Turedure Lilax Diary

「徒然」―何もする事が無くて、どう時間を過ごしたらよいのかと思うこと、様子。(三省堂 新明解国語辞典)

膨らむ妄想

2013-07-04 21:31:00 | 本棚
「東京バンドワゴン」小路幸也
(集英社文庫)

東京下町で古本屋を営む大家族のシリーズ小説、文庫版の最新刊が出たので第一シリーズから読み直していたら、この10月についに連続ドラマ化という知らせが飛び込んできました。
もともとホームドラマをすごく意識した原作なので、我が家では常々勝手にキャスティングを楽しんでいたところ。舞台に描かれているのは結構我が家近辺だったりするので、散歩しながら”この店は撮影にいいんじゃないか?”とか(゚゜)\バキ☆

ドラマの主演は亀梨和也。想像はしてなかったけどイイんじゃないかな。@( ̄∇ ̄)@
原作は古本屋の主人であるおじいちゃん・勘一を中心とした堀田家がご近所や常連客の「些事諸問題」に絡んでゆく物語ですが、堀田家の次男坊・青が主役となると切り口もだいぶ変わってくるかも。でも不思議なことに、どうなってもドラマ版がっかり…ということにはならなそうな気がしてます。(^_^)
通勤電車で原作読みつつ、青ちゃんが亀梨君ならば紺(兄)はこの人かあの人か…藍子さん(姉)は…亜美さん(兄嫁)は…と毎日キャストを妄想。
一番楽しみなのはお父さんの我南人(ガナト)さんを誰が演じるのか。ガナトさんは伝説のロッカー。多分あのひと、というのはあるけど、いっその事役者さんじゃなくても面白いんじゃないかな。
ワタシは、この役に佐野元春はかなりいいんじゃないかと思うんですが。(^^;)ゞ
そしてホーボーキングバンド、いやコヨーテバンドでもいい、近所のマンション屋上でゲリラライブとか。(そういうエピソードがあります)
そしたらエキストラで参加したいじゃないか!!!

…妄想は果てしなく膨らんでゆきます。(;^_^A)

放送は10月から、日本テレビ系土曜夜9時です。

「とんび」まとめて

2013-03-26 21:32:00 | 本棚
「とんび」重松清(角川文庫)

去年の初め、原作を読み終えてから録画しておいたNHKのドラマ(前・後編)を見ました。
そして今年はTBSの連続ドラマと並行してもう一度原作を読みました。で、終了後NHK版をもう一度見てみました。

ドラマ版を比較してみると
キャストはNHKのほうが断然好みだけど、時間が短いのもあって、かなり駆け足で進行してしまっていたことや、大事なシーンが変わってしまっていたりしたのが残念。
TBS版は年代が10年スライドしてしまってるのと、台詞が方言ではなく舞台も何所と限定しなかったのはまあ仕方がないか。その他は原作を逸脱することもなく、丁寧に作ってあったと思います。


どれが一番よいかと訊かれると…そりゃ原作が一番いいに決まっている。

けど、TBS版は原作になかった味をつけてくれました。
原作では、由美さんはアキラの結婚相手として、2人でヤスさんの家を訪ねるところから登場するので、どうしても「よそ者感」がワタシには見えてしまうのですが
アキラの視点からストーリーを進めて、由美さんと結婚に至るまでのプロセスを描いたことによって位置づけがかなりハッキリして、最後の海のシーンがぐっと良くなったと思います。

重松清は新作もまだ読んでないのがあるし、再読したいものもたくさんあります。
再読中の「鉄のライオン」もうすぐ読み終わる。次は何を読もうかな。

あらためて父に感謝

2013-01-18 22:16:00 | 本棚
「オリンピックの身代金(上・下)」奥田英朗(角川文庫)

昭和39年 東京オリンピック。
日本の歴史に残る華やかな祭典を”人質”にした事件の物語。
東大大学院生の島崎国夫は、急死した兄に代わって土木工事の孫請け会社でアルバイトを始める。想像を絶する過酷な労働環境の下、労働者たちは博打、女、薬に逃げ場を求める。恐ろしいほどの勢いで肉体と思想が逞しくなってゆく国夫。ついには国家を相手に一大事件を企てる。
大学の同級生、国夫に想いを寄せる古本屋の娘、国夫を追う刑事。それぞれの視点からの各自の正義が絶妙に絡み合う。


奥田英朗といえばやはり「空中ブランコ」なのですが、エッセイといい小説といい書くものによって作風がまったく違うのがこの人の魅力だと思います。
よくぞここまで綿密にねちっこく調べ上げたな。巻末に載っている参考文献の量にビックリする。しかも”主要”と言うことはこれが全てではないと言うことで。
ところどころ東北弁が残念なところはこの際大目に見よう。頭の中で台詞を正調東北弁に変換して読み進める。圧倒的なリアリティ。東北の貧しい農村独特の陰影が浮かび上がる。
祝福された街・東京と、置いてきぼりにされた田舎。

平成32年のオリンピック招致に向けて関係者が気勢を上げている今、50年近く経っているにもかかわらず、その格差、関係はいまだに根深く残っているのです。




舞台のひとつである工事現場と、出稼ぎ労働者が寝泊りする飯場。

実家の父のことを思う。
父は十数年前までは、農閑期である冬は出稼ぎに出ていました。国夫とは同年代。オリンピック開催に向けての何某かの工事に関わっていたかもしれません。
約半年家族と離れて働き、春の農繁期に帰ってくる。兄妹でよく飯場宛てに手紙を書いて送ったのを懐かしく思い出します。
子供なりに父のことを尊敬し、感謝もしていましたが、この作品中での労働環境の過酷さはあまりにもあまりでした。

今日実家から宅配便で野菜が届きました。
母ではなく、父が支度をして送ってくれたらしい。
いつも気にかけてくれてありがとう。
辛い労働に耐えて育ててくれてありがとう。

本当に 本当にありがとう。



さて、長い上下巻をやっと読み終えたぞ。
「とんび」再読しよう!

ステップ

2012-10-04 21:55:00 | 本棚
「ステップ」重松清(中公文庫)

親子の物語と言うよりは、家族の成長物語と言う風に感じました。
突然妻に先立たれて残された父と子、と言うと同じく重松清の「とんび」という作品が思い浮かぶのですが、喜怒哀楽を露わにして子育てに大奮闘する「とんび」のヤスさんとはだいぶ違う本作の健一さん。物心つく前にママを亡くした娘。亡くなった妻の両親と兄夫婦。それぞれが家族を失った寂しさと向き合いながら成長していく物語でした。

ちなみに、タイトルの「ステップ」には足取りや歩みの意味とステップファミリー(血縁のない家族)の意味が重ねてあるそうです。作品中では健一さんの故郷の家族にはほとんど触れられませんでしたが、さほど不自然とは思いませんでした。

特別大きな事件や山場があるわけではなく、日々積み上げられていく家族の日常。
淡々と進みながらも不思議に沁みてくる。

ラストの、小学校卒業前夜のシーンがとても良い。

やっぱり重松清は好きだな…。