新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

政府の汚染水廃棄を弾劾する 原子力はやめるしかない

2023年08月24日 | 反原発・脱原発・エネルギー
今日8月24日、政府・東京電力は福島第一原子力発電所に溜まるトリチウム水(トリチウム以外の核種も含まれており、政府やマスコミのいう「処理水」は詭弁でありデマです)の海洋廃棄を開始しました。

当ブログは、満腔の怒りをもって、この暴挙を弾劾します。そして、この列島の美しい自然、そこに生きる人びとや生きものたち、海の幸や山の幸を愛してやまない人たちに、汚染水の排出のストップ、そして原子力発電所の廃絶を、心から訴えたいと思います。

以下に、原子力資料情報室の抗議声明を転載させていただきます。


2023年8月23日
原子力資料情報室
 政府は気象条件が許せば、ALPS処理汚染水の海洋放出を24日に実施すると発表した。21年4月13日の閣議決定に沿って何が何でも放出を進める姿勢である。漁業者団体との文書で交わした約束を踏みにじり、農業者や観光業者らの懸念を蔑ろにして、放出を決定した。中国政府は税関における水産物の汚染度測定の強化を実施、また香港政府は放出に対抗して東京をふくむ10都県からの水産品の輸入を禁止すると述べている。すでに「実害」が発生している中での決定である。太平洋諸島フォーラムが委託した専門家の疑念にも答えていない。
 政府はIAEAの権威を借りて疑念の払拭を期待したが、IAEAの包括的報告書はさまざまの疑念に答えていない。それどころか、政府の放出行為の正当性を保証できていない。さらに、IAEA報告書は30年に及ぶ放出による環境影響評価を実施していない。東京電力あるいは日本政府にそれを求めてもいない。原子力規制委員会も原子炉等規制法に環境影響評価の実施を求める条項がないことから、まともにこの問題を扱っていない。そして、8月17日に行われた東京電力と市民グループの質疑において、東京電力は必要な具体的放出計画が策定できていないことを認めた。計画なき放出なのである。こうした無責任な体制の中で放出が決定されているのである。
 東京電力ならびに政府、IAEAはともに、長期にわたる放射性物質の放出による環境汚染、放射性物質の環境中での振る舞いなど、きちんと検討・評価せず曖昧なままである。例えば、放出汚染水に含まれるウランや超ウラン元素は、量的に少ないとしても、海洋環境の中で崩壊系列に従い、次々と娘核種が誕生し平衡状態に達するまで増え続ける。濃度規制に適合していると主張するが、薄めれば安全という論理を私たちは受け入れない。
 政府の決定は、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)に違反している。放出できずにタンクに貯蔵したものを、放出を回避できる他の方法があるにもかかわらず、意図的に海洋投棄するからである。また、海洋法に関する国際連合条約(第194条)にも違反している。同条項は、「いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、利用することができる実行可能な最善の手段を用い」ることを求めている。リスクを伴い「実害」が発生する海洋放出は最善の方法とはとうてい言えない。
 これらさまざまな問題に対して、政府の主張は福島の廃炉を進めるために避けて通れないというものだ。しかし、すでに遅れに遅れているデブリ取り出しと、その状態の把握もできていない困難さを考えるなら、現実を見据えた対応が必要であり、国内外の状況を直視すれば、政府が方針を見直すことが合理的であり、今こそ求められていることである。
 原子力資料情報室は放出に代えて、ALPS処理水のセメント固化を求めている。政府は、水和熱によるトリチウムの蒸発といった反論にもならない反論を述べているが、全量放出に対しては比較にならない程度の漏洩であり、容易に漏洩を止める対処ができるのである。
 文書で交わした約束を一方的に放棄する政府の行為は、道理と倫理に悖るものであり、政府のみならず政治への信頼は完全に失われる。社会規範が崩壊するのだ。「今後数十年の長期にわたろうとも、全責任を持って対応する」と言うが、誰がこれを信ずるだろうか。
あらためて、海洋放出の停止と方針転換を求める。


下線を引かせてもらった、「政府はIAEA(国際原子力機関:注)の権威を借りて疑念の払拭を期待したが、IAEAの包括的報告書はさまざまの疑念に答えていない。それどころか、政府の放出行為の正当性を保証できていない。さらに、IAEA報告書は30年に及ぶ放出による環境影響評価を実施していない」という指摘について、韓国紙がこんな報道を行っています。



「安全なレベルまで水で希釈して放出するのだから問題ないんじゃないの?」と考える方もいるでしょう。しかし廃棄時点では「安全」なレベルでも、生物濃縮の問題を考えたら、生態系に与える影響、そして被爆による健康被害のリスクは決して無視できないはずです。

原子力資料情報室の次の記事によれば、そうかんたんなものではありません。


かねてより経産省は検討委員会をつくって、トリチウム水をどうするか、5つの案を検討してきたそうです。

①地層注入
②海洋放出
③コンクリート固化して地下埋設
④水蒸気にして大気放出
⑤水素にして大気放出

それぞれ、技術的課題、処分期間、監視期間、処分費用などが議論されましたが、長期に保管する案はなかったそうです。

他方、原子力規制委員会の田中前委員長・更田現委員長は、トリチウム濃度を告示濃度以下に薄めて海洋に放出せよと発言してきました。

海に出して捨てていいか、8月末に福島県富岡町、郡山市および東京都内の3会場で、経産省は公聴会を開きました。公述人44名のうち42名が反対の意見を述べました。原子力資料情報室の共同代表・伴英幸氏もそのひとりです。

トリチウムは半減期が12.3年でベータ崩壊をし、ヘリウムになる放射性物質です。いくら薄めるとはいえ、いったん海洋放出されれば海中生物だけでなく陸上の植物や生物への影響がありえます。漁業にダメージを与えるのいうまでもなく、生物濃縮も懸念されます。水なので人体に取り込まれて遺伝子を傷つける恐れがあります。生命系に対して決して安全とはいえません。こういう反対意見が次々に述べられたとのことです。

「薄めれば安全」といえるか。


カナダ、日本、ドイツ、アメリカ、イギリスなどの原子力施設近傍の住民に小児白血病、新生児死亡、遺伝障害などの増加が観察されています。しかし、原子力推進もしくは容認の立場からは、「個々の研究のケース」として無視されるか、否定的な扱いを受けています。

どうも不都合なデータとみなしているようですが、科学的に明らかになった観測事実を否定するわけにはいかないでしょう。

放射線被ばくの影響を考える際、故アリス・スチュアート博士は「たとえ1本の放射線であっても、ピンポイントに遺伝子を破壊することがあるのです」と明言したそうです。

海洋に出たトリチウム水が均一に薄められるという保証はない。出入りの複雑な海岸があり、その沿岸を流れる海水の挙動は多様です。海水の流れのシミュレーションもいろいろです。海水の大循環は、自転する地球に大きく影響されており、台風や異常気象などの気象条件も制御はできない。海は静かで無限に広いのではありません。当然のことですが、計算通りにはいかないのです。

日本人は、空が、そして川と海が汚染され、公害にひどく苦しんだ経験があります。人為的に作り出された放射性物質は、環境に漏れ出ないように、厳重に閉じ込めておくしかありません。それができないなら、原子力をやめるしかないのです。


海外からも日本のトリチウム水放出の決定は、猛烈な抗議を受けています。

◆中国 日本の水産物の輸入全面停止 処理水放出受け 税関当局

◆香港、10都県の水産物禁輸 処理水放出に対抗

◆【マニラ共同】日本が24日開始を決めた東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、フィリピンの小規模漁業者団体「パマラカヤ」は22日、「有毒な放射性廃棄物」によって漁業資源が影響を受けるのは間違いないとして、「強く反対する」と表明した。

特に読んでほしいのは、戦争中は日本帝国主義の侵略戦争、戦後はアメリカの核実験の犠牲になってきた、太平洋島しょ国の怒りの声です。




この列島の美しい自然、そこに生きる人びとや生きもの、海の幸山の幸をこころから愛される方々へ。どうか今回のことが、「かわいそうな」福島・東北の人たちだけの問題でなく、私たち全員の問題だと知ってください。

私が怒っているのは、このトリチウム水放出が、東北の漁師さんや人たちに対する不正義であり、生活破壊であり、人権侵害であるばかりでなく、ビジネスパーソンにとっての機会損失だからです。


再生エネルギー、そして廃炉は、日本に電機や半導体や自動車産業に代わる、新たなイノベーションをもたらすものになるはずです。ここにこそ日本の経済再生のチャンスがあります。廃炉にはロボット技術の開発が不可欠ですが、若者にはそれをやり抜く技術と意欲を持った人たちがいると思います。それに成功したら、日本経済のアドバンテージはどれだけ上がるでしょう?

私はそう思いますが、みなさんどうですか?

「経済より生命」が反原発主流派のスローガンでしたが、私は当時も今も「経済的だからこそ反原発」でした。核廃棄物の問題を考えたら、原発はコストが高すぎ、将来に残す負担も過大すぎます。

環境に致命的な影響を与え、世界から見捨てられるだけのトリチウム水放出はただちに止めよう。それより、廃炉や再生エネルギーのイノベーションに注力し、原発、すなわち一部の資本家や政治家が得をするだけの過剰な生産力に頼らずとも、99.9%の大衆が幸せに生きられる社会の実現をめざしていこうではありませんか。



そういえば、寂聴さんも反原発に立ち上がっておられましたね。

「立ち上がった」は比喩でなく、その年の冬、お風呂で転倒して骨折、3月初旬に私がお目にかかったときも、まだ車椅子でした。しかし3・11のニュースに、思わず立ち上がったのだとか。写真はいただいた揮毫。

「はー。忘己利他。もうこりた、ですか」

「ほーんと。もう懲りたわー! あなただって、そうでしょ?」

と、楽しそうに笑っておられていたものです。ほんとに、闘争なんかもう懲り懲りなのに、三十何年も続けていることです。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (農協牛乳)
2023-08-26 22:18:42
とうとうパンドラの箱を開けてしまいましたが、その中に希望とやらは残っていなさそうです。


鳥の方も案の定的外れな書き込みが溢れていますけど、「政府の言うことが信用出来ないのか」だけならまだしも、「チャイナの手先か?」とか「ロシアは原子炉ごと海洋投棄している」等々と論点ずらしに必死な方々がいくらでも湧いて出てくるのには辟易します。
本当に政府からカネを貰って工作しているのか?と疑いたくなるくらいですよ。


「原子力ムラ」の闇は端から思われている以上に深いのかも知れません。
余談になりますが、自分は一昨年の夏に単車で大震災から10年経った福島県双葉郡一帯を走ってきましたけど、あの場所はまるで異世界に迷い込んだような光景が広がっていましたよ。人のいる気配が全く無い上に建物は荒れ放題で、所々にバリケードがあった上に警備員らしき人の姿も何人か見かけました。
おまけに原発の近くで写真を撮ったら民間の警備員に職質紛いの事をされたので、モヤモヤした気分のままそこを離れた事を今でも覚えております。
100年後にはウクライナ某所のような巨大な「石棺」が立っていても驚きませんよ。
返信する
Unknown (kuro_mac)
2023-08-27 10:43:05
いつも有益なるコメントありがとうございます。鳥はひどいことになっていますね。

地下汚染水はすでに海洋に流出しており、セシウムが基準値180倍の魚が見つかったりしていますね。

要するに、すでに核種で汚染された海水に、トリチウムを添加して放出するという、とんでもないことになっています。しかもIAEAの報告書はさまざまの疑念に答えるものでも、政府の廃棄行為の正当性を保証するものでもなく、30年に及ぶ廃棄による環境影響評価も実施しておらず、さらにALPSの性能検証も行っていないというトンデモな内容です。

万が一、廃棄が必要だったとしても、なおさら近隣諸国、環太平洋諸国の理解や協力が必要なはずなのに、そういう外交努力も一切行っていません。中国による海産物輸入禁止措置も、マスコミ報道レベルでも十分予想できたことなのに、「想定していなかった」とか、外交の劣化もはなはだしいです。

うがかった見方をすれば、アメリカの黙認・容認は、これで日本と中国との外交的・軍事的緊張が高まれば、中国との直接対決を回避できるという計算づくのものだったようにも思えます。

福島原発第一事故で、国土の一部は、半永久的に失われました。これを世界に広めてはいけない。自然を、そして未来を冒涜してはいけない。力強く、粘り強く、反対の声をあげていきたいと思います。
返信する