KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

上越・大源太山 葡萄尾根-弥助尾根

2019年04月07日 | バリエーション・ルート
日時:2019年4月6日(土)~7日(日) 一泊二日
行動:単独

 さて、今回は他のメンバーと都合が合わず、久々に単独行。
 最初は南アの日向八丁尾根から甲斐駒などを考えていたが、事前の天気予報ではこの週末は天気は良くても標高の高い所では風速20m/s以上の強風が吹き荒れるとか。
 ちなみに自分が山へ行く時の目安として「風速17m/s以上からは台風」という概念があり、それならばと計画したのが(新潟側の)大源太山。
 標高1,600m弱ながら「上越のマッターホルン」などと呼ばれ、以前から行ってみたいと思っていた山だ。幸い天気も落ち着いていそう。
 
 大源太山の積雪期のルートとしては、弥助尾根、葡萄尾根、コブ岩尾根などがあるが、今回選んだのは葡萄尾根。
 ネットで記録を見るとコブ岩尾根が一番ハードなようだが、葡萄尾根もこの時期に単独で登っている人はそういないようで、パーティーによってはロープ必須などと書いてある。
 少々不安だが、ありきたりの所ではつまらないし、行ってみなけりゃわからない。とりあえず今回は偵察のつもり、ダメ元で行ってみることにした。

一日目 
 天候:
 行程:旭原9:00-葡萄尾根-大栗ノ頭14:30-コルの天場15:10

 土曜の朝、横浜の自宅を車で出発。
 一人なのでなるべく高速代を安くしようと、圏央道でなく第三京浜~環八経由で関越道に入るが、やはり少し渋滞に掴まる。
 今冬の初めはどこの山も雪が少なく一時はどうなることかと思ったが、谷川岳方面はけっこう真っ白でまだまだ雪山が楽しめる。

 湯沢ICで降り、登山口の旭原へ。
 ネットのレポでも確認していたが、この時期、ちょうど大源太山の登山口の所まで道路が除雪され、そこで通行止めとなっている。
 散歩していた地元の人に聞いたら、ここなら道路脇に駐車してOKとのこと。
 四方山話をしながら支度をして、山へ入る。


 少し進むと、今は雪で閉鎖されているゴルフ場に出る。
 誰もいない真っ白なゴルフ場の中を、正面に大源太山を見ながら一人突っ切っていく。
 適当な所から左手の葡萄尾根へ上がる。
 初めての場所だが、今日は絶好の天気で間違えようがない。
 
 樹林帯の尾根をタラタラと登っていく。
 数日前も雪が降ったようだが、小動物以外のトレースは一切無し。
 せいぜいスネ辺りの積雪だが、この時期の雪は重く、晴天ということもあり、あっという間に汗ダクになる。

 途中、ジャンクションピークで一息。振り返るとゴルフ場の施設が小さく見え、けっこう登ってきたのがわかる。
 ここから尾根は直角に左へ曲がり、下り気味にきれいな雪尾根が続いた後、主稜線に突き上げている。
 地形的には昨年登った仙ノ倉山北尾根と似たイメージだ。
 ラッセルというほどではないが、それでも一人でトレースを刻んでいくのはしんどく、20歩歩いては息を整えるという辛抱我慢の登りが続く。


 

 ようやく主稜線に合流。
 少し進んで大栗の頭(1,458m)に立つ。
 ここから大源太方面へはストンと一気に高度を落とす。

 ペースが良ければ天気がいい今日中に頂上を越えて弥助尾根の途中で幕とも都合の良い考えでいたが、さすがにそれは甘かった。
 この下りでは部分的に後ろ向きになるような急な傾斜に加え、雪庇や隠れたクレバスがいたる所にあり、慎重に歩を進める。


 

 最低コルに着いてホッと一息。
 上から見た通りそこは平坦で最高のテン場だった。まだ15時で少し早いが、この先、大源太の頂上までが今回の核心部であり、今日はここまでとする。
 ほとんど整地することなく、アライの「RIZE1」を設営。結局、今日はアイゼンは履かずにここまで来れた。
 
 斜陽に輝く大源太山はコルから見上げると二つの岩峰が丁度鬼の角のように聳えて、なかなか威圧的だ。はたして自分一人で行けるのか。
 単独の場合、とにかく引き際が肝心。その判断だけはミスらないようにしたい。後は成せば成るだ。
 
 夕方になると雲が広がり、明日の天気が少し心配になったが、その夜は風もなく静かに眠れた。

二日目
 天候:一時
 行程:テン場6:00-最初の岩峰-二つ目の岩峰-大源太山頂9:00~20-弥助尾根-林道徒渉点-旭原14:40
 
 朝、予定より少し寝坊して起床。
 外を見ると昨日の好天と打って変わってどんよりした曇り空。
 それでも雲の切れ間から朝陽が顔を出し、少し元気になる。

 
 
 簡単な朝食を済ませ、テントを畳んで出発。
 今日は朝一から核心部。メット、ハーネス、アイゼンを着け、気合を入れ臨む。
 
 まずは最初の岩峰へ。
 昨夜、テントの外で何やら気配がしたが、テントの周りにはやはり小動物の新しいトレースがあり、山頂の方へ続いていた。
 トレースは危うい雪庇ギリギリの所へ向かっており、それに騙されないよう安全ラインを取る。
 尾根は一部キノコ雪のようになっており、一見大丈夫そうなスノーリッジが実はフェイクで、なるべく右側のブッシュラインを目印に進んでいく。
 
 最初の岩峰は正面が灌木混じりの急なリッジで、それを避けるように右手の幅広いルンゼとのコンタクトラインを登っていく。
 幸い雪質も良くブッシュもホールドとして使えるのでそれほど不安はないが、上部に行くと傾斜は50度、足元はスッパリ数百mは切れ落ちており、絶対に落ちれないところだ。
 
 自分としては次の岩峰の方がより核心と思っていたが、多くのパーティーがロープを使った方が良いと言っているのはこの最初の岩峰のようだ。
 それでも先月の一ノ倉沢の一・二ノ沢中間稜の余韻が残っているため、自分なら大丈夫との思いがあった。

 
 
 最初の岩峰を越えると、距離は短いがまた不安定なスノーリッジとなる。
 ここまで来ると、退却も簡単にはできない。振り返りつつ覚悟を決めて最後の砦のような次の岩峰へ進む。
 こちらは遠くからでもはっきりわかる威圧的な壁だが、近づくほどにそれほど大きくはないことがわかる。
 ブッシュで手掛かり豊富そうだが、さすがに正面の壁に一人で突っ込むのはちょっとリスキー。ここは無理せず、セオリーどおり岩壁の裾を右に巻いていく。
 
 ここも落ちることは許されない傾斜だが、気を抜けないのはせいぜいワンポイント。案ずるより産むが易しで無事切り抜ける。
 最後は左手のコブ岩尾根と合流しドームをひと登りで頂上かと思ったら、ここから300mぐらい細いスノーリッジが続き、その先端が大源太の山頂だった。
 
 
 
 頂上は狭く、雪を切り崩してようやく休める程度。2016年に登ったボリビアのワイナポトシ(6,088m)もこんな感じだった。
 湯沢の町は近いが、それでも見渡す山々の中で今いるのはおそらく自分一人。どんよりした曇り空も相まってちょっと隔絶した雰囲気を味わった。
 写真など撮りながら20分ほど休み、下山開始。
 
 下りの弥助尾根もボリュームのある雪稜の連続で、こちらもけっこう傾斜があり油断できない。
 もしかしたらトレースあるかもと少し期待したが、やはり無く、雪庇や隠れたクレバス・トラップを慎重に判断しながら降りていく。
 それでも何回かハマリかけ、一回は落ちたら自力で上がれないような大穴を踏み抜き、ヒヤッとした。
 天気が悪くホワイトアウトになったりしたら弥助尾根もなかなか厳しく一人だと怖いと思う。
 
 下りは楽かと思ったが尾根は長く、重い雪と雪庇、隠れクレバスを回避しながらで時間がかかる。
 幸い視界は利き、地形もとてもはっきりしているので尾根通しに忠実に下り、沢沿いの林道に出る。
 林道に出た安心感からか最後に行く方向を間違え、少しタイムロスしたが、最後はところどころデブリに埋もれた林道を下ってようやく愛車の待つスタート地点へ。
 たった二日間、わずか1,600mの低山ながら、それなりの体力と緊張感を要し、やり切った感あり。
 念のため持参した30mロープは結局一度も使わずに済んだが、内容としてはなかなか濃かったと思う。
 
 最後は土樽の「岩の湯」で汗を流し、湯沢の「人参亭」でお約束のロースカツ定食。
 どちらも今は亡きタケちゃんとこっち方面の沢へ行った帰りはよく寄った思い出の場所。あの頃を想いながら山行を締め括った。

 


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