ブラックボランティア消滅？〜東京オリンピックと無償ボランティアの哀れな結末

　新型コロナウイルスの影響で世界各地で行われる予定の代表選考が次々と中止や延期になっている。IOCによると､11000人とされる五輪出場選手の内､43％が決まってないという。そのIOCも”人類がコロナウイルスに打ち勝つ証として､完全な形での開催を目指す”と強気な姿勢を見せてはいるが。
　しかし､日本国内で世界中の五輪チームが合宿を行う事前キャンプが､新型コロナの影響で全国の16の自治体で中止や延期となった。
　確かに､オリンピック開催も重要課題だが､世界のアスリートの命や健康はもっと重要な事項だろう。

ブラックボランティアの行方

　東京オリンピック2020が延期か中止かの瀬戸際に追い込まれた事で､”ブラックボランティアがブラックなまま闇に消え”そうな気配になってきた。　
　”学徒動員と強制ボランティア”でも書いたが､東京都は観光案内などをするボランティア体験として､新たに都内の中学2年生から高校3年生､およそ6000人規模の学徒動員計画を立てた。
　元々､東京オリピック&パラリンピックでは､合計11万人余りものボランティアが活動する見込みだった。それでも足りずに､6000人の追加動員という事だ。
　しかし､この”無償ボランティア”が貴重な経験とは聞いて呆れる。強制であろうがなかろうが､”タダ働き”というボランティアそのものが罪なのだ。

　一部で”徴用”だとの批判もあるが､徴用工問題で日韓関係が最悪になってる時期に､何故こんな事を？っていう気もする。
　役員の報酬が悪なら､無償ボランティアの精神も結局は悪なのだ。つまり､タダほど高く付くものはない。
　まるで､｢桜を見る会｣の半強制動員と全く同じ。しかし､ブラックボランティアも全てが無に帰す事になりそうだ。

ボランティアは最初から必要なかった？

　ボランティアに関しては､教育の一貫とか､社会勉強の為とか､自発性や主体性を養う為とか､きれい事を真顔で語る専門家は多い。
　しかし､極論を言えば”タダ働き”と同じである。奉仕活動と言っても､罪を犯した囚人じゃないんだから､活動に見合う報酬はもらうべきだ。それが民主主義の基本ルールだろう。無償奉仕ほど大きな罪はない。
　因みに､受刑中の者でも作業報奨金として日に200円､(罰金を抱え)重い刑の者には日当5千円が支給されるという。しかも彼らは衣食住はタダである。

　一方､東京オリンピック組織委員会の役員は､会長や常任理事､一般理事や議員らを含め､総勢で48人程いる。等級により給与は異なるが､月当り10万〜200万(最大)とされる。
　”東京オリンピックの身代金”でも書いたが､温々と胡座を掻く役員とは異なり､ボランティアの日当は､僅か千円程度のプリペイドカードのみ(当初は無報酬)。
　その上､交通費や宿泊費はナシで､”1日8時間､10日以上参加できる方”というハードな応募条件付きだ。
　それだけではない。｢積極的に応募して頂きたい方｣との項目を設け､”大会ボランティアとして活動したいという熱意を持っている方” ”お互いを思いやる気持ちを持ち､チームとして活動したい方”などと､参加の心構えまで一々注文を付ける始末。

　因みに､東京五輪のボランティアCMに起用された広瀬すずは､以下の様に語ってた。
　”みなさん､青春のど真ん中にオリンピックがやってきます。さあ世界をもてなそう。ボランティア募集します”
　因みに､このCM製作には制作費だけで4千万､広瀬のギャラを含めると1億円にもなるらしい。ボランティアというには､CMとても自腹ですべきだろう💢。
　役員らの全報酬を11万人のボランティア全てに回せば､どれだけ素晴らしい”役員無報酬型”オリンピックが運営出来るだろうか？
　そう思うのは私だけじゃない筈だ。

　しかし広瀬すずの言葉じゃないが､”一生忘れない夏がきっと来る”の言葉が現実のものになろうとは､誰が予想したろうか？

日本だけが無報酬という不都合な現実

　無報酬ボランティアの精神は､やっぱりクレイジーだった。
　リオ五輪では有償ボランティアも存在したし､平昌五輪では宿泊費や交通費に3度の食事が支給された。
　一昨年､ジャカルタ(インドネシア)のアジア大会では､ジャカルタの最低賃金の約3倍の約2300円(交通費•食費含む)が日当として､ボランティアに支給された。
　その上､組織委と広瀬すずが売りにする“やりがい”も満たされない可能性が大きい。
　会場で熱気を分かち合える､”美味しい”思いができるボランティアはほんの一握り。
　事実､ボランティアの多くが会場周辺で観客や関係者を案内する係や手荷物検査をするセキュリティなど過酷な現場に回される。

　かつて､バンクーバー五輪(2011)での日本勢の不振に関し､長野五輪の金メダリスト清水宏保が､コーチやトレーナーではなくJOC役員に金が使われている現状を､”お金の使い方が逆でしょ”と痛烈に批判した。
　事実､日本は選手団94人に対し､役員は111人。韓国は選手団が45人で役員は37人。日本は金0銀3銅2に対し､韓国は金6銀6銅2の合計14個のメダルを獲得した。
　全く､役員の役員による役員の為のオリンピックだが。それは今までもこれからも全く変わらない。
　しかし､新型コロナのお陰で､組織委員の癒着もオリンピックの黒い罠もボランティアの不都合も､その全てが吹っ飛びそうな勢いとなった。

結局､無償ボランティアは必要なかった？

　結局､崇高なボランティアの精神が大きな腐敗を生む。そして今､その腐敗すらも消滅しそうな勢いである。
　キツい仕事はボランティアに任せ､役員連中だけが甘い密を吸う。現場の選手がメダルを取ろうが取らまいが､全ての責任は選手に押し付ける。役員連中は賞与を貰い､トンズラすればいい。このブラックな仕組みは､国内大手の製造業においても殆ど当てはまる。

　メダルの報奨金(金500万､銀200万､銅100万)よりも､役員報酬(最大で年2400万円)の方が多い事がそれを物語る。
　これじゃアスリートもメダリストも､そして現場のブラックボランティアも単なるブラックという名のスレイブ(奴隷)に過ぎない。
　それでも日本人は､道徳や倫理というものを美徳とし､お金には代えられない名誉や徳を重んじる。しかし､そういった善意に付け込む､腹黒い連中が存在するのもまた悲しい現実ではある。

　神様は腹黒い奴らに天罰を下す事はない。つまり､神様といえど甘い密と癒着が大好きなのだ。そして今､その甘い蜜も吸えなくなってきた。
　しかし､ボランティア募集の安易で魅惑な謳い文句に引っ掛かる､平和ボンボンな日本人もまた罪なのだ。
　勿論､腹黒い役員や政治屋も悪いが､本当に罪なのは､純粋無垢なボランティア精神を持つ何をも疑わない､我ら善良な民なのかもしれない。
　そして､そのバカ正直で善良な市民を守る為に､新型ウイルスが登場し､賄賂と癒着に染まったオリンピックを死滅させたとしたら？

もっとお金にはガツガツすべきだ

　そういう私も､無償でボランティアをした事が何度かある。やり遂げた時はとても清々しかった。皆に感謝され､生き生きとした表情のボランティア仲間と戯れた記憶は､しっかりと脳裏に刻まれてる。
　しかし､その裏で甘い密を吸ってる腹黒い連中の事は頭になかった。みんなが無償で支え合ってると思った。そう私もバカだったのだ。

　ネットが普及し､こういった情報を耳にする度に､純粋や正直というのは結局は罪だと確信する様になった。
　汚い言い方だが､もっと日本人は報酬や給与に対し､役員や政治屋以上にガツガツすべきだ。そうでないと､”いい人=悪い人”のままで人生を終えてしまう。

　平和ボンボンの善良な庶民のままでは､政治家や役員だけじゃなく､カミさんや世界中にもナメられる。
　今こそ善良な日本人はお金にガツガツしよう。でないと､人生は私の様に”いい人”のままで終わっちまう。
　人間､悪いくらいで丁度いい。人生は汚いくらいで丁度いい。お金にはガツガツするくらいで丁度いい。肴は炙ったイカがいい〜(^^♪　
　50年以上生きてきた私が言うんだから､まんざら間違ってはいないと思うが。

最後に〜広瀬すず再び参上

　東京オリンピック組織委員会(会長•森喜朗元首相)は､約11万人のボランティア集めの広告塔として､広瀬すずを起用した。
　当然､批判は相次いだ。SNSでは”奴隷募集CMだ！ボランティアしても広瀬すずと付き合える訳じゃないぞ！広瀬すずを呼ぶ金を他に回せ､何千人も釣られる訳ねえだろ！”と辛辣なものばかりだった。

　そして今､そのボランティア募集が全く意味のないものになりつつある。新型コロナウイルスのお陰で､東京五輪が中止&延期の岐路に立たされたのだ。
　そこで再び広瀬すずの登場だ。”みなさ〜ん､新型コロナウイルスのど真ん中にオリンピックがやってきます。感染ボランティア募集しま〜す”とでも言うか？
　今や､無償ボランティアはブラックボランティアと揶揄され､そのまま闇に葬られつつある。

　そういう意味では､遺族には悪いがコロナウイルスに感謝すべきかも知れない。
　たとえ延期•開催されたとしても､役員への報酬はゼロであろうか。
　勿論､そんな”片肺”オリンピックには誰も無償で応援はしない。日本島民はみな”無償ボランティアの実態”を全て知ってしまったのだ。
　オリンピックが開催されようが中止になろうが､安倍政権は失脚し､アベノミクスは失敗に終り､多額の借金だけが残る。

　ブラックボランティアが闇と消える日。
　それこそが広瀬すずの言う､”一生忘れない夏の日”になるのかも知れない。

　無償ボランティアに頼るオリンピックならない方がいい。理事や組織委だけが美味しい思いをする祭典なら､絶滅した方がいい。
　そう思って､昨年書いた記事が現実のものとなりつつある。
　つまり､無償ボランティアが消滅した時､オリンピックは絶滅する。