「砂の女」「箱男」などの小説で知られる作家 安部公房氏、最初期の未発表短編が見つかった事で 再び注目を浴びているわけですが、
本日はその安部公房の小説で、本人が脚色を手掛け、 勅使河原宏が監督をした映画
『他人の顔』
について書こうと思います。
むか~し読みあさった安部小説だが、正直 ひとつとして読み込めていない この事実。
まぁ、アタシの頭がクルクルパーなのも原因なのだが。
特に 「箱男」 なんて、比喩が何を表現しようとしているのか理解しようと試みると、もう脳が爆発しそうだったもん。(笑)
でもこの方の小説は難しいけど面白い。
そして監督は 草月流三代目家元、安部氏の友人でもあり シュールでオリジナリティ溢れる映像美が海外からも評価の高い 勅使河原宏氏。
昔、勅使河原宏監督 岸田今日子主演の 「砂の女」 を観た事があるが、前衛的な映像と音楽が不気味な恐怖を誘い、
あまりの不条理に呼吸をするのも苦しく 昆虫採集にやって来た男(岡田 英次)が気の毒で気の毒でならなかった覚えがある。
今回の 「他人の顔」 は、顔に大火傷をおってしまった男が、妻との関係を修復する為、まったく他人の顔を医者に作ってもらうという、
ザックリ言うと そんなお話。
さすがに細かい解説は、ボキャブラリー難民のアタシには無理なので、(つーか、記事書くのに30分以上は絶対かけたくないボク。毎日更新する為の秘訣)
そこはお世話になってるgoo様の 「goo映画」 の解説文を拝借して書いてくとする。(なんかエラソーに今回も違法行為しまくり)
手違いから顔に大火傷を負い、頭と顔を繃帯ですっかり覆われた奥山(仲代 達矢)。
彼は顔を失うと同時に妻や共同経営者の専務や秘書らの対人関係をも失ったと考えた。
彼は妻(京 マチ子)にまで拒絶され、人間関係に失望し異常なほど疑い深くなる。
のっけから不気味です。
そこで彼は顔を全く変え他人の顔になって自分の妻を誘惑しようと考えた。
病院を尋ねると精神科医(平 幹二朗、看護婦 岸田今日子)は仮面に実験的興味を感じ、
彼に以後の全行動の報告を誓わせて仮面作成を引受けた。
やたらセリフが多いのは気になったが…。
彼は頭のレントゲンを受けながら、ふと以前見た映画中の旧軍人精神病院で働く美しい顔に、ケロイドのある娘(入江 美樹)、
ある夜戦争の恐怖におびえてか、兄に接吻を求めた娘、そして夜明けの海へ白鳥のように消えていった娘の姿を思い出すのだった。
「入江美樹」、 世界のマエストロ小澤征爾氏の奥さまです。
数少ない映画作品のひとつ。 透き通る様な美しさに鳥肌が立つ。
そして彼は或る日医者がホクロの男の顔型を借りて精巧に仕上げた仮面、
その他人の顔をした仮面をつけて街へ出た。
ビヤホールでは女給の脚に目を奪われた。医者はそれを仮面の正体の現われと評した。
彼はアパートに二部屋をとり他人の顔になりきろうとしたが、
管理人の精神薄弱の娘(市原 悦子)に繃帯の男だと見破られた。
市原悦子氏、全く変わっていない事に あなたこそ仮面を? と思ってしまった瞬間。
しかし会社の秘書が気付かないと分ると、彼は妻(京マチ子)を誘惑し姦通した。
妻を嫉妬し激しくなじると、彼女は初めから夫であることを知っていたと告げ、立去った。
彼の人間に対する猜疑心が和らぎ 昔の様になれるならと、亭主の悪趣味な誘いに騙されたふりをした結果がこんな事に。
互いの気持ちを確かめあいたい、同じ思いの夫婦なのに 見事にベクトルは違う方向へと向かってしまう。
浅はかな考えが招いた男の自業自得だが、なんとも皮肉な…。
彼は夜更けの通りを歩きながら、「自分は誰でもない純粋な他人だ」と咳き、衝動的に女を襲った。
巡査は診察券を持つ彼を気違いと思って医者を呼んだ。医者は仮面の返還をせまった。
彼がこばむと「君だけが狐独じゃない。自由というものはいつだって狐独なんだ。剥げる仮面、剥げない仮面があるだけさ」と彼を避けるように歩き出した。
包帯で身体も精神も雁字搦めだった自分が、他人の仮面を付けた事によって嫌悪感から解き放たれ、自由を手に入れたと思われたが それは全くの幻想で、待ち受けていたのは孤独だった。
なんか気の毒なんだよな、この主人公も。
仮面を手に入れる代償が妻との別れだと もしわかっていたら、彼はきっと違う行動を起こしたに違いない。
「顔」 「顔面または自己の喪失」 とは、一体何なのか。
なんとなく掴めそうになると、ドンと突き放される。 これが安部文学の醍醐味でもあるけれど…。
更に医者が「君は自由なんだ。自由にし給え」と彼をふりきるように言うと、彼はいきなり医者からナイフを奪うと刺し殺した。
これも、仮面を作った事の代償ならば この精神科医の役割って何んだったんだろう…。
彼等の背後を同じ顔をした群衆が流れてゆく。
小説とは多少違う部分もりますが、面白い作品だったと思います。
まぁ、ある意味ホラーかミステリーです。
怖いです。
そして、もうちょっと気のきいた感想など述べられたらヨカッタのですが
なにぶん当方悲しき凡人ゆえ、これ以上の事が書けません。
あしからず。