象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

メジャーがメジャーでなくなる日(更新)〜放映権バブルの崩壊”後半”

2023年09月22日 13時11分42秒 | スポーツドキュメント

 大谷選手の連日の欠場のお陰で、消化試合に成り下がったエンゼルスの試合を、NHKは飽きもせずに流し続けていた。
 しかし、はるばる日本から大谷を応援しに来たファンたちは、まるでお通夜みたいに塞ぎ込んでる。そこまでして大谷を?とも思うが、休ませるのも大谷本人の為である。
 結局は手術となったが、やるんであれば右肘損傷が発覚した7月末にやるべきだった。手術が2ヶ月近く伸びた事が、リハビリにどう影響するのか。
 二刀流にウンザリでもないが、ベーブルース以前には黒人リーグでは当り前の様に行われており、ルースの二刀流ですら”テメエの外野守備はパートタイマーだ”とバカにされた。
 そのルースは二刀流を回避した事で、15年もの間”打撃の神様”に君臨できた。故に、大谷が二刀流と決別するのは今しかない。 

 それに、たまには千賀や藤浪の投球を見たいと思う。しかい、殆ど放映される事はない。多分、年間契約でエンゼルスの年間放映権を安く買い叩いてるのだろうか。
 来年からは打者大谷に専念してほしいし、そういう意味では今回の右肘の故障は、いい薬になったのかもしれない。

 一方で、日本のプロ野球よりも盛り上がりに欠けるMLBだが、私が思う以上にその内情は深刻みたいだ。
 前回「その1」では、放映権バブル崩壊によるローカルTV局の破綻について述べました。
 そこで今日は、MLB各球団が交わす放映権契約の知られざる実態を紹介します。因みに、2019年と少し古いデータですが、今の実情はもっと酷い(多分)と思って下さい。

 MLBの放映権契約は、MLB機構が各大手TV局と結んでる全体契約と、各チームが各所在地のローカル局と結ぶチーム限定契約の2種類がある。特に前者は、MLB機構から全30球団にほぼ均等に分配される。
 そこで、最近ポピュラーとなってるのが、放映権契約に加え、地方テレビ局の株式の一部を獲得するというもので、株式の配当額はMLBの収入分配制度の対象外となり、またオーナーが自由に売却できるのが魅力とされる。
 以下、「MLBの全放映権契約(2019)まとめ」より一部抜粋です。


ヤンキースのケース

 MLBで一番の金満球団であるヤンキースは、これまた一番複雑な放映権契約を結んでいる。
 元々、YESNetworkはヤンキースのオーナーであるスタインブレナー家がゴールドマン・サックスなどの投資家と共に立ち上げた自前のローカル局だ。立ち上げ後はヤンキースの恩恵を受け、世界第3位のスポーツTV局へと成長し、2010年前後には約1億ドルの営業利益を上げた。
 2012年、ヤンキースは34%の株式を保有してたが、2012~14年にFOXが買収を進め、株式保有率はFOXが80%でヤンキースが20%に。この一連の買収と同時にヤンキースはYESNetworkとの新放映権契約を結び、2013年からの30年契約を結ぶ。1年目が年8500万ドル~9000万ドルで、その後は1年毎に年間放映権料の約5%が加算される。

 もし1年目が8500万ドル+年5%であれば、2019年時点で年1億1400万ドルで、契約最終年の2042年は年3億5000万ドル。30年間の総額は56億5000万ドルで、年平均1億8800万ドルに跳ね上がる。これに株式保有20%による収益とFOXへの株式売却による収益が加わる筈だった。
 しかし「その1」
でも言った様に、今シーズン前にヤンキースはAmazonやシンクレア・ブロードキャスト・グループ(アメリカ最大のTV放送企業)やブラックストーン・グループ(アメリカ最大級の投資ファンド会社)らと共に、YESNetworkを34億7000万ドルでFOXから逆買収した。 
 結果、株式保有率はヤンキースが26%で再び筆頭株主になり(シンクレアが20%、Amazonが15%)、ヤンキースが放送のコントロール権を保有する。
 野球離れ、TV離れの中、ヤンキースの10億ドル近い出費がどう転ぶかは、MLBの将来次第である。因みに、視聴世帯数は27万7千で、MLBトップだが、今年(2023)のヤンキースは最下位転落で逆買収が裏目となった気もする。


ドジャースのケース

 一方で、ナリーグの雄であるドジャースもまたド派手で複雑な大型契約で、単独チームにては、MLBだけでなく世界全体で見ても史上最大のスポーツ放映権契約だ。
 2011年、ドジャースを21億5千万ドルで買収したグッゲンハイム・パートナーズだが、2012年に放映権契約が終了するFOXとタイムワーナーの争いになる。結果、タイムワーナーがFOXを20億ドル以上も上回る25年総額83億5千万ドル(年平均3億3400万ドル)の記録的な放映権契約をドジャースと結んだ。
 しかし、これら総額の全てが放映権料として支払われる訳ではない。
 この契約によってグッゲンハイム・パートナーズとタイムワーナーはSpectrumSportsNetLAを設立し、それぞれが50/50で所有。この株式による利益やバリューも総額83億5000万ドルに含まれる。また、他にも契約金やブランド料も含まれるとか。

 通常の放映権料だが、初年度が8400万ドルで年4%の割合で増加、最終的に25年間の総額は35億ドル(年平均1億4000万ドル)となる。つまり、放映権料だけなら2019年で1億200万ドルとなる。
 更に、契約時に問題となったのが総額83億5千万のうち、どこまでがMLBの収入分配制度の対象になるのか。当然、これだけの規模の契約である事からMLBから”待った”が掛かる。普通なら通常の放映権料総額35億ドルだけが収入分配制度の対象になるが、流石に残りの40億ドル以上を収入分配制度の対象外とするのは認められなかった。
 結果、契約総額から放映権料を差し引いた残りの金額のうち半分を収入分配制度の対象とする事でMLBからの承認を得られた。
 報道によると、ドジャースは契約初年度から数年間において年間2億ドル強を受け取ったとされる。

 因みに、SpectrumSportsNetは月額視聴料を4.9ドルに設定したが、この僅か725円が高すぎた為に他の大手ケーブルテレビ業者(DirecTVなど)と契約できず、最終的に地元エリアの32%のみをカバーするタイムワーナー・ケーブルでしかドジャースの試合が放映されない事態になった。その後、月額視聴料を1ドル以上下げて再度オファーを行うも、それでも契約できず、現在も地元の2/3がドジャースの試合中継を視聴できない状況となっている。
 故に、本来なら20万前後を見込める筈の視聴家庭数は10万前後で推移。代わりに同じロスに本拠を置くエンゼルスの視聴家庭数が増加するなど、大きな問題になっている。


MLB機構側の放映権契約

 以上で述べた、MLBの各球団がローカル局と個別に結ぶ放映権契約とは別に、MLB機構はメジャー局(全国放送)との契約を結び、30球団に分配する。
 年額平均で言えば、FOXが7.3億ドル(△2億)でESPNが5.5億ドル(▼1.5億)、TBS(ターナー)が4.7億ドル(△1.5億)と、メイン局3社だけ17.6億ドル。その他、Appleの0.85億ドルとNBCの0.3億ドルが加わる。但し、カッコ内は前契約。
 一方で、DAZNが1億(2019-21)、Facebookが0.3億とされたが、今はやってないみたいです。
 因みに、これらの数字は米メディアでもバラツキがあり、何を信用していいやら?ですが、MLBの放映権同様に、不透明であるのは確かですね。しかし、メイン局もローカル局同様に、渋々と契約に応じてるのが実情だろう。
 事実、FOXはヤンキースのローカルTV局であるYESネットワークを買い取った経緯があるし、WBCも大谷人気を目当てに日本へ高額な放映権を吹っかけていた。
 ただ、NHKがメジャーに支払う放映権料(殆どがエンゼルス戦)は1試合2億とも噂されたが、実際には年間で10〜20億円程らしい。
 つまり、額面上の約1/20程になり、私の予想がほぼ的中した形となる。


最後に

 MLBの放映権料(2019)に関しては、多くのチームが年間5000万ドルから1億ドル弱で、総額の内訳は不透明な点が多い。
 そんな放映権バブルで膨らんだ大型契約の殆どが、今となっては赤字だと言うから、如何にMLBが(ローカル局と同様に)興行的に行き詰まり、不人気なのかが理解できる。
 因みに、今年オフに球団売却が噂されるエンゼルスだが、ここに来て売却を取り下げた。つまり、大谷を高値でトレードに出し、その資金で球団を立て直すつもりだろう。が、そんな単純でない事は明らかだ。
 事実、大谷は故障し、FAの市場価値は下落しつつある。右肘や脇腹の回復次第では、前契約でのエンゼルス残留という最悪?の結果になる。
 そのエンゼルスだが、2006年にFOXSportsWestと結んだ10年5億ドル(年平均5000万ドル)の契約を、2010年にオプトアウトを用いて契約解除し、新たに20年総額30億ドル(年平均1億5000万ドル)の大型契約を同ローカル局と結んだ。が、株式25%も含めての数字で、実際の年平均放映権料は8000万ドル程とされる。

 この様に、不透明な部分が多いMLBの放映権料だが、「その1」でも書いたように、最悪、MLBの各球団がネット局を買取り、更にストリーミングで試合中継を流すとなったら、球団が独自で勝手に作ったコンテンツを誰が見るのだろうか?
 ヤンキースやドジャースやボストンなど、裕福な球団なら可能かもだが、MLBの多くはローカル局と同様に経営難に陥っている。更に、株式保有と言うが、唯でさえ赤字で追い詰められたローカル局の株を保有しても、持ち腐れなのは目に見えている。

 そんなMLBは大谷に頼りきりで、その大谷は1球1球声を張り上げ、力投し、高校生レベルの160Kにメジャーはキリキリ舞いである。
 バカの一つ覚えで振り上げた打球は、金属バットで弾いたピンポン玉の様によく飛ぶし、芯に当たらなくとも上段にまで吹っ飛んでいく。
 ラインナップを見ても、大半が中南米の選手で占められ、まるで集団移民の失業対策を思わせる。故に、野球しか出来ない金ジャラの金持ちらが一時期だが、衰退したメジャーを牽引する。
 クロスプレーも廃止になり、胸元を掠める球は危険球で一発退場。緊迫感も乱闘もスピードも運動量も乏しく、ダラダラと試合時間だけが長い。
 こうした見せ場のない娯楽に金を出して見るバ◯は何処にもいない筈だが、実際に球場に来てる者の多くは、子供を無理に引き連れた中高齢者層である。

 今、エンゼルスと大阪桐蔭を戦わせたら、どちらが勝つだろう?
 かつて、”PL学園よりも弱い”とイチローに揶揄されたマリナーズだが、確かにそのマリナーズは今も昔も弱いままだ。そんなお荷物球団がMLBには半数以上存在する。
 メジャーの苦しい台所を支えてきた放映権バブルだが、私が思う以上に深刻で、意外にもあっさりと崩壊するかもしれない。いや、今のメジャーなら一度死滅した方が野球ファンの為でもある。少なくとも、ダラダラと延命に拘るよりもずっと効率的で健康的ある。

 まるで、今回の右肘のケガであっさりと大谷の野球人生が失われるかのように・・・
 そう、終りというのは絶頂の時にいきなりやってくる。桜の様に潔く散るのも日本人の美学であり、栄枯盛衰の掟でもある。



2 コメント

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夢の160K (tomas)
2023-09-23 09:47:16
大谷選手には辛口な記事が続いてますが
無事手術も終わったみたいで
今回は2度目という事で人工靭帯による補強らしいです。
順調にいけば打つ方は来年で二刀流は再来年で可能だとか
でも160Kは夢のまた夢で、150Kがいいとこでしょうか。
そうなれば、変化球投手での二刀流の復活となるのですね。
tomasさん (象が転んだ)
2023-09-23 11:53:48
少し編集し直しました。
どうも、ここ数年の大谷は天狗になってるみたいで、気持ち悪過ぎに思うんですね。
まるで出来過ぎのマネキンが野球してるみたいで・・
しかし、今回のケガはさすがの大谷も落ち込んでたみたいで、人間的に成長するのが楽しみです。

来シーズン以降、どうなるかは不透明ですが、投手としては無理でしょうね。
変化球投手に成り下がった大谷を誰もが見たくないでしょうから。
という事で、出樹が無事に終わって何よりです。

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