前日、マサミが衣装を持ってきた。仁にどんな格好をさせるか。ヒロムは仁の肉体の美しさが解るような形を望んだ。しかし、背中の絵が解るのはどうか。何度もマサミに注文をつけていたが、マサミはフンフンと肯くだけだった。ところがマサミは六人組と常連の約20人分の衣装をもって来た。白い薄での布で首元にVの字が入ったTシャツのような上着とステテコのようなズボン、着てみると濃い色の肌着は完全に透けて見えた。照明が背後から当たると体の線が完全に透ける、ヒロムは納得したのかどうか。皆で着てみるとユニフォームはそれだけで力を発揮しだすものだ。統一感が生まれ、一体感がさらに増すのだった。
時間は簡単に過ぎていく。ヒロムの構成には音がなかった。だが、その構成表には仁の到着から、会員の誘導、「許し」のサイズ、明かりの変化もろもろ、事細かく記載されていた。中には、ヒロムの言葉の詳細まで書かれていて、ヒデオは常任や常連に見せてもいいものか、一瞬考えた。それでも、ヒロムの意思がその中からうかがい知れることはマイナスではないと判断してその日のリハーサルは始まった。始めてみると意外と人が必要なことがわかった。演劇部は突然うなりだした。ヒロムに直接はいいにくいのか、ヒデオに耳打ちした。確かに、ヒロムの構成を支えるためには裏に回る人間の数が必要だった。人割りから始めないとできない。演劇部は唸った。3日前の夜はすぐに開け皆は解散した。
当然、不眠不休の状態で僕らは準備に専念した。何人かは脱落もし、また、別の誰かが召集された。2日前、常連の一人の形のいい胸のナオンが倒れた。アキコがすかさず駆け寄り、栄養材を注射した。暫く休むとナオンは復活していた。12時過ぎに仁がきた。マサミも来た。ヒデオはその日から親方に仕事を割ってもらい休みを取っていた。人割りもできていたので、各自が部署に付きリハーサルが始まった。ヒデオは音のことをヒロムに話した。布で覆われていたピアノの鍵盤の部分は、マサミのために開かれていた。ヒロムは音にはあまり興味がないようだった。ヒデオの導きでマサミはピアノの前に行き、鍵盤に触れた。ヒロムは体でリズムを取っているようだった。しかし、その動きはぎこちなく、ヒデオはヒロムが音について何も言わない理由を理解した。演劇部とヒデオとマサルと常連の一人がヒロムの構成にあわせた音の雰囲気をマサミに伝えた。マサミは頭を抱えた。マサミには曲名とか、作曲家名はあまりピンと来ないようだった。部分部分に分け進行の段取りを追いながら、演劇部が中心となってリハーサルを始めた。マサミには進行に合わせて、感じるままに奏でて欲しいと演劇部はいった。ヒデオは不思議に感じていた。必要な人間が必要な場所に集まる、この偶然は必然なのではないか。言葉で考えたわけではないがそう感じていた。流れの中で仁の登場の場面になった。仁は恥ずかしそうにしていた。そんな仁を見るのも皆初めてだった。だが、仁がヒロムの指示に従ってステージ中央に座り、ヒロムが「集中」と合図を出すと、会場の空気は一気に変わり、仁の呼吸に合わせて立っている者も座っているものも「同調」に入ってしまうのだった。ヒデオは「同調」に向かう自分を止めることはできなかった。演劇部も同様だった。「呼吸」の静まるのを待って、ヒロムが演劇部を呼んで耳打ちした。ただ、この瞬間、ヒデオの不安はなくなった。仁ならできる、そう確信した。マサミのピアノを考えると中央舞台に誰を立たせるかが問題になった。けれど、初めての「神聖な儀式」にはマサミ以外は考えられなかった。呼吸までの時間を「音」を中心にして「呼吸」からは仁に任せようということになった。
当然、不眠不休の状態で僕らは準備に専念した。何人かは脱落もし、また、別の誰かが召集された。2日前、常連の一人の形のいい胸のナオンが倒れた。アキコがすかさず駆け寄り、栄養材を注射した。暫く休むとナオンは復活していた。12時過ぎに仁がきた。マサミも来た。ヒデオはその日から親方に仕事を割ってもらい休みを取っていた。人割りもできていたので、各自が部署に付きリハーサルが始まった。ヒデオは音のことをヒロムに話した。布で覆われていたピアノの鍵盤の部分は、マサミのために開かれていた。ヒロムは音にはあまり興味がないようだった。ヒデオの導きでマサミはピアノの前に行き、鍵盤に触れた。ヒロムは体でリズムを取っているようだった。しかし、その動きはぎこちなく、ヒデオはヒロムが音について何も言わない理由を理解した。演劇部とヒデオとマサルと常連の一人がヒロムの構成にあわせた音の雰囲気をマサミに伝えた。マサミは頭を抱えた。マサミには曲名とか、作曲家名はあまりピンと来ないようだった。部分部分に分け進行の段取りを追いながら、演劇部が中心となってリハーサルを始めた。マサミには進行に合わせて、感じるままに奏でて欲しいと演劇部はいった。ヒデオは不思議に感じていた。必要な人間が必要な場所に集まる、この偶然は必然なのではないか。言葉で考えたわけではないがそう感じていた。流れの中で仁の登場の場面になった。仁は恥ずかしそうにしていた。そんな仁を見るのも皆初めてだった。だが、仁がヒロムの指示に従ってステージ中央に座り、ヒロムが「集中」と合図を出すと、会場の空気は一気に変わり、仁の呼吸に合わせて立っている者も座っているものも「同調」に入ってしまうのだった。ヒデオは「同調」に向かう自分を止めることはできなかった。演劇部も同様だった。「呼吸」の静まるのを待って、ヒロムが演劇部を呼んで耳打ちした。ただ、この瞬間、ヒデオの不安はなくなった。仁ならできる、そう確信した。マサミのピアノを考えると中央舞台に誰を立たせるかが問題になった。けれど、初めての「神聖な儀式」にはマサミ以外は考えられなかった。呼吸までの時間を「音」を中心にして「呼吸」からは仁に任せようということになった。