面白かったです。4つ★~4つ★半
主人公の津村(幸夫)は、売れっ子の小説家。
美容師の妻の夏子は大学時代の同級生で、売れない時代に食わしてくれた。
しかし、今では、すっかり2人の関係は冷え切っていた。
ある時妻が友人と旅行中、バス事故で死んでしまう。
その後、その死んだ妻の友人の夫が長距離ドライバーなため、幼い子供2人だけにしておくのが心配だということから、幸夫はベビーシッターの様な存在になり、どんどん子供たちに深い愛情を抱くように・・・。
西川さんが、この本を書く前に、友人宅に居候して、そこの子供と一緒に暮らした経験をされたとか。
うーん、この小説も(たぶん西川さんが経験したことも)、子供に関して、あまりマイナスというか、失望させられる事が無いっぽいんですよね・・。
ただ、可愛い、ひたすら愛情を注ぐ存在として書かれているような気がするんです。短い間数か月間だとそうなるのかな・・・。
子供って自分の両親じゃない、ちょこっとだけ距離のある大人と、とてもいい関係を築けると私は思うんですよ。
ある時期自分の家に居候していた、全く血縁はないお兄さんお姉さんとか、はたまた、血縁はあっても、親戚のおじちゃん・おばちゃんとか。
★以下ネタバレ 白文字で書いています★
最後の方で、理科の実験をしていた鏑木優子が、一家と急接近、自然と溶け込みそうな様子に、ちょっとやきもちと焦りを感じた事から、意地悪な事を言ってしまう主人公。
その後、陽一がデリヘルの女性と関係している時に、首を絞めてくれ、と言って、自殺したくなって、でもすんでのところで大丈夫だったものの、事件になる。
そこからの、自分が死んだら、子供たちはどう思うか?周りの人間がどう悲しむか?ということからの、「人生は他者だ」への流れが、うーむ!!とうなりました。読み終わった後、西川さんのインタビューなどを見たら、やっぱりそこのところがキモになっていると知って、やっぱりそうかーって。
そして、あんなに頑張っていたお兄ちゃんが受験に失敗したのが悲しかった。第一希望の学校じゃなきゃダメってことで、公立中学に行ったけど、うーん、うーん!!そして、その鏑木優子と大宮一家が、良い感じになりそう・・・っていうのも、なんだか少々微妙だな。
ラストは、避けていた妻の美容院仲間のいるお店に行ってマストロヤンニ風に髪を切ってもらった。そして、リビングの本棚の中段の一番よく見えるところに、以前、写真館で大宮家と一緒に写した、人生最初で最後になるであろう家族写真を、焼き増ししてもらって飾って、そこの横に、お店の従業員の人が持っていた、幸夫が良く知る妻の顔が写っている写真も置いた。そして、初めて妻を思い泣いた・・・。という処で終わっているのですが、まだまだ幸夫は若いしモテるんだから、これから誰かと恋愛関係になって、その女性が若かったなら、子供も出来たりもして、新たな家族を作るって事もおおいにあるんじゃないかな・・・なんて思いました。だから最初で最後の家族写真に・・という表現が、ツンと胸に来ることは無かったです。以上
全然お話は違うのですが、西川さんの師匠の是枝監督の撮った「そして父になる」で、リリーフランキーさんの下町家族のお家にお邪魔した、セレブなお家の息子と、この小説の大宮家に居候することになった幸夫が、なぜかシンクロする瞬間がありました。全然違うんだけどもね・・・。
西川さん曰く
書いている途中で”人生は他者だ”という言葉に行き着いて、私はこれを書こうとしていたんだな、この言葉が物語の軸になっていけばいいんだな、と気づきましたね。さらに、書き終えてから本の帯文を考える会議である人に、「若い人にとっては“人生は自分だ”なんです。そして、年齢を重ねるごとに“人生は自分だ”じゃなくて“他者だ”と気付いていくんですよ。」と言われてすごく腑に落ちました。この物語は、“人生は自分だ”と思っていた人間が、“人生は他者である”ということに気付いていく物語なんだな、と。
インタビュー記事
永い言い訳 西川美和 (2015/2/25)
(内容 あらすじ)「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」
長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。
悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。
西川美和さんの他の本の感想
きのうの神さま
映画にまつわるxについて
約2年後、映画も見ました。
映画版の感想
暖冬とはいえここ数日は少し寒くなりましたね。
直木賞選者にはキビシイ評価をされたようですが私は好みでした。
映画化されるとか、楽しみです♪
はい、ぼちぼち元気でやってます。
コメント、TBありがとうございました^^
そうそう、映画化されるとのことで、キャストが、たしかモッくんでしたっけ?
楽しみですね。