気付くと寝ていた。
先ほど感じた眩しさは、いつの間にか、夕暮れの朱色に変わってた。喉が渇いた。トイレに行きたかった。部屋を出るとドアが並んでいた。どのドアを開けたらいいのか、解らなかった。部屋に戻った。
「宰。」
奈美江の声がして、ドアが開いた。
「なみえさん。」
声が変だった。
「はい。」
「トイレどこ。」
「あ、隣です。こちら、こちらです。」
ヒロムはフラフラしながら立ち上がり、奈美江に支えられて、トイレに入った。用を足す間も奈美江はヒロムを支えた。部屋に戻ると、奈美江はペーパーバッグから、弁当を出した。ヒロムは奪い取るようにして、頬張った。奈美江は缶入りのお茶も買ってきていた。ゴクゴクと音を立てて、飲んだ。
「お加減は如何ですか。」
おまえがこの状態にしたんじゃないか
頭のどこかで、そう、叫んでいる部分があった。が、身体中から感じる脱力感がその叫びさえ意味のないものにした。腹がいっぱいになると眠くなった。フラッとすると奈美江の手がガシッという感じでヒロムを支え、うまく方向転換をさせながら、ヒロムの頭を膝の上にのせた。ヒロムは芯の入っていないぬいぐるみのように、されるがままに、横たわった。
「宰。わたくしがおりますからご安心下さい。」
優しい声だった。ヒロムの頭を頭髪をすくように奈美江が撫でた。心地良かった。
感覚が少し、普通に戻ったのか、身体から、自分の臭いではない臭いがしているのに気付いた。臭いは頭を刺激した。
一方、奈美江はヒロムの身体から、オーディコロンの臭いと、路上生活の体臭が混ざったとても不気味な臭いを感じた。
「宰、近くに銭湯があるのですが、行かれますか。」
「セントウ。」
ヒロムの顔は何のことなのか解らず悩んでいるようだった。
「いえ、お風呂に入りにいきましょう。」
今の状態のヒロムでは独りで風呂に入ることなどできないと判断した。奈美江は路上生活の臭いが気になってしかたがなかった。アルコールまで使ったのに、ヒロムの身体にはまだ染み付いていた。昨日と同じように着替え、ヒロムを連れ出した。
先ほど感じた眩しさは、いつの間にか、夕暮れの朱色に変わってた。喉が渇いた。トイレに行きたかった。部屋を出るとドアが並んでいた。どのドアを開けたらいいのか、解らなかった。部屋に戻った。
「宰。」
奈美江の声がして、ドアが開いた。
「なみえさん。」
声が変だった。
「はい。」
「トイレどこ。」
「あ、隣です。こちら、こちらです。」
ヒロムはフラフラしながら立ち上がり、奈美江に支えられて、トイレに入った。用を足す間も奈美江はヒロムを支えた。部屋に戻ると、奈美江はペーパーバッグから、弁当を出した。ヒロムは奪い取るようにして、頬張った。奈美江は缶入りのお茶も買ってきていた。ゴクゴクと音を立てて、飲んだ。
「お加減は如何ですか。」
おまえがこの状態にしたんじゃないか
頭のどこかで、そう、叫んでいる部分があった。が、身体中から感じる脱力感がその叫びさえ意味のないものにした。腹がいっぱいになると眠くなった。フラッとすると奈美江の手がガシッという感じでヒロムを支え、うまく方向転換をさせながら、ヒロムの頭を膝の上にのせた。ヒロムは芯の入っていないぬいぐるみのように、されるがままに、横たわった。
「宰。わたくしがおりますからご安心下さい。」
優しい声だった。ヒロムの頭を頭髪をすくように奈美江が撫でた。心地良かった。
感覚が少し、普通に戻ったのか、身体から、自分の臭いではない臭いがしているのに気付いた。臭いは頭を刺激した。
一方、奈美江はヒロムの身体から、オーディコロンの臭いと、路上生活の体臭が混ざったとても不気味な臭いを感じた。
「宰、近くに銭湯があるのですが、行かれますか。」
「セントウ。」
ヒロムの顔は何のことなのか解らず悩んでいるようだった。
「いえ、お風呂に入りにいきましょう。」
今の状態のヒロムでは独りで風呂に入ることなどできないと判断した。奈美江は路上生活の臭いが気になってしかたがなかった。アルコールまで使ったのに、ヒロムの身体にはまだ染み付いていた。昨日と同じように着替え、ヒロムを連れ出した。