「命の水」は基本的に希釈することを前提としていた。希釈の割合によって、効果が違っていた。
あの日、二つのビンには違った割合の「命の水」が入っていた。一つは非常に濃いもので、ある意味、危険なものだった。もう一つは、入信初期に使用するかなり薄いものだった。あの状況で意図的にヒロムに濃いほうを飲ませることは不可能だった。奈美江がその危険にさらされる可能性もあった。
もし、あの時・・・・・。
しかし、奈美江は自分が危険なほうを飲むことなど、あり得ないと確信していた。それが、彼女の信仰心なのだ。事実、ヒロムが「命の水」の餌食になった。
ヒロムが二度目の眠りから覚めるまで、奈美江は手を握り続けた。強制的に目覚めさせたのに、また、眠りに入るのを、ただ、見つめていた。ヒロムが目覚めると、と言っても、かなりのダメージを引きずりながらではあるが、その身体を支え、バスルームに運び、また、丁寧に身体を洗うのだった。かつて,ヒトミがしたように。
自分の身体も清めると、動きの鈍いヒロムを導くように自身を身体の中に取り込んだ。奈美江が全ての分身を飲み込むと、ヒロムは再び、眠りの中に引き込まれた。
その日の奈美江は待った。
はっきりとした意識ではないが、動けるようになったヒロムに服を着せ、タクシーを拾った。その四畳半に戻ると、布団を敷き、ヒロムを寝かせた。酒屋に走り、自動販売機でビールを買って、ヒロムの寝顔を見ながら、独りで飲んだ。
深夜にちかい頃だった。奈美江はスーツに着替え、今度は鍵をかけて、部屋を出た。
瞼から光が突き刺した。
ヒロムは頭を貫通するような眩しさに襲われ、目覚めた。意識も、記憶も、はっきりとした道筋が立たなかった。目の前の折りたたみ式の小さなテーブルの足がみょうに大きく見えた。
ここが何処なのか。
断片的な記憶を総合的に結びつけることができなかった。考えることさえ、まともにできなかった。ターブルの上に昨日の弁当があった。空腹、空腹を感じた。鮭とのりの弁当、ちくわのてんぷら、手づかみで口の中に入れた。喉に詰まりそうになった。テーブルの上のビールの空き缶。それを持つと立ち上がり、水道に行こうとした。頭がグワーンと回った。壁に手を付き、やっとの思いで水道の蛇口にたどり着いた。蛇口をひねり、口をつけて水を飲んだ。まともに立っていられなかった。何とか、空き缶に水を満たし、テーブルに戻った。
残りの弁当を・・・・・。
次に、意識と、記憶が感知できた時、弁当は空っぽになっていた。いつ食べ終わったのか、記憶がなかった。
あの日、二つのビンには違った割合の「命の水」が入っていた。一つは非常に濃いもので、ある意味、危険なものだった。もう一つは、入信初期に使用するかなり薄いものだった。あの状況で意図的にヒロムに濃いほうを飲ませることは不可能だった。奈美江がその危険にさらされる可能性もあった。
もし、あの時・・・・・。
しかし、奈美江は自分が危険なほうを飲むことなど、あり得ないと確信していた。それが、彼女の信仰心なのだ。事実、ヒロムが「命の水」の餌食になった。
ヒロムが二度目の眠りから覚めるまで、奈美江は手を握り続けた。強制的に目覚めさせたのに、また、眠りに入るのを、ただ、見つめていた。ヒロムが目覚めると、と言っても、かなりのダメージを引きずりながらではあるが、その身体を支え、バスルームに運び、また、丁寧に身体を洗うのだった。かつて,ヒトミがしたように。
自分の身体も清めると、動きの鈍いヒロムを導くように自身を身体の中に取り込んだ。奈美江が全ての分身を飲み込むと、ヒロムは再び、眠りの中に引き込まれた。
その日の奈美江は待った。
はっきりとした意識ではないが、動けるようになったヒロムに服を着せ、タクシーを拾った。その四畳半に戻ると、布団を敷き、ヒロムを寝かせた。酒屋に走り、自動販売機でビールを買って、ヒロムの寝顔を見ながら、独りで飲んだ。
深夜にちかい頃だった。奈美江はスーツに着替え、今度は鍵をかけて、部屋を出た。
瞼から光が突き刺した。
ヒロムは頭を貫通するような眩しさに襲われ、目覚めた。意識も、記憶も、はっきりとした道筋が立たなかった。目の前の折りたたみ式の小さなテーブルの足がみょうに大きく見えた。
ここが何処なのか。
断片的な記憶を総合的に結びつけることができなかった。考えることさえ、まともにできなかった。ターブルの上に昨日の弁当があった。空腹、空腹を感じた。鮭とのりの弁当、ちくわのてんぷら、手づかみで口の中に入れた。喉に詰まりそうになった。テーブルの上のビールの空き缶。それを持つと立ち上がり、水道に行こうとした。頭がグワーンと回った。壁に手を付き、やっとの思いで水道の蛇口にたどり着いた。蛇口をひねり、口をつけて水を飲んだ。まともに立っていられなかった。何とか、空き缶に水を満たし、テーブルに戻った。
残りの弁当を・・・・・。
次に、意識と、記憶が感知できた時、弁当は空っぽになっていた。いつ食べ終わったのか、記憶がなかった。