とね日記

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線形代数と群の表現 I :平井武

2011年08月11日 12時48分38秒 | 物理学、数学
線形代数と群の表現 I :平井武

本書は出版社のページでこのように紹介されている。

「本書は線形代数と群の表現論についてのワクワクする入門書である。元気な高校生以上の方々が独習で,あるいは勉強会で自習できるよう,具体例と応用例をふんだんに採り入れ,懇切丁寧かつゆったりとした大河小説風の仕立ての書である。」

また本の前書きには

「(今はまだ幼いが)やがて大きくなったら、孫たちにも読んでもらいたい。」

とも書いてある。本は2001年に刊行されているので、もうお孫さんはこの本を読んだかなと思った。

とはいえ、実際に読んでみて「元気な高校生」というのはちょっと無理で、やはり「理数系学部の大学1、2年生」あたりから読める本だというのが僕の判定だ。特に線形代数をひととおり学び、「群・環・体入門:新妻弘、木村哲三」などの入門書で群論を学んでからのほうがよいと思う。

「ワクワクする」というのは個人差が大きいから何ともいえない。僕自身は「なるほど。。」とうなづく箇所はたくさんあったものの「ワクワク」までには至らなかった。

「大河小説風」というのは数学書にそぐわない言い方だが、強いてこじつけるならば「ゆったりと壮大に」とかこれまでの数学書とは違うスタイルで「自由気ままに」書かれているという点だろう。

本書、第1巻は多面体群(正三角形と2面体群から12面体群)の分類、その表現および群の作用について、ほとんど省略しない形でていねいに解説している点が大きな特徴だ。そのために必要な基礎知識として線形代数への入門にもページを割いている。まえがきで「前提知識、予備知識を必要としないようにした。」とも述べている。かと言って「元気な高校生」がこれだけの内容で線形代数に慣れ親しむのには無理があると思った。

多面体という視覚的な対象を使って解説を進めているので、群という抽象的な対象がきわめて具体的に理解でき、その分類や置換表現、行列表現への理解へとスムーズに結び付けられている。

第9章以降の「表現論入門」以降、いくぶん抽象的な説明が増えるが、他書に比べればかなり読みやすい。


本書の続きの第2巻は、このままどんどん難しくなっていくのかと思い、ざっと見たところ、それほどでもなさそうだ。

「群の表現」についてはこれで2冊目。他にも良書があるようだが、本書はオススメな本のひとつであることは間違いないと思った。


以下は出版社のHPにある本書(第1巻、第2巻)の解説ページである。

線形代数と群の表現 I :平井武
http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-11496-6/

線形代数と群の表現 II :平井武
http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-11497-3/


購入は以下のリンクからどうぞ。

線形代数と群の表現 I :平井武
線形代数と群の表現 II :平井武

 

====== 本の紹介 ==============
必要なときに無駄なく「線形代数」の知識を学習しながら、アーベル、ガロアから始まったとされる「群の理論」を学び、群の本質は、それがある対象に「作用する」ことであることを、種々の具体例から会得して、群の「作用」の数学的純化としての「群の表現」の理論を、現代の物理学など自然科学への応用例を具体的に計算することを通して実感的に体得する。

第1部 入門:群とその表現、および線形代数(群とは何か?;二面体群、多面体群;置換群、および群の置換表現 ほか)
第2部 具体的な群、および群の作用と線形表現(置換群、A4、S4、A5と多面体群の構造;ユークリッド空間の運動群;群の関数への作用、群の線形表現 ほか)
第3部 多面体群と置換群の表現、および表現論基礎(二面体群Dnの表現論;多面体群の表現と置換群の表現;表現論基礎)
===============================


関連記事:

線形代数と群の表現 I I:平井武
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1711924db691840bf740aa39dc1d37d1

群と表現:吉川圭二
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/35c16a71ff26b71d6ffc8c2c4730439f



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線形代数と群の表現 I :平井武

I. 入門:群とその表現,および線形代数
1. 群とは何か
 1.1 「群の概念」小史
 1.2 群の現代的定義
 1.3 簡単な群の例
 1.4 バーンサイドによる群の定義
2. 二面体群,多面体群
 2.1 群論より{群の生成,同型,直積,巡回群}
 2.2 正多角形と二面体群
 2.3 正多面体と多面体群
 2.4 多面体群の決定
 2.5 多面体群の構造
 2.6 群論より{部分群による剰余類}
3. 置換群,および群の置換表現
 3.1 n次置換群
 3.2 偶置換,奇置換,交代群
 3.3 あみだくじと置換群
 3.4 多項式への対称群の作用
 3.5 差積多項式と置換の符号
 3.6 対称式,交代式
 3.7 3変数多項式の場合(対称群S3の行列表現)
 3.8 群論より{自己同型群,正規部分群,商群}
 3.9 群の置換表現
4. 多面体群の置換表現と行列表現
 4.1 四面体群の置換表現と行列表現
 4.2 六面体群(=~面体群)の置換表現と行列表現
 4.3 十二面体群(=~二十面体群)の置換表現
5. 線形代数入門
 5.1 ベクトル空間とその基底
 5.2 行列,およびその演算:積,和,スカラー倍
 5.3 線形写像と行列
 5.4 ベクトル空間の基底の変換と行列の変換
 5.5 転置行列 ,随伴行列,積に対する結合律
 5.6 正方行列・線形写像の跡(トレース)
 5.7 RまたはC上の一般線形群
 5.8 群の有限次元線形表現
 5.9 n次直交群,n次ユニタリ群
   II. 具体的な群,および群の作用と線形表現
6. 置換群A4,S4,A5と多面体群の構造
 6.1 群論より{交換子群,特性部分群,組成列,半直積,ほか}
 6.2 交代群A4と四面体群の構造
 6.3 対称群S4と六面体群の構造
 6.4 十二面体群の部分群
 6.5 交代群An(n>_5)の単純性
 6.6 n次対称群Snとn次交代群Anの関係
 6.7 群論より{可解群,Sylow部分群,中心化群}
 6.8 お話{可解群と代数方程式,単純群の分類}
7. ユークリッド空間の運動群
 7.1 ユークリッド空間とは何か
 7.2 n次元ユークリッド空間の等距離変換群と運動群
 7.3 Enの原点を固定する等距離変換
 7.4 ベクトル空間Rnの直交直和分解と2次元的回転
 7.5 n次直交群と(n-1)次元球面の極座標
 7.6 En上の回転群,および回転のオイラー角表示
 7.7 ユークリッド運動群の半直積分解
8. 群の関数への作用,群の線形表現
 8.1 群の集合への作用
 8.2 群の関数への作用
 8.3 群のベクトル値関数への作用
 8.4 第1の考え方:地球周辺の磁場
 8.5 第2の考え方:火星表面の太陽風の流れ
 8.6 サイコロゲームと群の表現
9. 表現論入門
 9.1 表現の可約性,既約性,同値性
 9.2 群の指標(1次元表現)
 9.3 有限群の双対
 9.4 表現の相関作用素,シュアーの補題
 9.5 表現の直和分解,完全可約性
   III. 多面体群と置換群の表現、および表現論基礎
10. 二面体郡Dnの表現論
 10.1 二面体群Dnの2次元の既約表現
 10.2 二面体群Dnの1次元表現(指標)
 10.3 二面体群Dnの双対Dn
 10.4 二面体群の共役類と群の双対との関係
11. 多面体群の表現と置換群の表現(1)
 11.1 n次対称群について{共役類とヤング図形}
 11.2 n次対称群について{指標,生成元系と基本関係式}
 11.3 四面体群のすべての既約表現
 11.4 六面体群(八面体群)のすべての既約表現
12. 多面体群の表現と置換群の表現(2)
 12.1 発想の転換
 12.2 n次対称群の既約表現とn次交代群の既約表現
 12.3 5次対称群の共役類,ヤング図形,既約表現
 12.4 5次対称群の既約表現の行列表示
 12.5 5次交代群の既約表現
 12.6 6次元表現Ry3|A5の相関作用素と既約分解
13. 表現論基礎
 13.1 ユニタリ表現,ユニタリ化可能表現
 13.2 有限群の表現はユニタリ化可能
 13.3 ユニタリ表現の既約分解
 13.4 相関作用素の理論
 13.5 群の正則表現
 13.6 群の表現の指標
14. 編集者短評
15. 索   引
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