この事件は、京都府綾部市にある、トステム綾部工場で窓枠製造を主な作業として働かれていた、中田衛一さんの過労死事件です。2001年6月に衛一さんは、急性心停止によって若干22歳の若さで亡くなりました。入社してわずか4年後の出来事でした。
先日、この裁判を支援している若者達の団体である、「中田衛一22歳過労死裁判支援ネットワーク」の方にお話を伺いました。
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○長時間労働
中田さんが働かれていた現場には、タイムカードは存在せず、ラインの担当者がそのラインで働く人の労働時間を記録していました。その数字は実際の労働時間の2割ほど少ないように記録されていたと、従業員は感じていました。それでも、中田さんの時間外労働時間は1カ月91時間（2000年7月）と記録されています。中田さんが亡くなる直前の一か月の残業時間は、ご両親の計算によると139時間20分にも達しています。
○不規則な労働形態
中田さんは1週間交代で、日勤と夜勤を繰り返して働かれていました。しかも、残業はほとんど毎日行われていました。また、亡くなる直前は5日間連続での深夜勤務でした。夜間の勤務は、通常勤務以上に疲労が蓄積されると言われています。また、睡眠とは単なる時間ではなく、その質も重要だという医師の意見もあります。中田さんの場合も、時間が不規則な労働を繰り返し、質の良い睡眠をとることができず、疲労とストレスがたまっていってしまったということが指摘されています。
○過酷な労働内容
中田さんはDSジャストカットラインという職場で仕事をしていました。このラインは、取引先からの不定期な受注生産を行うラインで、納品期限が決まっているので、他のラインに比べて従業員の負担は大きかったと言われています。納品期限に間に合わせるために深夜や明け方まで残業することも頻繁に起こっていました。
また、常に立って作業しており、重い部材を持ってライン内を移動していました。休憩も十分に取れていませんでした。工場は粉塵が舞っていて、空調も十分に機能していなかったため異常な高温の室内で作業をこなさなくてはいけない状態でした。
○派遣労働者の指導
DSジャストカットラインでの労働は非常に過酷だったため、多くの正社員が退職を余儀なくされていました。会社はその穴埋めとして、派遣社員を使っていました。そのため、中田さんは派遣社員の指導もしなくてはいけなくなりました。また、派遣社員は生産ノルマが達成できていなくても定時で帰宅してしまうため、中田さんも含めた正社員が納期を守るために残業を余儀なくされていました。
上記のような過酷な労働条件で働かれていた中田さんは、食欲が減退し、体重は入社当時から18キロも減ってしまいました。日勤体制の疲労をかかえたまま、深夜交代勤務に移行し、良質な睡眠をとることができず、疲労が蓄積されていました。そして、急性心停止という形で命を落とす結果につながってしまいました。
わずか22歳の若者が、過重労働の結果、命を落としてしまいました。中田さんの御家族は、会社には労働者が安全に働ける環境を確保する義務（安全配慮義務）があるにも関わらず、会社は適切な処置を取らなかったとして、会社の責任を問うために民事訴訟を起こされました。その裁判の最終弁論が3月7日（月）に京都地裁で行われます。中田さんの裁判を支援し、若者の働き方を改善していくためのネットワーク、「中田衛一ネット」も結成されています。
私たちも、この裁判の支援を通じて、さまざまな方々と協力していきながら、現在の職場環境を改善していくために、今後も精力的に活動に取り組んでいきたいと思います。
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