『ブラック企業に負けない』レビュー

2012-07-12 17:34:53 | 京都POSSEの活動報告です!

『ブラック企業に負けない』(Amazonにてなか見!検索での冒頭試し読み可能)
これはPOSSE代表の今野と事務局長川村の共著であり、POSSEに寄せられた労働相談からブラック企業の実態、その対策について書かれた本である。今回の記事ではその内容について簡単に紹介したい。

1.ブラック企業は何をしているか
本書ではブラック企業の例が多数紹介されているが、一体ブラック企業とはどんなことをしているのだろうか。
Aさんは「社長アシスタント」と呼ばれる雑用係に任命され、一日5時間の通常業務に加え、深夜であろうといつだろうと、社長のカバン持ちやペットの散歩に呼び出された。また、自尊心を奪うためにジャージで出勤することを命じられた。パワハラに追い詰められ、同僚の目にも明らかなほど痩せて顔色が悪くなったAさんは、「同期を辞めさせろ。出来ないならお前が辞めろ」と要求されたのを機に、自主退職した。入社後三か月しか経っていなかった。
この、不要になった社員は切り捨てられるのである。

2.ブラック企業のパターン
著者は、POSSEに寄せられた相談の中からブラック企業の「パターン」が見えるという。
まず、入社後に選抜競争を行う会社。ウェザーニューズでの過労死事件で話題になった「予選」制度などが典型例だが、選抜競争に敗れた社員は解雇される。この時ブラック企業が方便とするのが、「試用期間」である。
誤解されがちだが、「試用期間」は「お試し期間」ではない。法的に雇用契約が結ばれているので、「試用期間」であっても簡単にクビにすることはできない。
他には残業代を払わない、残業代を含めて広告を出すなどの賃金面でのパターン、社員を使い捨てるパターン、辞めさせないパターンや、戦略的にパワハラをしてくるパターン。果ては職場が崩壊しているパターンまである。

3.ブラック企業に入ってしまったら?
では、実際にブラック企業に入社したらどうすればいいのだろうか。それは、いくつかの合言葉を覚えておき、それに従って対応することである。

順に紹介すると、まず第一の合言葉は「会社の言うことがすべてではない!」というもの。ブラック企業は自らのやっていることを正しいと主張してくるが、労働者が「なんか変だな」と感じるケースは大抵違法である。「うちではこうなんだ!」「弁護士も正しいと言ってる!」というような方便がよく使われるが、それが絶対だと思ってはいけない。

次の合言葉は「あきらめない!自分を責めない!」というもの。ブラック企業はなんでも労働者のせいにするので自分が悪いのではないかという気になりがちだが、もし多少落ち度があったとしても、それで会社が違法な行為をしていいことにはならない。

三つ目は「おかしい、つらいと感じたら専門家に相談する!」。これからどうするか、会社と戦うのかといったことを考える前に、相談していくことが大切。病気の時と同じで、「しんどいな」と思ったら病院に行く。同じように、辛いと感じたらすぐに専門家のところへ相談に行くべきだと筆者は言う。

最後に、「証拠、記録を残す!」がある。これは今労働環境に問題のない人でもすぐ行うべき大切なことで、労働契約については就業規則や求人情報、労働時間についてはタイムカードや自分のメモ、PCのログ。パワハラやセクハラについては日記、ICレコーダー、メールなどが証拠となる。証拠があれば話し合いや裁判の際に有利に進むことは言うまでもない。
どれも当然のことのように思えるが、肉体的にも精神的にも追い込まれていると、何が正しいのかわからなくなってくる。そのためにこれらの合言葉を覚えておきたい。

4.ブラック企業にどう対処するか?
続いて本書では、ブラック企業への対処術を述べている。
色々なケースに対して細かく対策が書かれているが、それは省略して総括すると、改めて「証拠を残すこと」「制度を知っておく」ことの重要性が読み取れるように思う。証拠を残しておくこと、そして制度を知っておくことで、安心感や自分が正しいという感覚が得られる。

企業と労働者は、職場での力関係において対等ではない。これは労働法を構成する基礎にある考え方であり、だからこそ労働法はこの不均衡な力関係を対等に近づけるため働かせ方を規制するさまざまな規定を備えている。
だが現実には企業はこうして社員を不当に使い捨てており、それもごく一部の話ではなくなってきている。ブラック企業の問題はいつ自分、家族、友人が遭遇するかわからない問題である。自分に関わることとしてブラック企業の問題をとらえる際に本書を手にとってみてはいかがだろうか。ブラック企業への対策も知ることができる実用的な本でもあり、ぜひ多くの人に読んでいただきたい。

(京都POSSE 法学部・三回生)

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