ウクライナは”兵器の実験場”になっているとしたら・・・
世界の軍需産業のトップ5に顔を並べる”戦争屋”のアメリカは、ひょっとしたらプーチンの侵攻を望んでいたのだろうか。
因みに、(SIPRIによる2022年末の報告によると)上位100社の総売上高のほぼ1/3を占める上位5社だが、全て米国の企業である。
ロッキード、レイセオン、ボーイング、グラマン、ジェネラルダイナミクス。 これら5社の売上は1920億ドル(約26兆円)だ。
続いて、上位6~10位の5社は、BAE(英)、Norinco(中国)、AVIC(中国)、CASC(中国)、CETC(中国)で、この5社で約1020億ドル(約14兆円)の売上があった。
一方でロシアは経済制裁の影響からか、トップ100には6社が含まれ、売上高は合計でわずか0.4%増の178億ドル(約2兆4000億円)に留まった(上図参照)。
戦争や紛争が絶えず勃発し、その危険性に脅かされる地域は自国で軍需を調達するか、他国から武器を買うか供与してもらうかしか、隣国の侵略から自国を守る手立てはない様にも思える。
我々はロシア=ウクライナ戦争をウクライナの、いや西側の側面から眺め続けている。しかし、軍需産業の利得という点で見れば、むしろ(アメリカにとってはだが)大歓迎と言えるのではないだろうか。
そこで、今日は”軍需から見た”戦争と平和について述べたいと思う。
プーチンは21日の年度末教書演説で、2010年にアメリカと締結した新戦略兵器削減条約を停止させると発表した上で、”戦争を始めたのは向こう(西側)だ。私たちはそれを食い止める為に武力を使っている”とも言い放った。
西側寄りのファクトチェックでは色々と囁かれてはいる。確かに、プーチンの主張の多くは明らかに間違ってはいる。しかし、”戦争を始めたのは・・”との主張は、西側が言う”事実と異なる”とは微妙に異なる様にも聞こえた。
つまり、今回のロシア=ウクライナ戦争は明らかにプーチンが仕掛けた戦争だが、アメリカが巧みに引き出した策略と言えなくもない。というのも、アメリカの軍需産業はこの戦争のお陰で大きく潤ってるからだ。
軍事大国のトップ2が(間接的にではあるが)激突した形となった。が、朝鮮戦争やベトナム戦争との違いは、西側の軍隊を直接展開していない所だけである。
これに対し、バイデン大統領は”西側の更なる結束”を再度アピールしたが、思った以上に西側の結束は固まってはいない。一方で、(イランだけでなく)中国やインドやブラジルという大国を味方につけつつあるプーチンだが、更に彼らが結束すれば、プーチンにとって西側は驚異とは言えなくなる。つまり、狂った独裁者が西側の正義を打ち砕く可能性もなくはない。
中立的に眺めた筈だが、所詮は主観的で恣意的な私の青写真に過ぎない。
戦争ビジネスとアメリカ
米国の軍需産業が儲かる限り、ウクライナ戦争は終わらない・・・
ロシアの国際問題専門家のドミトリー・トレーニン氏は、”双方に決め手がなく、今後数年続く事を覚悟した方がいい”と予測した。
というのも、ロシア=ウクライナ戦争のお陰で、”米軍需産業がボロ儲けしてる”というのだ。
事実、世界最大の軍需企業ロッキード・マーチン社(米)の株価は昨年12月、496ドルと史上最高値を付けた。ミサイルや電子戦装備で知られる世界2位のレイセオン・テクノロジーズ(米)の株価も最高値水準で推移した。
今年の米国株は全般に低迷したが、軍需産業はプーチンのウクライナ侵攻で”わが世の春”を謳歌しているのだ。
一方で、米議会は昨年12月、過去最大の8580億ドル(約117兆円)に上る23年度国防予算案を採択。バイデン政権が要求した額に450億ドルを上乗せし、日本の23年度当初予算案の一般会計総額(114兆円)を上回った。
以下、「ロッキード社の株価は史上最高値に…」より一部抜粋です。
米国のウクライナ向け軍事援助はまだ3兆円に達しておらず、軍需産業は兵器の増産と売り込みに躍起だ。
今年の世界の国防予算総額は推定2兆3000億ドル(314兆円)と空前の規模に上る見通しだ。こうした安全保障上の危機拡大で、日独などはGDP比2%への国防費増額を決め、ほぼ全ての国が今後国防予算を増額する。
故に、アメリカの軍需産業の出番が拡大し、ドル箱となる。
かつてベトナム戦争が予想外に長期化したのは、軍需産業が議会や国防総省に兵器の開発や売り込みでロビー活動を行った要素も見逃せない。
冷戦終結後の1990年代は国防予算激減により、多くの軍需企業が倒産や合併を余儀なくされたが、今でも戦争は軍需産業発展のバロメーターであり続ける。
米国の軍事専門家のダン・グレーザー氏は、”(米軍需産業にとって)ウクライナ戦争は都合の良いタイミングで始まった。昨年夏のアフガニスタンからの全面撤退で、各企業は国防予算減や収益悪化を覚悟していた。戦争で一部の人が大金を手にする構図は昔も今も変わらない”と指摘する。
事実、ウクライナ戦線で大活躍した携行型対戦車ミサイル<ジャベリン>は、ロッキードとレイセオンとの共同で開発・生産した。
ウクライナ人が、この命中率94%を誇る”聖ジャベリン”と呼ぶ救世主のお陰で、これまでにロシア軍戦車1000両以上、装甲車2000両以上を破壊した。ロッキード社はジャベリンの年間生産量を従来の2000発から4000発以上に倍増する事を決めた。
戦場でもう一つのゲームチェンジャーとなった射程80kmの高軌道ロケット砲システム<ハイマース>は、ロッキード社が開発・製造し、4月から供与を開始。侵攻したロシア軍に大打撃を与えた。
ロッキードは国防総省との間で、新たに6000万ドルを投じ、ハイマースの増産計画をまとめ、更に同じ発射装置から撃てる射程300kmの戦術ミサイル<ATACMS>の売り込みも図る。
軍需供与と政治献金と武器の展示会
業界3位のボーイング社(米)の株価は冴えないが、”米国防総省は射程150キロの地上発射精密ロケットシステム<GLSDB>をウクライナに提供するというボーイング社の提案を検討中”とロイターが昨年11月に報道すると、株価は上昇した。
同システムは、ボーイングがスウェーデンの防衛大手サーブと共同生産し、精度はハイマースを上回る。射程150kmなら、ウクライナに侵攻したロシア軍の後方軍事目標を攻撃でき、来春からウクライナ軍への提供が始まる見通しだ。
この様に、軍需企業は予算編成権限を持つ議会の防衛族を通じて新型兵器の売り込みを図る。ベトナム戦争時も同じだったが、議員は資金豊富な軍需産業の政治献金に弱い。
故に、米政府がウクライナに停戦を強く求めず、ロシアとの対話にも消極的な背景には、軍需産業の思惑が透けて見える。
更にウクライナ戦線には、新型地対空ミサイル・スティンガー、自爆用無人機スイッチブレード、ドローンを撃ち落とすIRSロケット・バンパイアなどの米国製新型兵器も投入されつつある。
欧米メディアによれば、NATO特殊部隊や情報工作員と共に、西側軍需企業のスタッフもウクライナ入りし、現地で兵器の能力などをチェック。”ウクライナは新型兵器の貴重なショーケース”となってるのが現状だ。
兵器の性能は(スペック上の数値ではなく)実際の戦場でどの程度使えるかは実戦で判断するしかない。今や”ウクライナ戦争は兵器の能力や効果を知る貴重な実験場になった”(西側軍事筋)。
確かに、欧米兵器の”人体実験”に晒されるロシア軍兵士は溜まったもんではないし、(ウクライナ軍の士気が上がり)ロシア軍の士気が下がるのも当然ではある。
以上、PRESIDENTonlineからでした。
”新しい平和”を支える未来戦略
一方で、「サピエンス全史」で有名なハラリ氏だが、”21世紀の最初の20年ほどは、人類史上で最も平和な時代であり、戦争の遂行は経済的にも地政学的にも殆ど理に適わなくなった”と語る。
つまり、戦争ではもはや儲からなくなったと。
しかし、プーチンの暴挙はそうした新たなる常識をも覆してしまった。
戦争は悲惨な出来事であり、避けようのない自然災害ではない。が、戦争は人間の選択の結果であり、1945年以降、大国間の戦争は一つも起こってないし、ある国家が他国に征服され壊滅するという事例も全くない。
以下「私たちは新たな戦争の時代に向かっているのか?」より一部抜粋です。
内戦や反乱やテロリズムを含め、ここ数十年間に戦争で亡くなった人は、自殺や交通事故や肥満関連の疾患で亡くなった人よりもはるかに少ない。2019年には、武力紛争や警官による発砲で約7万人が命を落としたのに対し、自殺した人は約70万人、交通事故の犠牲者は約130万人、糖尿病による死者は約150万人にのぼった。
もっとも、平和は単なる数値の問題に留まらない。過去数十年間で一番重要な変化は、心理的なものかもしれない。
何千年にも渡り、平和は”戦争の一時的途絶”を意味した。つまり、平和は(弱く脆く)いつ崩れてもおかしくない。故に、政治も経済も文化も全て、戦争を絶えず予期して営まれてきた。
ところが、20世紀末から21世紀初頭にかけて”平和”という言葉の意味が変化した。つまり、”戦争の一時的途絶”に過ぎなかった<古い平和>から、”戦争勃発のありえなさ”を意味する<新しい平和>である。
ここにても数字は正直で、この新しい平和は古代帝国や国家の支出を振り返ればすぐに理解できる。
近年まで、あらゆる帝国や王国や共和国の支出で第1位を占めてたのが軍事費だ。
各国政府は医療や教育には殆どお金を使わなかった。資金の大半が兵士の給料や防壁の建設や軍艦の建造などに回された。
ローマ帝国では支出の約50~75%が軍隊に、中国の宋(960~1279)では約8割、17世紀後半のオスマン帝国の場合は約6割だった。1685年~1813年にかけ、イギリス政府の支出に占める軍事費の割合は平均で75%に達した。
20世紀の大規模な戦争では、民主主義国家も全体主義政権も軍需を調達する為に、決まって負債を抱え込んだ。つまり、近隣の国が侵略・強奪・破壊・併合する危険がある時は、軍備に予算を注ぎ込むのは当然な事でもあった。
しかし、<新しい平和>の時代の国家予算を見れば、大きな希望が湧いてくる。
21世紀初めの政府の軍事支出は平均で僅かに6.5%で、最もな軍需大国アメリカでさえ、自国の優位性を維持する為に約11%しか使わなかった。
<新しい平和>の時代の民は、もはや外部からの侵略を恐れずに暮らし、各国政府は軍事よりも医療や福祉や教育に遥かに多くを出資できた。例えば、平均の医療歳出は政府予算の10.5%で、国防予算の約1.6倍。今日、”医療予算が軍事予算をしのぐ”と聞いた所で、何も驚かないだろう。
しかし、<新しい平和>を当り前のものと考え、顧みる事がなければ、程なくその平和を失う事になる・・・(朝日新聞デジタル)
最後に
長くなったので、ここまでにしますが。如何に戦争が一部の人間だけが儲かり続ける理不尽なビジネスであり、如何に平和というものが、ごく一部の狂った独裁者によっていとも簡単に潰されるのかが理解できる。
つまり、戦争は平和を生み出し、平和は戦争を生み出す。そうした不条理な周期の中で我々人類は生き延びてきた。
しかし、ハラリ氏が説いた<新しい平和>も結局は長くは続かなかった。
”人類がその愚かさを過小評価する”限り、戦争も平和も最悪の結果に帰着する。
戦争と平和を完全に切り離す為にも、もう一度人類の愚かさを真剣に考察する必要がある。そう思わせてくれる「21 Lessons」でもある。
「サピエンス全史」で人類の”過去”を、「ホモ・デウス」で人類の”未来”を描いたハラリ氏だが、「21 Lessons」では人類の”現在”を問うた。
つまり、人類は地球上の主役ではないし、あなたは世界の中心ではない。一方で、映画は未来ではないし、人生は物語でもない。
人は長らく神に仕えてきたが、今や神が人に仕える番だ。人は思ってる程に多くを知らないし、正義というのは今や時代遅れの妄想でもある。
故に、これからは自らの負の側面をひたすら観察する必要がある。
世界にはたった一つの文明(Civilization)しかないし、文化(Culture)にも良し悪しがあるかもしれない。
人類にしか作れないとされた文明は意外にも脆く、人類を支え続けてきた文化は意外にも当てにならなかった。
つまり、人類が長い歴史を掛けて勝ち誇り獲得してきた文明(ハード)や文化(ソフト)は、たった1人の狂人によって簡単に潰される。
<新しい平和>が軍需というハードと狂気というソフトで潰されてしまった今、我々人類は何を頼りに生きていけばいいのだろうか。
どうやら思考をヴァージョンアップしなければならないようです。
習近平がプーチンのように愚かでないことを願うばかりです。
同時にロシアが戦争に負けて「やはり戦争は理に合わない」と世界に知らしめる必要があるとも思います。
人類史というと話が大きくなりますが、現在はその岐路に来ている気がします。
「AIとロボットと再生エネルギーの時代」になれば人類は種としてまだ生き残れる。
一方、「核戦争」になれば、人類はアインシュタインが言った「石と棍棒で戦う時代」に後退してしまう。
さて人類はどちらの道を選ぶのでしょう?
言われる通り
プーチンは”石と棍棒で戦う時代”に舞い戻っても、勝つまで戦争を続ける気でいます。
一方でウクライナも引く筈がない。
結果、アメリカの軍需ビジネスはボロ儲け。
こうした両大国の時代遅れの力の論理に従えば、地球の表面は丸焦げとなり、人類だけが死滅するでしょうか。
仲介役を期待された筈の中国も軍需産業ではアメリカに次ぐナンバー2ですから、当てにならないかもですね。
ダラダラと続く戦争で米露両大国が疲弊し、インドやオーストラリアやカナダ、ブラジルといった新たな大国の時代とも思うんですが、彼らも大国の論理で争い続けるんでしょうか。
こう考えていくと、資源のある国って強かなんですかね。
の負のスパイラルを延々と繰り返す
出口のない世界
平和が欲しけりゃ
武器を買え
戦争で勝ちたけりゃ
武器を買え
つまり、戦争と平和と武器は
セットになっている
結局
これが人類の限界なのだろう
行き着く所はそこなんですよね。
武器こそが全てっていう、非常に危険な均衡状態。
大国の論理として、武器で隣国を脅し、領土を拡大し、どんどん強大化する。そして更に強力な武器が必要となる。
アメリカもロシアも中国も同じ様な事を繰り返してんですよ。
近い将来、インドやオーストラリアやブラジルらの新大国も同じ様な繰り返しになるんでしょうね。
平和が描く、全く出口の見えない人類の未来予想図です。