黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

ホメオパシーにつきまとうウサン臭さ

2010-09-22 12:02:36 | 院長のひとり言
過日の一件以来、自分も商売上最低限のことを知るべくホメオパシーについての文献や情報を収集してを読んできました。
結論としてホメオパシーの有効性については少し前に取り上げたLancetの論文に有るとおりだと思います。
その結論部分
「Biases are present in placebo-controlled trials of both homoeopathy and conventional medicine. When account was taken for these biases in the analysis, there was weak evidence for a specific effect of homoeopathic remedies, but strong evidence for specific effects of conventional interventions. This finding is compatible with the notion that the clinical effects of homoeopathy are placebo effects.」

要約すると
「ホメオパシーのエビデンスは弱く、西洋医学のエビデンスは強い。そして「ホメオパシー治療効果はプラセボ効果」という考え方に矛盾しない」
ということです。
Lancetの論文を読めば判りますが、“効果が全くない”という訳ではありません。95%信頼区間評価などから見て「意味のある治療効果とは認められない」ということです。

少なくとも安易に人に薦められるようなものではないという点がはっきり出ています。少なくとも自分は使用しませんし人にも薦めません。
もしも身内や大切な人が病気になり、ホメオパシーに傾倒して西洋医学を否定するようになるならば、全力で阻止します。
でも健康な人が「ファッション」や「雰囲気商品」として使用するのであれば止めはしません。少なくとも「プラセボ効果」はあるのですから。
「プラセボ効果程度」と理解した上で使用するのであれば、それはそれで有りではないかな?とも思います。
しかし、例え“ホメオパシーのプロ”と称する人間であっても自覚的・他覚的に疾患を抱えた人に対して治療として薦められるものでは無いと思います。


少なくとも「日本ホメオパシー医学協会」の発信情報を見てもウサン臭さのみが鼻につきます。

自分が過去に慣れ親しんだ健康食品の悪徳商法そのままの印象です。
「医学協会」なんて偉そうな名前をつけていますが実態は「健康食品販売会社の単なる広告塔」と何ら変わりはない印象。
「情報を歪曲させて誤解を誘うやり口」という点では非常に洗練されたと言ってもいいのではないでしょうか?

日本ホメオパシー医学の協会の普及啓発活動」というページを見てみましょう。
「1918年のスペイン風邪の伝染は予防接種が原因だった!」と予防接種や西洋医学に対する危機意識を仰ぎ、『スペイン風邪流行時のアメリカでの医師ホメオパスたちの証言集』でホメオパシーの有効性を暗示する。
メキシコでの豚インフルエンザ流行時には「メキシコでの豚インフル流行時のホメオパスからの報告」と題した報告を出したり。

このメキシコでの豚インフルエンザの大流行については、一方で「抗生物質の自己処方」や「ホメオパシーのみの使用」、「曰く有りげなビタミン注射」などメキシコのヘルスケアに対する取捨選択がウィルスの封じ込めの失敗の遠因となりパンデミックに継ったなったとの説も有ります。
出典はThe New York Times
以下に該当記事の一部を引用します。
「But one important factor may be the eclectic approach to health care in Mexico, where large numbers of people self-prescribe antibiotics, take only homeopathic medicine, or seek out mysterious vitamin injections. For many, only when all else fails do they go to a doctor, who may or may not be well prepared.」

The New York Times Published: April 30, 2009

また、「英国 新型インフル義務化否定、医師の半分、看護士1/3が接種拒否」なんて取り上げ方をするなど、恐怖の植え付けが上手です。
この新型インフルエンザワクチンの安全性の問題についてはアジュバンドの有無やその理屈が分かっていないと議論にすらなりません。
国産ワクチンと外国産ワクチンの差という点もこのあたりにあってキチンと考慮する必要があります。
ちょっとこのへんの話はずれるので別の機会に。

さらにもっと酷いのが『①「ホメオパシーは脳腫瘍のがん細胞を殺し、正常な抹消リンパ球を増殖させる;脳腫瘍の 新治療」 』という発表。
「アメリカ国立がん研究所、ベストケースシリーズレポートナンバー20:69-74、2008Prasanta Banerji, Donald R Campbellアメリカ国立がん研究所では、ホメオパシーが脳腫瘍の治療に有効であることを認め、昨年ベストケースシリーズとして発表しています。」

はっきり言って無茶苦茶です。
事実誤認というか、意図して行っているなら詐欺でしょう。
まず情報ソースとして付けられているPDF読めばわかるけどどこにも脳腫瘍の症例は出てこないのよ。肺がんと食道がんの患者の話だもん。
(英語が苦手でも開けてみてね、胸部のレントゲン画像やCT画像しか載ってないのが確認できますから)
学術団体と称するやからが英語の論文を読むことすら出来ない程度とも言えます。

なにより問題なのは、NCI(アメリカ国立がん研究所)が「ホメオパシーが脳腫瘍の治療に有効であることを認めた」という事実は一切ありません。

少なくとも「医学協会」と称する団体がこのような曲解をするのは如何でしょう?
ウサンクサイを通り越して「普及啓発という名の詐欺」と言うべきでしょう。
NCI Best Case Series Programについては厚生労働省でも「がんの代替医療における有効症例の調査研究」という同様のプログラムを実施しています。

そしてこの厚生労働相の方のページの最後にクリティカルな一言が載っています。

「なお、当該研究において審査の対象となったことが、がん治療としての効果を認めたことを意味しているわけではありません。その治療法の効果を評価するためには、よくデザインされた臨床試験でなされる必要があり、当該研究で集められた情報は、今後の臨床試験実施に向けた基礎資料としての位置づけとなります。」

NCI Best Case Series Programについても同様な但し書きが添えられています。投稿した症例が通ったということと治療効果には何ら関係は有りません。

もう開いた口が塞がらないというか呆れる限りですね。これらの情報をどうしたら「アメリカ国立がん研究所では、ホメオパシーが脳腫瘍の治療に有効であることを認め」という文章に出来るのか頭の構造を疑います。

「ウサン臭さが鼻につく」と断言する理由もわかってもらえるのではないでしょうか?

今回の記事の作成においては以下のページを参考にさせていただきました。
「tadano--ryの日記」さまのホメオパシーのエビデンス その1 その2
「kikulog」さまのホメオパシーはインフルエンザに効きません



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