中島梓、またの名栗本薫という人の小説やエッセイを私はこれまで読んだことがなく
記憶に残るのはずいぶん前の男女チームに分かれて競うTVのクイズ番組で、女性チームのキャプテンを務めていた姿だった。
しかしこの本の巻末に記されたおびただしい数の仕事の履歴を見ると作家としてはもちろん
舞台の脚本や演出、ジャズピアニストとしてのライブ活動などその才能の多岐にわたることに驚く。
そんな作者が2007年10月に体調を崩し癌が発覚、同年12月の手術により膵臓癌と確定、翌年4月のCT検査結果で肝臓への転移が確認された。
「転移」は2008年9月5日から亡くなる直前の2009年5月17日(26日に死去)までの生活を日記形式で記したものだ。
物書きを職業にしている人が書く闘病記であるからもちろん辛い症状や患者の心中はとてもわかりやすく描写されていて
徐々に悪化していく過程がリアルに晒されている。
にもかかわらず読んでいて暗さを感じず気が塞がれるようなこともあまりないのは本人の性格によるものだと思う。
精力的に量を書くタイプの作家らしく体の辛いときでもいつも仕事のことが頭から離れず執筆中の小説を書き進める。
良くない症状が新たに出ても癌の進行のせいとは思わず、寒さや疲れや食事などに理由を求め、将来的に改善されるものと信じて希望を失わない。
日常の小さな出来事やきれいなものや美味しい食べ物などに幸せを感じて感謝する。
自分の病気や他人や世の中を恨んだり呪ったりするようなネガティブさがない。
作者はいつも家政婦がいるような裕福な家で育ち才能に恵まれて、日記で読み取れるその生活は華やかで都会的で贅沢でうらやましい限りだ。
このような人だから病気の暗さとも無縁なのかと思えば、恵まれた人にはそれなりの悩みや葛藤もあるらしく
過去に何度か精神的な危機を経験しているらしい。そういう危機を乗り越えた人の優しさも文面から感じられる。
一方、癌患者である作者に対するお見舞いメールやファンレターが結局自分や自分の家族の癌の話で
「人が『好意』だと思って見せてくれるものが、病人当人にとっては好意でもなんでもなく、ただの押し付けであったり、共感の押し売りであったりすることも多い」
という一文には、自分も気をつけなければならないと痛切に感じた。
「転移」が出版されたのは母が亡くなった後で、つい最近この本の存在を知り書店にあったので買って一気に読み終えた。
惜しむらくは母がまだ生きているうちにこの本を読みたかった。そうすればもう少し母の気持ちに寄り添えたのではないかと思う。
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しかしこの本の巻末に記されたおびただしい数の仕事の履歴を見ると作家としてはもちろん
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そんな作者が2007年10月に体調を崩し癌が発覚、同年12月の手術により膵臓癌と確定、翌年4月のCT検査結果で肝臓への転移が確認された。
「転移」は2008年9月5日から亡くなる直前の2009年5月17日(26日に死去)までの生活を日記形式で記したものだ。
物書きを職業にしている人が書く闘病記であるからもちろん辛い症状や患者の心中はとてもわかりやすく描写されていて
徐々に悪化していく過程がリアルに晒されている。
にもかかわらず読んでいて暗さを感じず気が塞がれるようなこともあまりないのは本人の性格によるものだと思う。
精力的に量を書くタイプの作家らしく体の辛いときでもいつも仕事のことが頭から離れず執筆中の小説を書き進める。
良くない症状が新たに出ても癌の進行のせいとは思わず、寒さや疲れや食事などに理由を求め、将来的に改善されるものと信じて希望を失わない。
日常の小さな出来事やきれいなものや美味しい食べ物などに幸せを感じて感謝する。
自分の病気や他人や世の中を恨んだり呪ったりするようなネガティブさがない。
作者はいつも家政婦がいるような裕福な家で育ち才能に恵まれて、日記で読み取れるその生活は華やかで都会的で贅沢でうらやましい限りだ。
このような人だから病気の暗さとも無縁なのかと思えば、恵まれた人にはそれなりの悩みや葛藤もあるらしく
過去に何度か精神的な危機を経験しているらしい。そういう危機を乗り越えた人の優しさも文面から感じられる。
一方、癌患者である作者に対するお見舞いメールやファンレターが結局自分や自分の家族の癌の話で
「人が『好意』だと思って見せてくれるものが、病人当人にとっては好意でもなんでもなく、ただの押し付けであったり、共感の押し売りであったりすることも多い」
という一文には、自分も気をつけなければならないと痛切に感じた。
「転移」が出版されたのは母が亡くなった後で、つい最近この本の存在を知り書店にあったので買って一気に読み終えた。
惜しむらくは母がまだ生きているうちにこの本を読みたかった。そうすればもう少し母の気持ちに寄り添えたのではないかと思う。
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本は読んでいませんが、この方の事は私も存じておりました。
人が『好意』だと思って見せてくれるものが、病人当人にとっては好意でもなんでもなく、ただの押し付けであったり、共感の押し売りであったりすることも多い
私はこの一文にドキッ!とすると共に、深く考えさせられる事が多々あります。
これからの父と過ごす上での参考として、私も読んでみたいと思いました。
何時もながらりりぃ。さんには勉強させて頂く事が多いです。
参考になる記事を有難うございました。
今日さっそく買ってきました。
中島梓さんの『転移』。
まだ読み始めですが、文章に吸い込まれるようです。
一気に一晩で読みたいですが、明日も仕事がありますので、ほどほどにしておきます(笑)
貴重な情報ありがとうございます。
これからも沢山いろんなことを教えてくださいね。
母ですが、デュロテップパッチは効き目が出るまで一週間位かかるそうで、ロキソニンを飲みながらコントロールしています。
食事や薬を目の前にして、じっと見つめている仕草は、りりぃさんの日記にあったお母様とオーバーラップしてしまいます。
私もその部分を冷や汗が出る思いで思わず読み返したんですよ~。
他にもいろいろな示唆を含んだ言葉がいっぱいで
それ以外、自分的には作者の沢山の趣味の話が興味深かったです。
ミケさん
はやっ!('○';)(笑)
寝不足にならないように、少しずつ読んでくださいね^^
食事や薬をじっと見つめるお母様…辛い場面ですよね。
私もコメントを読んで母の姿が目に浮かんできました。
デュベロップが早く効いて痛みが抑えられ
ミケさんの心労を癒すお母様の笑顔がいっぱい見られますように。
治療中は文字だらけだと気持ち悪くなるので、本は漫画しか読んでいませんでした。
今は読めるので早速探してきます。
また来ます。
りりぃ。さんの記事を見て読んでみたくなりました。
私は1年と少し前、母をすい臓癌で亡くしました。
そして自分自身も、すい臓癌ほど深刻な病ではありませんが、闘病中です。
ですから、病気の人の気持ちも、それを支える家族の気持ちも、わかります。
健康な人と、病気を抱えた人では、考え方も感じ方も、かなりの隔たりがあります。
だから、その事で自分を責めたり、相手を責めたりしないで欲しいなぁと思い、
思わずコメントしてしまいました。
家族や周りの人は病人に対して、
いつも家族や周りの人に感謝の心を忘れず、常に明るく前向きでいて欲しい。
と願ってしまいます。
その期待が、病人にとっては苦しかったりするんですよね。
相手の気持ちをわかりたいと思っても、それはかなり難しいと思います。
病人と健康な人では、考え方や感じ方が違うって事だけわかっていれば、
お互いに無闇に傷つきあう事もなくなると思います。
膵臓癌の苦しみや不安…そして著者ならではの前向きな希望がビンビン伝わってきました。
やはり本人しか本当の苦しみは分からないんだと思いました。
そして、母との残された時間を大切に有意義に過ごさなければ…と、改めて決意しました。
りりぃさん、読んでよかったです。ありがとうございました。
はじめまして^^
ご訪問&コメントありがとうございます
あっ、クリックまでありがとうございました!
良かったら感想聞かせてくださいね
メイさん
はじめまして^^
ご訪問&コメントありがとうございます
ほんとうにそのとおりですね
健康な人間は経験のない病人の気持ちがわかりきれないから
良かれと思って自分の考えを押し付けてしまうことがあるのでしょうね
以前精神を患っている幼馴染の友人が同じ悩みを語っていたのを思い出しました。
ミケさん
はやっ!(笑)
作者はあれほど癌が進行しても小説を書き進めるパワーがすごいですよね。
志半ばでどんなに残念だったかと思います。
読んでよかったとおっしゃっていただいてうれしいです^^紹介してよかった!