「京都・北山丸太」 北山杉の里だより

京都北山丸太生産協同組合のスタッフブログです

建築家とメディア関係者を招いた北山杉視察ツアーを初開催 〜前編(建築見学編)〜

2023年11月02日 | 北山杉体験・研修

京都府の木でもある「北山杉」の維持・発展のため、2021年8月に京都市と北山杉利用者(株式会社内田洋行、菊地建設株式会社、ナイス株式会社、三井住友信託銀行株式会社)と生産者(京都北山丸太生産協同組合、京北銘木生産協同組合)が「建築物等における北山杉の利用促進協定」を締結し、北山杉の利用促進を図る取り組みを進めています。

今回、北山杉の認知向上と新しい利活用の可能性を探る施策のひとつとして、有識者を招いた視察ツアーを10月5日(木)に開催しました。

当日は建築家の安斎好太郎氏(株式会社ADX 代表取締役)、内海彩氏(株式会社 内海彩・長谷川龍友建築設計事務所 代表取締役およびNPO法人team Timberize 理事)、鈴木恵千代氏(株式会社乃村工藝社 エグゼクティブクリエイティブディレクターおよび一般社団法人日本空間デザイン協会 理事)、の3名、並びにメディア関係者も2名ご参加いただきました。

改めて北山杉とは?

視察ツアーのレポートの前に、改めて北山杉についてご説明させてください。

『じつに真直ぐにそろって立った杉で、人の心込めた手入れが一目見てわかる。銘木の北山丸太は、この村でしか出来ない』
これは、日本を代表する文豪、川端康成の小説でその日本の美しさを描写すべく何度も映画化されている「古都」の一文です。

日本で最も古い600年以上の歴史を持つ伝統林業から生み出される銘木です。艶やかな木肌を持つ美しい丸太材は茶室や床の間に欠かせないもので、桂離宮や鹿苑寺(金閣寺)等の有名建築物をはじめ、一般住宅においても「魅せる木材」として多用されてきました。
節がなく上品な光沢があり、上下同一の太さの円直材で床柱としては最適の材質を誇り、京都の銘木として伝統工芸品にも指定されています。

そんな北山杉ですが近年は和室の減少などによって利用が減少し、多くの伐採期を迎えた立木が山に眠っています。これまで「伐って、植えて、育てて、また伐る」ことを長期間繰り広げられてきた伝統林業の循環サイクルが、利用の減少によって「伐れず、植えられず、育てられず」という状況に陥りかけているのです。

⚫︎北山杉の本質的な価値に触れ、新しい可能性を探る視察ツアー

今回行われた視察ツアーは、北山杉を使用している数寄屋建築と現代的な活用例を見てから、北山杉の生産地を巡るという構成で実施されました。

まず初めに訪れたのは創業200年超の老舗京菓匠、鶴屋吉信本店。

店舗内の茶寮は、日本を代表する数寄屋の名匠である中村外二工務店の中村外二氏が手掛けたものです。
建築もさることながら、お店の大看板は富岡鉄斎画伯の書、室内には吉兆の象徴でもある堂々たる鶴の上村淳之画伯の杉戸絵とちょっとした美術館のようです。

「游心」という名の成熟した茶室

今回は2階にしつらえられた茶寮「游心」で、中村外二工務店の3代目である中村公治代表が数寄屋建築の美学と、その中で緻密に計算され使用されている北山丸太の美しさ、姿形の統一感のすばらしさ、割れない強靭さ、ゆっくり丁寧に育てられている北山杉の木目など、その価値について語ってくださいました。

茶室の前で経年変化した土壁の美しさやこだわりなどを説明される中村さん

「先代も先々代も“建物っていうのはできて半分育てて半分”といいまして、お手入れを重ねることで10年20年後を考えても美しさが増していい建物になっていく。北山丸太はそういう建物に欠かせない建材です。こうした北山杉を守れないということは、我々はもちろん、日本文化にとって大きな損失だと思います」と中村さんは語ります。

数寄屋建築を手がける人のことを数寄屋普請や丸太普請とも表現するそうで、その言葉通り、北山杉をはじめあらゆる建材を厳選し、デザインに素材を合わせるのではなく、たとえ襖が数ミリ合わなくてもそこに存在させたい丸太を配置する、というこだわりを持って造っていくのだそうです。

当日はわざわざ北山杉の連結部の模型をご持参いただき、分かりやすくご説明されました

茶室のお正客位置につくとちょうど目の前に広がる坪庭の「佐治石」が目に留まります

参加者の皆さんは数寄屋の美学や技術に大いに感銘を受けられていたご様子でした。

北山丸太の再利用を行なった飲食店「ごはんや一芯」をムーンバランス辻村氏が解説

続いて見学したのは行列のできるランチ店として有名な「ごはんや一芯」京都店の店舗。
こちらの店舗では、サイズ違いや傷、曲がりによってペレット等に使用されてしまう北山杉を再制作し、店舗の建材やテーブルとして採用しています。


「ごはんや一芯」の店舗外観と店内廊下。この床も北山丸太を板状にしたもの

ご案内いただいたのは京都を拠点に活動される建築デザイン事務所、ムーンバランス代表の辻村久信氏。

規格外で捨てられてしまうはずだった北山杉を利用し、とりわけ磨き丸太、絞り丸太の材質の緻密さからくる表面の滑らかな肌触りや柔らかさを残すようにスライスし、それを組み合わせて床材に仕立て直して店舗に使用したそうです。ひび割れがしにくいため、靴を脱ぎ素足で上がってもらっても安心してその感触を感じてもらえるという事でした。
残った心材は、フローリングや天井材、テーブルとして余すことなく採用しています。

店舗内でご説明されるムーンバランス辻村さん。絞り丸太を床に使うという大胆な使い方

絞り丸太等を採用するのはこれが初めてでなく、北山杉の持つ魅力を再発見してもらえたらと以前からイベントの会場に設置するベンチなどでも採用していたそうです。

今回、店舗で北山杉を床材に採用したきっかけは、名栗加工をした北山杉の床を歩いていた時の足裏の心地よさの体験から、絞りの丸太を床材に使ったら気持ちいいのではと考え、使われたと言います。現在は余った垂木でドアを作っているそうです。

「北山丸太の生産者はとても品質に敏感です。使う側からしては、規格外といわれているものでも十分良い品質のものが多いものです。そういうものを余すことなく利用して、とくに人が触れられるところに使って魅力を感じてもらって再認識してもらう。その地域で育った木材は空間を引き立て、見た人に魅力を感じてもらえると私は思います。」

足裏に感じる温かみのある柔らかさと青竹ふみのような健康に良さそうな床材も、また店の演出に一躍を買って、女性が気軽に訪れたくなる雰囲気を醸し出しているのでは、と思うそんな店舗でした。

 

いよいよ北山杉の故郷、北区中川地区へ移動です。続きは後編でお知らせします。

 

※産地視察ツアーも随時開催しています。お気軽にお問い合わせください。

 

<中川地域>

・研修・体験・北山杉の里ガイドツアーご案内ページ

https://www.kyotokitayamamaruta.com/institution/index2.html

・お問い合わせ京都北山杉の里総合センター

TEL 075-406-2212

〒601-0125 京都市北区中川川登74

・お問い合わせご記入ページ

https://www.kyotokitayamamaruta.com/institution/contact.html

 

<京北地域>

・京北銘木生産協同組合

TEL 075-852-0490

〒601-0262 京都市右京区京北細野町瀧ノ向6-2

・お問い合わせメールアドレス

info@keihoku-meikyou.jp

または担当一瀬まで

ichise@keihoku-meikyou.jp


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