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混凝土に咲く花のように


海外旅行記や国内旅行記など、数々の旅行記を連載中!
        HP『我道旅人』で更新内容をまとめて掲載

諦め

2006年06月28日 | ベトナム旅行記
焦りと不安から、雨の泥道を全力で走り回る。
もうどこをどう向かっているのかも分からない。
ただ今の状況を打破しようと、それこそ言葉通り泥沼をもがいているだけだった。

ひどく泥酔しているため足元がおぼつかないのに、気持ちが体よりも先回りしてしまう。
心と体がひどくアンバランスな状態を引きずって、俺は一人空回りしっ放しだった。
このような状態だと、突発的なアクシデントにも対応することなどできなかった。
泥沼に足を滑らせ、激しく地面に叩きつけられてしまったのだ。

「もういいや…」

雨の中泥まみれになり、俺の感情は壊れそうだった。
もう合流することなど無理だ。
別にツアーに合流できなくても、冷静に考えればボートをチャーターすれば自力で帰ることなど簡単にできる。
どこに行ってしまったのか分からないのであれば、無理して合流することもないではないか。
走ることを止め、泥道をトボトボと歩き始めた。

実際はツアーからはぐれてしまい、合流できなかったら日本では行方不明者としてニュースに出ることになったかもしれない。

『本日ベトナムを旅行中の会社員コカさんが、メコン側の支流で行方不明になりました。一緒のツアーに参加していた日本人の話では、昼間から酷く泥酔していたとのことです。情報がまた入り次第またお伝えしたいと思います…』

この時はそんな考えは全くなかった。
お酒により、楽観的で自己中心的な考えしか頭には浮かばなかった。

絶望

2006年06月26日 | ベトナム旅行記
空から降り注ぐシャワーと髪から落ちる大粒の雫が俺の顔を濡らした。
すでに全身が雨でビショビショになっていた。

焦りは不安へと変わっていた。
この通りにいた人が知らないということは、ひょっとしてツアーのみんなはここを通っていないのだろうか。
一体どこへ向かったのだろう…
前へ行っていいものか、戻ったほうがいいものか迷いが生じた。

これだけ走っても合流できないのだ。
道を間違えたのかもしれない。

置き去り

2006年06月22日 | ベトナム旅行記
島に到着した瞬間、ガイドよりも何よりも早く島へとかけ降りた。
そして急いで用をたした。
生き地獄から極楽浄土に召された気持ちだった。

すっきりしてツアーに合流しようとボートの到着した場所へと戻る。
しかしそこには誰一人いなかった。
わずかばかりの時間で皆どこへ行ったのだろう…

ココナッツ工場の時から降り始めた雨は土砂降りになっていた。
俺は雨に打たれ呆然となった。
酔っていても今の状況がヤバイことくらい分かる。
何処へ向かったかも分からないが、焦りを感じ走り出す。

サンダルは水溜りを踏みつけ飛沫を上げる。
俺の意識は朦朧としていて、何処をどう走っているのかも分からない。

小さな店があったので、そこにいた人に話し掛ける。

「あ…日本、いやジャパニーズ… ゴー?」

英語にすらなっていない。
そこにいた人は首を傾げている。

「オーケー。。サンキュー。」

何も知らなさそうなので、急いで走り出す。

尿意

2006年06月18日 | ベトナム旅行記
ボートはココナッツキャンディー工場に到着した。
広場の中央で、現地の人達が次々にキャンディーを紙に包みこんでいた。
もっと機械化されたものをイメージしていたので想像と大分違う。

この工場で作られた、できたてキャンディーを1つ食べさせてもらった。
残念ながらとても甘くて酒をがぶ飲みした俺の口には合わなかった。

再びボートに乗り込み出発する。
先程の島でトイレに行ったばかりなのだが、物凄い尿意を覚え始めた。
ボートは次なる目的地目指して走り続けているので、当分島には着きそうにない。

ヤバイ… 膀胱が破裂する…

ここに来て酒を飲みすぎたことを悔やみ始めた。
今はただひたすら耐えるだけだ。

だがもう限界だった。
仕方なくボートの後ろから小便をしようと立ち上がろうかと思うのだが、僅かばかりの理性がその行動を抑えた。
何回諦めて人間を捨てようと思ったことか…

2006年06月17日 | ベトナム旅行記
その飲みっぷりを見ていた長老達からもお酒の差し入れが入る。
狭いテーブルに俺達2人分の席を作ってくれ、招かれる。

「イッ・イー・サン・ヨー!!」

掛け声と共に酒を飲み干す。
最高の気分だった。

今度は反対に注いで貰った相手にお返しをする。
次々に注いでは注がれ、飲んでは飲まれを繰り返し、辺りは異様な熱気に包まれていった。

「Yeah! I love you!!」

おっさん達と肩を組合い騒ぎまくる。

もはや後先も考えず飲みまくった。
俺達が合流するツアーの団体がやってきても、お構いなしにひたすら飲む。

「モッ・ハイ・バー・ヨー!!!!!!」

何杯飲んだのだろうすっかりベロベロに酔っ払ってしまった。
お世話をしてくれたお母さんが「そろそろ出発するから合流しな」と促す。
別れの杯を交わした後、ようやくツアーに加わることにした。

今さっきまで軒下で現地の人達と酒盛りをしていた2人が、いきなりツアーに加わったのだからツアー客としては驚いたことだろう。
こいつら何者だ…
日本人… いやベトナム人かもしれない…
そんな声が聞こえてきそうだった。

実際ツアーに参加している日本人の誰一人声を掛けてくれなかった。
俺達が日本人であることに気付かなかったのだろうか。
いや、恐らくそのこと以上に、まだ昼間なのに酒臭い俺達と同じ人種だと思われたくなかったのだろう。

その通り、ツアー客の中では明らかに俺達は浮いていたのだった。
ただ酔っ払っているため、そんなことは大して気にならなかったのだが…

ボートに乗り込み、この島と別れを告げる。
最後に良い思い出ができた。
終わり良ければ全て良し。
楽しい2日間だった。

SAKE

2006年06月14日 | ベトナム旅行記

その後散歩をしたり、ご飯を食べたり、ハンモックに揺られたりして過ごした。
そうこうしているうちに、早い昼食が運ばれてきたので、お腹は空いてはいなかったのだが、食べることにした。

隣のテーブルでは親族の長老達が集まり、そしてもう1つのテーブルには若者達が着いた。
2つの小さなテーブルに密集し、とても窮屈そうである。

俺達が2人で席を使っていたので、彼らに譲ることにした。
練乳入りアイスコーヒーを飲み干し立ち上がる。
その時、若いにいちゃん達の集まりから声が掛かった。

「お前酒飲むか?」

彼らはペットボトルに入った酒を御猪口のような小さな容器に入れて回しながら飲んでいた。
俺達もその仲間に入らないかと誘ってくれたのである。
せっかくだから、一杯頂くとしよう。

一気に飲み干す。
するともたれしていた胃を酒が綺麗に洗い流してくれるのを感じた。

のどかな朝

2006年06月11日 | ベトナム旅行記
階段を降りて、玄関近くのいつものテーブルに着く。
旅の日記でも書く事にした。
なかなか書く時間がなく日記では未だにベトナム初日であった。

のどかな朝だ。
何処からともなく、白い毛並みの犬がやってきて俺の足元に居座った。

イシさんも目が覚めたようで起きてきた。
少し話しをしたが俺が日記を書いているのを見て、イシさんも何やら始める様子だ。

「毎日英語の練習をしているんだよ。ゴメンちょっとうるさくなる。」

そう言うとイシさんは英語の発音練習をしながらノートに筆記を始めた。

メコンデルタの朝

2006年06月09日 | ベトナム旅行記
2005年9月19日

夜中ふと目が覚めた。
ここはどこだ?
周囲の状況を見回し今いる場所を思い出す。

轟音を発していたテレビもいつの間にか消され、辺りは静けさに包まれていた。
時計を見るとまだ0時だ。

まだこんな時間か…

昨日の晩は非常に暑かったのだが、今日はとても涼しい。
扇風機がいらないどころか、少し寒いくらいだ。
毛布を肩まで引っ張り潜り込んだ。


4時になると鶏が一斉に鳴き出した。
まだ暗いというのに、朝が待ち遠しいのだろうか。
しばらくすると壁の隙間から赤い光が漏れてきた。
朝日が見れるかもしれない。
寝つけないので、もう起きることにした。

2階のベランダに上がる。
昨夜の雨で床は濡れていた。
少し躊躇いながらも、構わず水の中に足を入れ歩く。

辺りはジャングルのように木々に囲まれていた。
そして曇っているせいで、太陽は見えなかった。

2006年05月18日 | ベトナム旅行記
数が少ないことは残念であったが、全く見れないと思っていたので正直嬉しかった。
生まれて初めて見たホタルの光、こんなに感動するものだとは思いも寄らなかった。

こうして一本の木にホタルが集まるのも、何だか不思議に思える。
どこかの国のどこかの木にもクリスマスツリーのようにホタルが集まる場所があると聞いたことがある。
ホタル達が集まるダンス会場は毎晩決められた場所で開かれるものなのかもしれない。

あまり遅くなるとこの子供の親も心配するので、一端家に子供を連れて帰った。
その後、もう少し見ていたいと思い、再び石原さんと河へ向かった。
相変わらずホタルは光っていた。
一匹地面に止まっているホタルがいて、石原さんが手を被せるとあっさりと捕まえることができた。
ホタルは手の上を歩き、人差し指の先端にくると光ながら飛んで行った。


家へ戻ると、旧秋月を祝おうと親戚達が一同集まっていた。
男は料理場に集まりペットボトルに入った酒を、女はテレビの前に集まっている。
しばらく玄関前のテーブルに着いて、親戚の人と話をしていたのだが、頃合を見計らってベッドに潜り込んだ。
隣の部屋では大音量で遅くまでテレビが付いていた。

虫採

2006年05月17日 | ベトナム旅行記
家へと戻り、また玄関のイスに腰掛ける。
泳いできたことにより何だか気分が良かった。
背もたれに寄り掛かり、空を眺める。
すっかりこのイスも、ここから見える風景も俺に馴染んできたな。

ポツポツと雨を感じ始めた矢先、再びスコールが降り出した。
今日は一日中こんな天気が続くのだろうか。

そういえば女の子が今日は旧秋月だと言っていた。
仏壇に供え物や装飾品で綺麗に飾りつけられている。
そんなこともあるからだろうか、次々と親戚が集まり出した。

親戚の男の子が提灯を持ってやってきた。
石原さんがライターを貸してあげると喜んで走り回った。

しばらく姿が見えなくなったと思ったら、男の子は虫取り網を持って戻ってきた。
石原さんの手を取り、河へと向かう。

一体何を捕まえるんだろうか…
雨が降っているからホタルはいないだろう。
カブトムシでも捕まえに行くのだろうか。
疑問を感じながらも、ただ付いて行く。

するとどうだろう言われなければ気が付かないほどだが、一本の木に2、3個の明かりがあるではないか。
クリスマスツリーとは到底言えないが、その木だけは確かに光っていた。
ぼんやりではなくはっきりと光っているのが分かる。