
1967年に出版されてから長年読み続けられてきた名著「Advanced Quantum Mechanics: J.J.Sakurai」の日本語版がとうとう出版された!
この本の日本語版を待ち望んでいた方はたくさんいらっしゃることだろう。
昨年暮れから僕は大型書店にはずっと足を運んでいなかったので、昨日アマゾンの検索で気がついたばかり。ゴールデンウィーク明けには書店に並んでいたようだ。
著者の桜井純先生は1933年に東京で生まれ、終戦後の高校時代にアメリカからの留学生招請の選考に合格し、その後アメリカの高校、大学で物理学を学んだ。
先生が渡米されたのは1949年のこと。当時敗戦国日本の高校生が渡米するのは非常にめずらしいことだった。その後、ハーバード大学卒、コーネル大大学院、カリフォルニア大学(UCLA)の教授を歴任、素粒子物理学の分野で幾つかの独創的理論を提出した。1982年にCERNに出張中49才で急逝された。
日本語版は2巻に分かれている。
「サクライ上級量子力学〈第1巻〉輻射と粒子」

「サクライ上級量子力学〈第2巻〉共変な摂動論」

第1巻の内容(「BOOK」データベースより)
量子力学上級編の教科書として長年親しまれてきたJ. J. サクライの名著"Advanced Quantum Mechanics"の邦訳。
訳書第1巻には第1章~第3章を収める。古典的なスカラー場やマックスウェル場を扱うラグランジュ形式を紹介。また、輻射(電磁場)の量子化を行い、レイリー散乱(光子‐原子弾性散乱)やトムソン散乱(光子‐電子散乱)などを量子力学的に扱う方法を示す。更に、ディラックによる相対論的電子論とその応用に関する本格的な解説を行うほか、ディラック場にも量子化を施して量子場の相互作用の扱い方を論じ、弱い相互作用による素粒子の崩壊過程に言及する。
第2巻の内容(「BOOK」データベースより)
第2巻には,量子場の共変な摂動論を解説する第4章と付録を収める。相互作用表示とS行列展開の一般論から始めて、具体例としてモット散乱(電子‐クーロン場散乱)やハイペロンの崩壊、電子‐ 陽電子対消滅やコンプトン散乱(光子‐電子散乱)、核子間相互作用やメラー散乱(電子‐電子散乱)などを扱いながら、電子・光子・中間子の伝播関数やファインマン規則、断面積の計算方法などを理解しやすい教育的な形で提示してゆく。また、量子電磁力学における繰り込み理論を概説する。
そもそも、この本が読めるレベルに達していらっしゃる方は、英語版でも構わないかもしれない。
「Advanced Quantum Mechanics: J.J.Sakurai」

補足する必要はないかもしれないが、サクライ先生による量子力学への入門書は以下のものである。(第2版が刊行されているので注意。)入門書とは言っても量子力学の教科書の中では「中級レベル」なのだが。
「現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ」(第2版)

「現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ」(第2版)

「演習現代の量子力学―J.J.サクライの問題解説」

サクライ先生が独自に量子力学全体を考えなおして論理を再構築しようとしたものでシュレーディンガー方程式も、微分演算子も本書では与えられた仮定ではない。よく見かける通常の教科書とは異なり、全ては明確に提示された基礎概念から、極めて自然に導き出されている。サクライ先生がいかに量子力学をよく理解し、奇才だったかがうかがい知れる教科書である。
「現代の量子力学: J.J.サクライ」については昨年読み、理解不足のつたない記事として投稿しているので、よろしければお読みいただきたい。
現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/24fd19db8b5e2169820606e076972fed
現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6ce1bc17d265ec766198418965a2c37
「現代の量子力学: J.J.サクライ」は英語の初版を邦訳したものだが、英語版のほうは第2版が出版された。初版との違いは「This revised edition retains the original material, but adds topics that extend its usefulness into the 21st century. Students will still find such classic developments as neutron interferometer experiments, Feynman path integrals, correlation measurements, and Bell's inequality. Updated material includes time independent perturbation theory for The Degenerate Case which can be found in 5. New supplementary material is at the end of the text. 」ということだそうである。
「Modern Quantum Mechanics (2nd Edition):J.J.Sakurai, Jim J. Napolitano」

関連記事:
サクライ上級量子力学〈第1巻〉輻射と粒子:J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f54547be0138322c412050725ce489c2
サクライ上級量子力学〈第2巻〉共変な摂動論:J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ef07c6e9d17863ca8e6c48959925783e
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