「群・環・体入門:新妻弘、木村哲三」
「群論への30講:志賀浩二著」もわかりやすかったが、こちらはもう少しレベルの高い良書である。実際に大学の授業で使う教科書だと思う。特に環や体については具体例の豊富な「敷居の低い」入門書が少ないので、これから学ぼうとしている方にはお勧めできる一冊である。
本書はわかりやすいには違いないが、個人的には代数学の面白さはまだわかっていないので、定理や証明が理解できても楽しいわけでなく、300ページほどの定義や定理とその証明の繰り返しを地道にこつこつと読み進んでいった。環や体といっても急に難しくなるわけではなく群のときとはまた違う条件を持つ代数系にすぎない。それぞれ書き出してみると次のようになる。
群が満たす条件:ウィキペディアのエントリー
1)集合Gの元 a, bについて2項演算が定義され、演算結果もGの元となる。
2)結合律を満たしている。
3)単位元が存在する。
4)逆元が存在する。
環が満たす条件:ウィキペディアのエントリー
2つの演算(加法+、乗法・)の与えられた集合Rについて次の4つの条件が満足されているときRは環である。
1)加法に関して加法群である。
2)乗法に関して結合律を満たしている。
3)乗法単位元が存在する。(零元はあってもなくてもよい。)
4)分配律を満たしている。
体が満たす条件:ウィキペディアのエントリー
環Rの零間以外の元がすべてRにおいて可逆元(逆元が存在する元)のときRを「斜体」という。さらに、Rの乗法が可換であればRを「可換体」または単に「体」という。
環や体では「単項イデアル」や「素イデアル」、「整域」、「商体」など超難解そうな数学用語のオンパレードだが、実際に学んでみると概念や考え方自体は見かけ倒しであることがわかる。
そして本書で扱う環や体についていえば、あくまで入門書なので「環上の加群」や「ガロア理論」は含まれていない。東京大学出版会からでている代数学I、II、IIIで言えば「代数学I 群と環」にほぼ対応している。
また、本書では問題や演習問題についての解答は「ヒント」しか与えれらていないので、詳しい解答がほしいときは次の本も合わせて買う必要がある。(僕はまだ取り寄せていないが、アマゾンのレビューを見るかぎり証明はとても詳しいようだ。)
「演習 群・環・体入門:新妻弘」(レビュー記事)
群論だけに限っていえば、「群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次」がいちばんだそうである。昭和32年に出版されたのだが、あちこちのブログやサイトでこの本のことが絶賛されているのを見ると伝説的な存在らしい。残念なことに入手はきわめて困難で、アマゾンのマーケットプレイスで高いのを買うか、神保町で状態の悪いものを安く入手するか、ヤフオクに出品されるのを待つほかはない。
ちなみに僕はかなり以前に購入していたので、次の記事ではこの本のことを取り上げる予定だ。古すぎる本だと思ってこれまで読んでいなかった。このままでは「宝の持ちぐされ」になってしまう。
「群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次」
それから、ぜひ紹介したいのは「らいおんの家」というサイトに置かれた「群論入門」だ。手短かに群論について知るにはこのページがいちばんよさそうである。
群論入門(らいおんの家)
http://www.nurs.or.jp/~lionfan/ironna_05.html
今日の記事で紹介したのはこちらの本である。
「群・環・体入門:新妻弘、木村哲三」
目次:
第1章:整数
- 基本的な性質
- 合同式
- オイラーの関数、メビュースの関数
第2章:群
- 群の定義と群の例
- 部分群、一般結合法則
- 巡回群、群の位数、元の位数
- 部分群による類別
- 正規部分群、剰余群
- 準同型写像、準同型定理
- 直積
第3章:環と体
- 環
- 環のイデアル、剰余環、有理整数環Z
- 環の準同型写像、準同型定理
- 多項式環
- 商体、一意分解整域
- 有限体
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「群論への30講:志賀浩二著」もわかりやすかったが、こちらはもう少しレベルの高い良書である。実際に大学の授業で使う教科書だと思う。特に環や体については具体例の豊富な「敷居の低い」入門書が少ないので、これから学ぼうとしている方にはお勧めできる一冊である。
本書はわかりやすいには違いないが、個人的には代数学の面白さはまだわかっていないので、定理や証明が理解できても楽しいわけでなく、300ページほどの定義や定理とその証明の繰り返しを地道にこつこつと読み進んでいった。環や体といっても急に難しくなるわけではなく群のときとはまた違う条件を持つ代数系にすぎない。それぞれ書き出してみると次のようになる。
群が満たす条件:ウィキペディアのエントリー
1)集合Gの元 a, bについて2項演算が定義され、演算結果もGの元となる。
2)結合律を満たしている。
3)単位元が存在する。
4)逆元が存在する。
環が満たす条件:ウィキペディアのエントリー
2つの演算(加法+、乗法・)の与えられた集合Rについて次の4つの条件が満足されているときRは環である。
1)加法に関して加法群である。
2)乗法に関して結合律を満たしている。
3)乗法単位元が存在する。(零元はあってもなくてもよい。)
4)分配律を満たしている。
体が満たす条件:ウィキペディアのエントリー
環Rの零間以外の元がすべてRにおいて可逆元(逆元が存在する元)のときRを「斜体」という。さらに、Rの乗法が可換であればRを「可換体」または単に「体」という。
環や体では「単項イデアル」や「素イデアル」、「整域」、「商体」など超難解そうな数学用語のオンパレードだが、実際に学んでみると概念や考え方自体は見かけ倒しであることがわかる。
そして本書で扱う環や体についていえば、あくまで入門書なので「環上の加群」や「ガロア理論」は含まれていない。東京大学出版会からでている代数学I、II、IIIで言えば「代数学I 群と環」にほぼ対応している。
また、本書では問題や演習問題についての解答は「ヒント」しか与えれらていないので、詳しい解答がほしいときは次の本も合わせて買う必要がある。(僕はまだ取り寄せていないが、アマゾンのレビューを見るかぎり証明はとても詳しいようだ。)
「演習 群・環・体入門:新妻弘」(レビュー記事)
群論だけに限っていえば、「群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次」がいちばんだそうである。昭和32年に出版されたのだが、あちこちのブログやサイトでこの本のことが絶賛されているのを見ると伝説的な存在らしい。残念なことに入手はきわめて困難で、アマゾンのマーケットプレイスで高いのを買うか、神保町で状態の悪いものを安く入手するか、ヤフオクに出品されるのを待つほかはない。
ちなみに僕はかなり以前に購入していたので、次の記事ではこの本のことを取り上げる予定だ。古すぎる本だと思ってこれまで読んでいなかった。このままでは「宝の持ちぐされ」になってしまう。
「群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次」
それから、ぜひ紹介したいのは「らいおんの家」というサイトに置かれた「群論入門」だ。手短かに群論について知るにはこのページがいちばんよさそうである。
群論入門(らいおんの家)
http://www.nurs.or.jp/~lionfan/ironna_05.html
今日の記事で紹介したのはこちらの本である。
「群・環・体入門:新妻弘、木村哲三」
目次:
第1章:整数
- 基本的な性質
- 合同式
- オイラーの関数、メビュースの関数
第2章:群
- 群の定義と群の例
- 部分群、一般結合法則
- 巡回群、群の位数、元の位数
- 部分群による類別
- 正規部分群、剰余群
- 準同型写像、準同型定理
- 直積
第3章:環と体
- 環
- 環のイデアル、剰余環、有理整数環Z
- 環の準同型写像、準同型定理
- 多項式環
- 商体、一意分解整域
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