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ネタバレ「火花」又吉直樹 感想 

2015-06-04 | 小説・漫画他

雑誌の文学界に、又吉さんの「火花」という初の小説が掲載されたと知って、すぐ図書館にリクエストしたものの、その時点で結構な待ち順番。
やっと最近回って来たのですが、その数か月の間に、単行本が出てベストセラーになり、文学賞にノミネートされたとか、色々話題になって、びっくり・・。

主人公は、又吉本人とかぶる処のある、お笑い芸人の徳永。そしてお笑いについてストイックな考えを貫き通している先輩の神谷さん。
徳永は熱海の花火大会の営業で出会った神谷さんに惹かれ、弟子になる。この2人の会話が、結構哲学的な事を言っていたり、深い事が多くて、私のこの頭では、恥ずかしながら、???ってなってしまう時もあって、又吉って頭良いんだなぁ・・なんて思う事が本を読みながら、何度もありました。
昔、劇団ひとりの書いた「陰日向に咲く」を読んだときは、誰でもが解る簡単な言葉で読みやすく面白いお話を書いた、って印象だったけど、こちらの「火花」は、そういう点で、ちょっと敷居が高いかなー。

芸人の世界というのは、必ず先輩が後輩にお酒や食事をおごる、という決まりがあって、徳永は神谷さんと話をするのが好きだし、一緒にいたいのだが、会うとお金を使わせてしまって心苦しかったりする。お腹がすいているのに、すいてないと嘘を言ったりする。
神谷さんには、恋人ではないものの優しい女性真樹さんの家に居候していて、2人でひとしきり飲んだ後、凄い長い距離を歩いて、アパートに転がり込む、という事もよくやっていた。その後、徳永は段々売れて行く様になるが、神谷さんは相変わらずで、借金がふくれ上がって、その後行方不明になってしまう。

★以下ネタバレ 白文字で書いています★
真樹は、キャバクラで働いていて(ヒモですわ)、そこで知り合った男性と生きていくため、先輩は出て行くことになる。それから10年位経ったあと、徳永は小さな男の子と一緒に幸せそうに歩いている彼女を見かけた。
漫才ブームに乗って、少しは面白い芸も出来る様になったと思っていたある日、神谷さんと同棲している由貴さんのお家に遊びに行ったら、徳永のスパークスの漫才がTVで流れて来た。由貴さんは一杯笑ってくれたが、先輩は黙って一点を見つめるのみだったので、「ダメですかね」と言った徳永に「せやな、もっと徳永の好きな様に、面白いことやったったらいいねん」と言われてしまう。「出来ないんですよ」と言ったのち、血が登って、つい色々言ってしまった極め付けが、「模倣ですやん」。今日の神谷さんが、自分とそっくりな髪型とファッションをしていることに対して。
先輩は、そもそもお笑いに対してだけ、彼なりのこだわりがあり、それ以外の事(ファッション)には無頓着な人なのだった。しかし、風呂場に行き、はさみでガタガタに髪を切るのだった。
その後、仕事はゆるやかに減って来て、徳永の長年一緒だった相方が、結婚し子供が出来るので、お笑いを辞めることにしたという。
最後のライブに先輩も来てくれて、飲みながら、スパークスのお笑いについて、とても褒めてくれたのだった。
その場で先輩が言う言葉が、とても良かった。72pageの概要は、標準語になっちゃってますが、だいたいこんな感じ
「漫才は一人では出来ない。周りに凄いやつが一杯いたから、そいつらがやってないこととか、そいつらの続きとかを考えてこれた。同世代で売れるのは一握りかもしれないけれど、でも周りと比較されて独自のものを生み出したり、淘汰されたりする。だから面白い。でも淘汰されたやつらの存在って絶対無駄じゃない。一組だけしかいなかったら、絶対面白くなってないと思う。」
これはお笑いに限らず、歌手とかの世界でも何の世界でも、そうじゃないかな。同業者や周りの人に対する愛があふれていて、とても良い文だなーと思いました。
 その後、徳永も居酒屋をかけもちしたり、不動産やさんなど、普通の仕事をするようになる。
そんなある日、久しぶりに先輩から電話がかかって来て、会ってみると、先輩は、巨乳になっていた・・・。うぬぬ・・・。先輩の笑いのツボや感覚が・・。
最後は、先輩と冬に熱海に泊りがけで行く。出合った時と同じに花火があがっている。スポンサーのついている豪華な花火の次に、プロポーズの言葉の後に地味な花火が上がる。しかし、その花火の後、割れるような大勢の大きな拍手が響くのだった。先輩は「これが、人間やで」とつぶやくのだった。
その後、先輩はレンタルショップで、借りたボブマーリーを聞き、胸を揺らしながら、漫才のネタを考え、徳永は神谷ノートを綴り続けるのだった。
以上

貧乏だった徳永のお姉ちゃんが、子供の頃、エレクトーン教室に通っていて、電源が入らずにアタフタしていて・・・その後、お母さんがピアノを買った、というエピソードとかは、実話なんだろうか・・。ポツポツと、ぎゅっと胸が痛くなるような、貧乏や人情身溢れるエピソードがあって、そういう処は好きでした。
雨の日、傘を持ってっていいよ、って言ってくれた店主の優しさが嬉しくて、外に出たら、もう雨は止んでいたけれど、それでも先輩は傘をさして歩いて行ったとかね。

ネットで、神谷さんのモデルになった、又吉の先輩お笑い芸人の人のインタビュ―とかも読んだけれど、こんな風な事で話題になったら、ちょっと生き難いね・・・・。
今度は、お笑いとは無関係なお話を是非読んでみたいです。期待しています。

「火花」又吉直樹
内容(「BOOK」データベースより)
お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。人間存在の根本を見つめた真摯な筆致が感動を呼ぶ!「文學界」を史上初の大増刷に導いた話題作。

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7 コメント

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Unknown (はまかぜ)
2015-07-20 16:23:17
こんにちは
私はlatifaさんのレビューを読んで、この作品に興味を持ちました。
ほんとこの作品の哲学的文章を見ると、又吉さんって頭が良いなと思います。
ハイレベルな哲学会話は私も読んでいてすぐには理解できない部分がありました。

>今度は、お笑いとは無関係なお話を是非読んでみたいです。
これ、私も思いました!
文章表現力が高いですし、期待できるのではと思います。
新たな作品がどんなものになるのか楽しみですね
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はまかぜさん☆ (latifa)
2015-07-26 09:45:02
こんにちは、はまかぜさん
暑いですー!死にそうな暑さ・・・。
そちらは、いかがでしょうか・・台風も近づいているようです。

又吉さん、すごいですねー。
芥川賞を取るなんて、びっくり。

でも、又吉さんの文学的才能?というか、頭の良さを感じる小説でしたよね。
今後も楽しみです!
映画化もさっそく予定されているとか。

この小説のモデルになった先輩芸人さんにも、何か良いことがありますように・・・
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芸人の裏話 (iina)
2015-08-24 09:31:58
文藝春秋で芥川賞受賞作を読みました。

「火花」は、芸人の裏話ですね。
問題を起こす先輩タイプは、いるものです。本心か芸のこやしで演じているのか、わからぬ者もいますネ。師匠宅でウンチして
しこたま叱られたと放言するのは、果たしてどちらでしょうネ?

川柳川柳がその本人ですが、熱烈なファンも多く笑わせます。川柳が出た寄席に、後で出演した師匠が楽屋で何ごとかあった
らしく、枕で川柳のことを狂ってると怒ってました。 問題児といっても84才ですが、日頃から問題行動を起こす芸人のようです。
http://eplus.jp/sys/T1U14P002155985P0050001

さて、又吉直樹さんは、次は何を題材に選ぶのでしょうね。

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linaさん☆ (latifa)
2015-08-26 14:06:48
こんにちは、linaさん
コメントありがとうございます!

花火、凄く売れているみたいですね。
私もlinaさんと、同じく文藝春秋で読みました。
その時は、こんな賞を受賞するとは思っていませんでした。

芸人さんや、落語家の方とか、問題行動とかおこす人が結構いらっしゃるんですね。

次回作、どんな小説を書かれるのか、楽しみですね。プレッシャーも大きいから、又吉さん書くのが大変だ・・・。
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ごめんなさい!! (latifa)
2015-08-27 09:34:32
iinaさんの間違いでしたね。
今、気がつきました。
すいません・・・
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お久しぶりです (minori)
2016-10-21 15:39:40
latifaさん、
お久しぶりです!

ようやく話題のこの本が読めました。ネットフリックスのドラマでは林遣都くんが徳永を演じているようですね。又吉のイメージで読んでたけれど、ちょっと鋭い感じのする林君でもいいかも。

さすがに本を読みこんでいる又吉の作品なだけに言葉の紡ぎ方がやはり文章にこなれている印象でした。私の中では読みやすくあまりドロドロしていない村上春樹な感じでしたよ。結論はともかくなかなか面白かったと思います。まぁでも私はやっぱりもっとお気楽なミステリの方が好きなんですけどね…(元図書館員としては微妙なコメントですが笑)
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minoriさん☆ (latifa )
2016-10-21 16:37:04
こんにちは、minoriさん
おー!読まれましたか。
面白かったし、なかなか、文才がありますよね。

ドラマ版は、まだ見たことがないんですが、興味しんしんです。見たいなあー。
林遣都君が主役っていうのは、最初聞いたとき、又吉とは全然違うタイプだけど、でも結構合ってるのかも・・・って思いました。

>あまりドロドロしてない村上春樹(笑)
村上春樹、ノルウェイの森以前は、私は、かなりのファンだったんですよ。新刊が出れば買う、みたいな、全部読破していました。
そのころまでは、エロ方面は控えめだったような・・・ 

コンビニ人間っていう、芥川賞を取った作品も、なかなか面白いので、オススメです!
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