていい、と言われているのだが
今日母が横になって寝ているので父が自分でカレーうどんを作ろうとしたら、母が
「カレーの匂いで吐き気がするから2階で作ってもらって」と言ったそうだ。
「日に日に、目に見えて弱っていくんだ。そばにいるとたまらないよ。」と父は
目をうるませている。

母が病気になる前の父は家にいるときはほとんど自分の部屋にこもってテレビを見たり寝ていたりして
母との会話も少なく、母はよく寂しいとこぼしていた。
しかし母が病気になってから、特に余命を知らされてから母に優しくなりまめに動くようになった。
それでも自分の部屋で一人でいるのが父にとっては一番楽なことには変わりない。
ここにきて元気がなくなった母のそばについていることが多くなり父も疲れているようだ。

私も今のところは1日に3回様子を見に行って話を聞く以外は、特に何かを頼まれなければ自分の家の家事や買い物に行くなどして過ごしている。
母も気を使っているのか、私が長い時間階下にいると
「やることがあるんでしょう、戻っていいわよ。」と2階へ行って自分の用事をするように促す。
しかしこれからはもっと母のそばについている時間を増やさなければいけなくなるだろう。
いずれブログを書く時間もとれなくなってくるのかもしれない。


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5 コメント

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Unknown (みぃ)
2009-11-23 22:00:15
りりぃさん、今晩は。
りりぃさんの夜中に目が覚めて、中々寝付けない・・・
お気持ち良く解ります。
以前コメさせて頂いた時に書きましたが、父の膵臓癌が判ってから、1度精神のバランスを崩してしまい、心療内科のお世話になっていた時期がまさにその状態でした。
精神安定剤を飲み、睡眠剤を飲み、それでも眠れない日々が1ヶ月程続きました。
病気について知識を得ようと、本やネットで調べまくり、得た知識の嫌な症状が父に当て嵌まると考えてしまう・・・
今は気持ちを切り替え、自分が支えていかなければと思い日々過ごしていますが・・・

精神的・肉体的にも身内は辛い思いをしますが、りりぃさんが身体を壊してしまっては元もこも在りません・・・
(ごめんなさい、私なんかに言われなくても十分ご承知だと思いますが・・・)
本当にお身体には十分にお気を付け下さいね。

お母様、痛みのコントロールが上手く出来て、好きな物を食べ・行きたい場所に行け、ご家族皆さんと笑顔で過ごせる日々がもっともっと長く続きます様にお祈りしています。

返信する
枇杷 (yu-chan)
2009-11-24 14:59:16
こんにちは。
いぬねこ漫画を、楽しみに読ませていただいていた者です。
何と声をお掛けしたらいいのかと、ずっと考えてしまって今日になってしまいました。ごめんなさい。
でも、思いついたままでも、少しでも伝えたいと思い、コメントさせていただくことにしました。

枇杷の葉が、良いらしいですよ。
お灸とか。
癌の痛みに効くらしいです。
ご存知でしたらごめんなさい。
私も周りでされている方を聞くので…
自然療法ですが…「家庭で出来る自然療法」という本、お薦めです。
あと、下半身(特に足)を温めると痛みも軽減するみたいです(癌を患っていた友達が言っていました。)
靴下を重ね履きするのがお薦め(私もしています)です。
http://www.hietori-rahall.com./frame.html
/www.kuratama.jp/produce/hietori/diary/r061226.htm
なんかにわかりやすい説明があります。
私や周りの人は、気分も楽になりました。あまり悩まなくなったというのか。

参考になればいいのですが…おせっかいだったらごめんなさい。りりぃさんのこと応援しています。
返信する
Unknown (ももクリママ)
2009-11-24 20:15:08
ご無沙汰しています。最初から全部読み、りりぃさんになんて言葉をかけてよいのかわからず今日になってしまいました。
同世代の母を持ち、読めば読むほどに、自分の母もりりぃさんのお母様のような立場になったら、多分同じように自分より娘を気遣い、それでも病魔が無理を言わせてしまう・・・。そんな風にになるだろう思えて、とても人ごとには思えませんでした。
お医者様の弟さんもついておられることですから、私など素人には何もわかりませんが、
お母様の痛みが少しでもやわらいで、おいしく食事できて、ご家族皆さんが笑顔で過ごせる時間が長く長く続くことを祈っています。
りりぃさんもお体大切にしてくださいね。陰ながらずっとお祈りしています。
返信する
こんばんは (emu)
2009-11-24 21:00:49
りりぃさん。ほんとに、お母様の具合でこちらの心模様がかわりますね。また、かなわないことを口にする母に娘の心は痛くて仕方がない。。ほんとによくわかります。
>夜中に寝床の中で考えることは悪い方へばかり向かってしまい、なかなか寝つかれない。
全くわたしもそうなんです。そしてりりぃさんの今日の日記で私はドキンとして、今ちょっと辛いです。今日は何か飲んで寝ようと思います。
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こんばんは (りりぃ)
2009-11-25 03:35:27
みぃさん
みぃさんも精神のバランスを崩されるほど…どんなにかお辛かったのしょうね。
他の場所の癌であれば完治しないとしても悪化するまでにもう少し時間があることが多いような気がするのですが
膵臓は…あまりにも進行が早くて気持ちの整理が追いつきませんね。
今は内心土砂降り状態ですがみぃさんと同じく
「支えなければ」という気持ちだけで自分を奮い立たせています。
お互い頑張りましょうね!

yu-chanさん
こちらにもご訪問とコメントありがとうございます。
枇杷の葉、というのは温熱療法などで聞いたことはありましたが
詳しくは知りませんでした。是非調べてみたいと思います。
靴下の重ね履きにもコツがあるんですね。こちらもよく読んでみますね。
貴重な情報ありがとうございました。
yu-chanさんに気にかけていただいて本当にうれしいです。

ももクリママさん
最初から全部!つたない文章で読みにくいブログを…ありがとうございます~(泣)
私は母がこんなことになってつくづくもっと積極的に母の健康に関わるべきだったと…
ももクリママさんとは家族構成や環境が似てましたが
ももクリママさんのお母様はずっとずっと元気で長生きしてほしいです。

emuさん
かなわないことを口にする…本当にそれにやられてしまうことが多いです。
病気に前向きで闘う意欲があることはいいことなのに、現実とのギャップがありすぎて胸が締め付けられます。
emuさんまでドキンとさせてしまう内容でごめんなさい><
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